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Doves / Club Quattro
デビューアルバムが出たときから、事ある毎に「これイイから聞いてみて」って言い続けてきたけど、バカ受けするタイプでもないので来日なんて夢のまた夢と思っていたから、2002年のフジロックへの出演が決まったときは実感が沸かなかった。それでも、実際にレッドマーキーでのライブを見て、バンド側は充分に持ち味を充分に発揮し、オーディエンスサイドも単独来日直結の盛り上がりを見せていたので、今回のクアトロへの再来日は感無量。ただ、チケット予約までに結構時間がかかったのに整理番号が30番台ということや、オークションサイトでの定価割れなどオーディエンス動員に心配したりと、まるでバンドサイドのような不思議な心境。

いつもより早めの18:20頃にクアトロに入ったら6割〜7割くらいの客の入り。小さなステージ後方にはスクリーンがあり、PA卓にはプロジェクタを設置していることもあって、定位置は臨時PAブースになっていたので、前方真ん中あたりに陣取って座りこんで体力を温存。様々な種類のBGMが流れる中で、開演時間が近づくに連れてジワジワと客の数が増えて来て適度で快適な人口密度。フジのときはPropagandaを流してオヤジぶりを見せつけていたけど、今回はNew Orderを流してオヤジの心をグッと掴んでくれた。定刻を15分くらい過ぎた頃にフロアの照明が落とされて映像が流れ始める。抽象的な映像だったのと、前にいる背の高い兄ちゃんのせいで見にくかったので今ひとつ意味が分からなかったけど、「君は君の宝物を見つけた。君は虹の端を見つけた」とかいうセリフからしばらくしてオッサン3人と若いキーボードのサポートメンバの合計4人が登場。フジロックのときのようなフライング気味のテンションや渇望感はなく、歓声が飛び交う中にもマッタリとした雰囲気。

とはいっても、いきなり"The Last Broadcast"からの名曲"Pounding"でライブ開始となると、場内もやっぱりお祭り騒ぎ。基本的にはボーカル、ギター、ベース、ドラムスのバンド構成に細かい部分はシーケンサやキーボードでサポートというオーソドックスなスタイルながらも、ドラムスのAndyの健闘が目を惹き、静的な楽曲の中に潜んでいたグルーヴやアルバムでは見られなかった強靱さとしなやかさが表面に出てきている。続いては"There Goes The Fears"。シンプルで叙情的なメロディとコーラスで本編を充分に聴かせた後、ステージ上のメンバ全員がそれぞれの楽器をタムやらカウベルやらのパーカッションに持ち替えて演奏するアウトロを見た瞬間にDoves圧勝が見えた気がした。一気にフロアの温度は上がったけど、途中「オイオイ」コールが出てちょっと興醒め。何でも「オイオイ」言えばイイってもんじゃないでしょ。

楽曲は全体的に筋肉質にパワーアップしてロックバージョンになりながらも、バンドはオーディエンスとコミュニケーションを取りながら緩い雰囲気でライブは進んでいく。Andyがパートを間違えたときには、Jimiが日本語で「ダメじゃん」と言ってみたり、Jimiがタバコを吸うときにオーディエンスにも勧めて、オマケにライターを渡してあげたりというアットホームさが満ちている中で繰り出される適度な開放感とメランコリーはアルバムを聴くよりも即効性が高く、身体の中にごく自然に浸透していく。楽曲のレベルとライブへの適応力の高さ、3人のメンバの作り出す音の骨格、深みと浮遊感を感じさせるキーボードのサポートが完璧に釣り合っていて、彼らの持ち味を余すことなく出し尽くしていた。

その後はJezがボーカルを取ったり、Jimiがアコギで弾き語りを披露したりと表情を付けながら、スペイシーでダイナミックな展開で魅せる"The Cedar Room"で本編終了。数分のインターバルを挟んだアンコール1曲目はJimiとAndyがボーカルとドラムスのパートを変わる"Here It Comes"。1stアルバムを代表するダークな曲も、ライブの中で築かれた流れの中にバッチリ嵌って輝きを放つ。そして、ほぼ予想通りラストはSub Sub時代の"Space Face"。それまでの柔らかな場を切り裂くような強烈なビートを叩き出すダンスオリエンティッドな曲。Jimiはマイクをフロアに向けてオーディエンスを煽り、オーディエンスもそれに併せて蓄積してきた感情を一気に放出してフロアはユラユラ。オーディエンスに主役の座を譲ったアッパーな時間は過ぎ去り、メンバーが笑顔で帰っていった後のステージ上のスクリーンには"All These Worlds Are Yours"の文字が残されていたけど、"All These Worlds Are Shared By Us"って感じだった。

バンドの持ち味である美しいメロディと繊細なアンサンブルを捨て去ったり、犠牲にしたりすることなく、ロック指向のボーカルワークやビートによって密かに全ての楽曲に隠し持たせていたグルーヴを浮かび上がらせるような手法を使ったライブだった。それは単にボリュームを大きくすることによって生まれる歪な形のグルーヴではなく、見えないスイッチを押すことによって楽曲のレイヤー構造を変化させることで現れるようなグルーヴで、一方通行的にオーディエンスの身体を動かすのではなく、会場の空気の流れとシンクロしながらゆっくりと共振していく過程で巻き起こる自然発生的なグルーヴ。派手なステージングやカリスマ性、強烈なリズムや身体を強制的に動かすような音圧がなくても、そして小太りの冴えないオヤジ達でも、いやバックグランドが豊かなこんなオヤジ達だからこそ、この場を作り出せたことを実感。不満点としては、フジロックのときよりも各パートのバランスは良くなってたものの、ボーカルの高域が押さえられていて抜けが悪い気がしたけど、それが今流行の(?)「他のことに比べると小さいこと」に感じられるクオリティの高いライブで、約1時間20分が終わった後も幸せ感と充足感を残してくれた。(2003/2/2)

Set List
  1. Pounding
  2. There Goes The Fear
  3. Sea Song
  4. Rise
  5. Catch The Sun
  6. Satellites
  7. Words
  8. The Man Who Told Everything
  9. Last Broadcast
  10. Where We're Calling From
  11. N.Y.
  12. A House
  13. Caught by The River
  14. The Cedar Room

-encore-

  1. Here It Comes
  2. Space Face