前日のColdplayに続く2日連続のライブ。Death Cab for
Cutieもサマーソニックで2回見たことがあるものの、この日が初の単独ライブ体験。特に、去年のサマーソニックではThe
Verveを見るために泣く泣く途中退場したので、願ってもないタイミングでの再来日。
オープニングアクトがあるようだったので、定時まで溜まっている仕事を片付けた後、心斎橋で食事をしてから19時半過ぎにアメリカ村のBig
Catへ。1000人弱のキャパのフロアに適度に余裕がある程度の客入りながらも、前日の多少物見遊山的な人が多めの雰囲気とは違い、「今日のライブを待っていた」という集中力の密度が高め。とは言っても、比較的年齢層は高く、スーツ姿の男性が目立つのも印象的。
19時50分頃に照明が落とされ、"The Employment
Pages"でライブはスタート。バンド側から特別にオーディエンスに歩み寄ることもなく、そうかと言って触れると怪我をしそうな殺気立つ鋭さを見せること
はもちろんなく、Death Cab for
Cutieのサウンドスケープに近い緩めの雰囲気がフロアに染み出して行く。サウンドプロダクションもライブを意識しているのか、例えば美しいメロディラインを持つ"Your Heart Is An Empty
Room"でも過剰にメロウさを押し出すのではなく、CDよりもドラムスとベースを強めに押し出すことによって、力強さを増幅した表現になっていた。
意識しているのかどうかは分からないものの、ライブでさえどこか第三者的に鳴らされる遠慮気味のポップ感覚も大きな特徴。特に、色鉛筆で描いたようなアナログ的な中間色の音世界はデジタル的な輪郭の立った色鮮やかさには欠ける一方で、複数の色が混じり合うことなく存在して、時々ハッとするような世界を見せてくれる。そんな独特の空気が流れる中、
やや異色だったのはデビューアルバム収録の"Pictures in An Exhibition"。ロックテイストをストレートに押し出したサウンドは新鮮で、ライブ全体を通してノリづらい流れにビシッと一本筋を通した感じがあった。
"Title
Track"で始まったアンコールもラストスパート的な頑張り感は皆無で、拍子抜けしてしまう位にそれまで通り。但し、ラストトラックの"Transatlanticism"は別格。イントロが始まった
瞬間に空気が張り詰めたようになり、フロアの集中力が一気に高まって
行く。CDに近い音作りの中で、美しいメロディが雑踏の中に溶け出して行くような寡黙な序盤から、様々な楽器が絡まりながら音の固まりになり、鳴らされる音の多彩な固有振動数に共振して感情がガクガク揺さぶ
られる終盤まで、言葉にならない最高の瞬間が積み重ねられて行った。
初見のオーディエンスを瞬時に魅了するような派手さはないものの、こちらが耳を澄まして、音に歩み寄って行くと、シッカリとその良さが響いてくる緩いインタラクティブさは何となく心地良く、特別に演奏が巧い訳でもないのに不思議と強く惹かれる。
曲が演奏されているときには曲を聴くことに集中し、曲が終わったときに一際大きな拍手が沸き起こるのも新鮮で、「一つたりとも音を聞き逃すまい」という個々のオーディエンスの意志が共有されていたようだった。時には「ショウ」も良いけれど、やっぱり「ライブ」ならではの空気も捨てがたい。(2009/02/22) |