Mus!c For The Masses
Home > L!ve > Depeche Mode
Depeche Mode

 Depeche Modeは過去5回来日してライブをしている。"Construction, time again"の後のライブハウスでのギグ、"Some great reward"、"Black celebration"、"Music for the masses"、"Violator"の後のホールツアーである。僕はこのうち真ん中の3つのライブに行った。特に、"Some great reward"リリース後の彼らのライブを見たのが僕が見た初めてのライブだった。そのとき、僕は高校一年生でチケットは4000円しなかった。今考えてみると、Depeche Modeのライブが4000円で見ることができたとはなんて幸せな時代だったんだろう。

 彼らのライブを始めてみたときは、ライブってこんなものなのかという印象を持ったに過ぎなかった。イギリスでは大人気の彼らも日本ではまだまだ人気があるとは言えなかったため、ステージ上のセットもちゃちなもので、シンセサイザー3台とボーカルマイク1本という極めてシンプルな構成だった。それでいて、複雑なリズムパターンや分厚い音を出すのだから、バックエンドでテープかシーケンサーを使っているのは明らかだった。それでも、レコードで聴いているものとは違うアレンジがあったり、ボーカルがレコードで聴くよりも感情の起伏を表現していたり、やはり生で音楽を体験できたのは大きかった。

 ところが、次の"Black celebration"のリリース後の来日公演では前回とは打って変わってハードなイメージのライブが行われた。セットは相変わらず凝ったとは言えないものの、シンプルだが格好良く、ライティングも前回よりもスケールアップしていた。ライブ自体も、"Black celebration"で見せた新しいDepecheサウンドとこれまでのサウンドをうまく調和させたいいライブだった。特に、アンコールの最後に歌われた"More than a party"はライブを締めくくる曲としては最高にシブかった。鉄パイプをたたきつけるようなエフェクトが含まれるこの曲の最後のリフでは、"More than a party"と歌いながら鉄パイプをハンマーでたたきつける。ありふれた演出なのかも知れないが、曲調とピッタリとあった見事な演出だった。

 Depeche Modeはライブバンドらしい。一方で、彼らのサウンドはシンセサイザーやコンピュータを中心にして作り出したものである。この二つの相反するものを彼らは見事に表現する。サウンドは確かにシンセサイザーを中心としたドライな感じだが、Daveのボーカルはレコードの何倍も何十倍もグルーブ感を感じさせ、観客を動かせる。それを目の当たりにしたのが"Music for the masses"後の来日公演である。

 "Music for the masses"はシンセサイザーを中心にしてサウンドプロダクションを行うバンドとしては珍しく、音を減らすことによって自分たちのアイデンティティを確立した作品である。必要最小限の音で、アレンジを行い、ライブでも光よりも影を多用する。これは、アートディレクターとして写真家のAnton Corbinjを起用したことが非常に大きい。オープニングから白い幕の後ろに立ったメンバーのさらに後ろからライトを当てて、影を使い会場の緊張感を誘う。とにかく、ステージが暗い。本当にメンバーがいるかどうかも疑わしくなる程暗い。こうした中で淡々と曲を演奏していく。特に盛り上がったのが、"Never let me down again"でMartin GOreがギターを弾きながらDaveに近寄っていったときである。元々彼はギタリストであったが、Depeche Modeでギターが使われたのはこの曲が初めてであり、当然ライブでギターを弾いたのもこれが初めてであった。

 この日のラストはおきまりの"Everything counts"だ。曲の途中で前列にいた客をステージにあげ、一緒にリフを歌うDave。そして、最後は"The grabbing hands, grab all they can. All for themselves after all. Everything counts in large amounts"の大合唱。かつて、エレクトロポップバンドでここまでライブを盛り上げたバンドがいるだろうか。デビューから今年で17年が経った。今年は約4年振りの新作を発表し、来年にはベスト盤を発表後久しぶりにワールドツアーを始めるという。来年は何があっても10年振りの彼らのライブに行き、ライブバンドのDepeche Modeを満喫したい。