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日本が好きなバンド、Echo & The Bunnymenはそういう風によく言われていた。"Ocean
rain"をリリースしたときには半年のインターバルで日本にやってきてライブをしたりもした。インタビューでは「日本でライブがするのが好きだ」とよく言っていた。Ian
McCullochは毒舌で知られており、彼がそういうのなら強ち彼らの日本好きもウソではなかったのかも知れない。
シングル"The game"が収録されたアルバム"Echo & The Bunnymen"をリリースした後の日本公演、しかもこの日の大阪公演はワールドツアーの最終日だったと記憶している。ライブが始まった。しかし、何かIanの様子がおかしい。ステージにビールを持ち込み、1曲終わる度にビールを飲み、「ちょっと待ってくれ、もう少し飲むから」というような感じで曲の間にインターバルを取る。クセのあるメロディと独特のIanの歌い回し、エッジのとがった冷たいサウンドは80年代のニューウェーブサウンドの中でも独特の位置を占めていた。次第に、周りの流れに影響を受けざるを得なかったが独自の路線を走ってきた。シタールを積極的にアレンジに入れたり、バックにオーケストラを従えてレコーディングしたり、様々な試みの中で自分たちのサウンドを築いてきた。しかし、この日は大袈裟なセットも仕掛けも何もない、メンバーとサポートメンバーのみのシンプルなステージだった。
Ianのテンションは高い。時折声を裏返しながらも何かに取り付かれたように力強く歌い続ける。そして曲の間ではビールを飲む。初めてEcho & The
Bunnymenのライブに行ったので、これが普通のことなのかそうでないのかを判断することもできなかった。ただ、テンションが高かったことだけは確かだった。
本編が終わり一度目のアンコールが始まった。Liverpool出身のEcho & The Bunnymenらしく、The Beatlesの"Twist
& Shout"を演奏した。感想では、"La Banba"のフレーズを絡めながら観客をあおる。確かに、"Twist &
Shout"と"La Banba"は似ている。途中で曲が変わっても全く自然だった。有名なロックナンバーと当時ヒットしていた曲のメドレーで観客は盛り上がる。そして、アンコールは終了した。しかし、盛り上がった客は"We
want
more"のコールをやめようとしない。客席の照明がつき、公演終了のアナウンスが流れるがまだやめようとしない。次第に、あきらめたファンが帰っていくがそれでもアンコールを要求する拍手と声はなり止まなかった。
突然メンバーがステージに現れた。ファンは大歓声をあげ、ステージに上がるファンも出てきた。ガードマンはファンをステージから降ろそうとし、ステージ上と客席の前の方は大混乱だ。主催者がステージに出てきて、客に向かって「平静にならなければアンコールはできない」と告げた。しかし、Ianは「分かった、分かった」と主催者をなだめるような仕草をして何とか2回目のアンコールが始まった。アンコールの始まるプロセスからして、ファンのテンションも高かった。メンバーの演奏のテンションもそれまでとは比べものにならないくらいテンションが高かった。このアンコールはこれまでのライブで体験したアンコールの中でも一番を争うくらいの密度の濃いアンコールだった。予定調和ではない、こころから彼らを希求した結果のアンコールだった。
大阪での公演終了後、Echo & The Bunnymenは解散を発表する。結局、大阪でのライブが最後のライブになってしまった。その記事の中で、大阪でのIanのテンションの高さの原因となるような記事を見つけた。それは、次のようなものであった。大阪でのライブの開始前にIanの父親が亡くなったのであった。スタッフ及びメンバーはそのことをライブ終了後まで隠しておくことに決めたらしいが、あるスタッフがIanに言ってしまったそうである。ライブはキャンセルされることなく始まったわけであるが、このためにIanのテンションが高くなったのだろうということである。また、メンバーが自分に父親が亡くなったことを知らせてくれなかったことに不信感を持ち、Ianが脱退、バンドが解散したという噂も流れていた。Ian
McCullochは1stソロアルバムのジャケットで、"For my dad"と書いている。それだけショックだったといえるだろう。また、Echo &
The BunnymenのドラマーであるPete De Freitasが交通事故で亡くなるというショッキングな事件もあった。これで、Echo & The
Bunnymenのサウンドを聴くこともないかと思われた。
ところが、1997年にEcho & The Bunnymenは再結成し、約10年ぶりのアルバム"Everlgreen"を発表した。1stシングル"Nothing
Lasts
Forever"とともに注目を集めている。サウンドはかなり角が取れて丸くなってしまい、明るさが不気味であったりするが、Ianのボーカルは相変わらずである。来年にはライブで来日するという計画もあるそうだ。10年前の記憶だけを頼りにライブに行くのは危険かも知れないが、是非とも見に行きたいと思っている。 |