「どうもチケットの売れ行きが悪いらしいよ」という噂を耳にする度、人気絶大の米英との温度差を感じざるを得なかったものの、定刻10分くらい前にクアトロに着いてみたら平日にもかかわらず7割程度の入り。やや高めのオーディエンスの年齢層は20代半ばくらいが中心で、普段行くライブと比べると外国人の割合が高く感じた。いつものように、ステージに向かって左後方に陣取って始まるのを待機。BGMにはMogwaiなどのジワジワと意識が昂揚して行くタイプのインストゥルメンタルが繰り返し流され、漠然とした期待が少しずつ高まっていく。
19:10頃にフロアの照明が落とされ、遠慮がちに沸き起こる歓声の中、メンバとツアーサポートのキーボードプレイヤの5人が登場した。全員ネクタイを締めていて、相変わらずバンドとしての美意識には固執しているようだ。オープニングはオルガンのイントロが印象的な"Next
Exit"。周期の長い音を中心に組み立てられたバックトラックに乗せて歌われるPaul
Banksのボーカルは、ミキシングバランスのせいもあるかも知れないが、CDで聴くよりも力強て驚いた。続くシンコペーション気味のギターと明と暗を行き来する"Obstacle
1"や淡々と8分音符を刻み続けるギターの音に飲み込まれて行くような感覚の"Narc"辺りで、既にSummer Sonic'03のThe Mars
VoltaとMando Diaoの間で異彩を放っていた世界が徐々に構築され始めた。
Interpolの曲はメロディのメリハリが弱いが、それを逆手にとってシンプルなアレンジによって時間軸に沿った音の密度変化を作り、微妙な緊張感の変化を表現するような構成だ。これがライブでは面白いようにハマり、やや過剰とも思えるような感情変化の押し引きによって、CDでは表面化していなかったテンションの高さを引き出していく。さらに感心したのは、楽曲を因数分解していくと各パートは非常に単純なフレーズを刻んでいて、しかも結構アバウトな演奏にも関わらず、音が非常に強靱なことで、例え同時に鳴っている音が少なくても、音の分厚さが理論値を上回ることだ。
そんな不思議な音の壁にが作り上げられて行く中、中盤に差しかかっても、熱過ぎず、冷た過ぎないような温度でライブは進んでいく。とは言っても、ぬるま湯のような中途半端なダレた心地良さではなく、テンションは平均的に高め。敢えて言うならば、低温
火傷のような熱さを持っていて、気が付いたときには火傷しているような感覚だ。そんな流れの中、1stアルバムでも出色のロマンティックな楽曲"NYC"は、"It's
up to me now, Turn on The Bright
Lights"のフレーズに合わせてフロアで点されたライターの効果もあって、それまでの現実感のある流れから乖離した美しさを作り上げた。
後半は"Slow Hands"、"C'mere"、"Evil"と彼らの真骨頂とも言えるギターサウンドを使ったアップテンポな曲が中心で、"NYC"でやや緩くなった流れを再加速させて行く。そして、彼らのダンディズムと退廃的な楽曲が一点で交わる形の"PDA"で55分間の本編が終了。約5分のインターバルを挟んで、アンコール1曲目は"Leif
Erikson"で本編終盤の盛り上がりを一旦クールダウンさせた後、ラストの"Roland"はそれまでの許容限界量に対して比較的余裕を持ったテンションの高さから一転、境界ギリギリのハイテンションで鬼気迫る音を叩き出し、単なるクールな美意識を持ったバンドではないこともキッチリと証明した。
ライブとしては驚くほど素晴らしいとは思わなかったけど、他のバンドにはあの場で表現されていた世界を構築できないと思った。どれだけ緻密に音を重ねたとしても、どれだけサイケデリックなフレーズを取り込んだとしても、あのニュアンスを生み出すことは難しいと思う。そして、それを本能的に可能とするのがInterpolの強みで、この立ち位置が人々から忘れ去られない限りトップランナーで走り続けられそうな気がする。(2005/1/28) |