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再結成そして新生(オリジナル)メンバーでの日本での初めての、そして唯一のライブだった。赤坂ブリッツでの1日限りのライブ、昔の彼らを考えるとやや寂しい気もするが、それは言っても仕方がない。どれくらいのライブを見せてくれるのか、それだけを楽しみにして東京まで乗り込んだ。赤坂ブリッツには初めて行ったのだが、なかなかいい感じのところだった。オールスタンディングの1Fはそれほど広くはないが必要十分なスペースがあり、メンバーの表情も手に取るように分かる。とても身近に音楽を体験できる場所のようだ。
定刻より10分遅れくらいで、メンバーがステージ上に現れた。派手なセットがあるわけでもないし、凝った演出で登場するわけでもなく、自然に、当然そこにいるべきという感じで登場する。そして、おもむろに1曲目が始まる。何と、"Never
Stop"だ。オリジナルはダンスポップ風なアレンジがされていたが、ライブではそうした指向は抑えられているようだった。Ianは昔の童顔から年相応のいい年齢の重ね方をしたようで、渋くなっていた。しかし、ボーカルは昔と同じように絡みつくように粘り気のある歌い方だ。時折、音を上げたり下げたりしながら絞り出すように歌い上げていく。ライブの序盤は、昔の曲("Ocean
Rain"あたりまで)の曲が多く、"Rescue", "Back of Love", "The Cutter", "The Killing
Moon", "Silver"などが演奏される。昨年リリースされたアルバム"Evergreen"からも、タイトル曲"Evergreen"や"Forgiven"が演奏されるものの、どちらかというと昔の曲の方が盛り上がりを見せていた。アレンジのせいもあるだろうが、やはり昔の曲の方が尖ったクールなギターの音がカッコイイ。新作の音はどちらかというと角が取れた丸みの部分で勝負したような印象があるためか、それまでのEcho
& The Bunnymenの特徴あるギターサウンドが生かしきれていないようにも思えた。それはやはりライブでも同じで、"The
Cutter"や"The Back Of
Love"など昔の楽曲の方がギターの力強さとIanのボーカルのパワーが生かされ、それによって生み出されるグルーヴ感も素晴らしかった。
途中でもうすぐ発表されるといわれているニューアルバムからの曲を演奏した。路線としては、"Evergreen"に収録されていた復活第1弾シングルの"Nothing
Lasts
Forever"風で、さらにドラマティックなアレンジがされていた。尖った感じは薄れたものの、円熟のようなものは感じ取れた。その後も、"Lips Like
Sugar"や"Bring on The Dancing
Horses"などベスト盤的な曲が演奏され続け、会場も盛り上がってくる。この選曲は嬉しかったものの、逆に複雑なものも感じた。ニューアルバムが発表されてから1年少し後のライブだからこういった選曲になるのは仕方ないんだろうか。また、ファンの反応も昔の曲の方が良いと言うのも少し気にかかった。ひょっとしたら、Bunnymenの時計も我々の時計もあの時から止まったままなんだろうか。
1時間程度で本編が終了し、アンコールが始まる。1曲目が"Never Stop"で、ラストが"Nothing Lasts
Forever"じゃシャレにならないよなぁと思っていたら、1回目のアンコールで"Nothing Lasts
Forever"が始まる。効果的にライティングを利用してただでさえ距離の近い観客とステージの一体感を高めていく。そして、2回目のアンコール"Do It
Clean"でライブは終わった。モヤモヤした感じがないと言うのは嘘になるが、次のアルバムが楽しみになってきた。それにしても、38歳になってあのライブはすごいよなぁ。取りつかれたように歌うIan、黙々とギターを弾き続けるWill、10年前の大阪でのライブそのままの光景が頭の中にフラッシュバックした。演奏自体は別にうまくもないのだが、雰囲気というか味がある。この辺は、さすがにEcho
& The Bunnymenと言ったところなんだろうか。
ライブが終わると昼間降っていた雨が少しきつくなっていた。「"Ocean
Rain"を聴きたかったなぁ」と思いながらも、「また、来るだろうから今度でいいか」とも思った。5月にしては寒すぎる雨の1日に、Echo & The Bunnymenは通り過ぎていった。まだまだ、80年代は死んでないなということが実感できたライブだった。 |