なんばHatchはMuseのライブで結構な人数が入っていた印象が強かったので、「人埋まるんだろうか」と思っていたところ、残念ながらその心配が的中。フロアの真ん中より後ろはPAブースのみ、前方の左右のスピーカー前スペースも入れなくなっていて人がいるスペースはフロアの半分くらいにもかかわらず、人口密度もそれ程高くなく、音の良し悪しを気にしなければクアトロでも充分なくらい人の数だ。
ステージの向かって左側の一番後ろに陣取っていると、ほぼ開演予定時刻に落とされ、本当に真っ暗になった中をメンバーが徐に登場。"Can't Stop
Now"のイントロのドラムが鳴り響き、ステージ後方からカクテル光線が発せられてライブはスタート。ややスリムになったものの、腹回りがピチピチした青いシャツをパンツの中に入れたTomに思わず苦笑。但し、そんなダサ気味のファッションとは裏腹に、声の美しさと歌の巧さは圧倒的で、歌い始めた瞬間に彼の印象ベクトルは一気に反転した上で極大値を示した。
「コレハ、ジブンヲシンジルヒトノウタデス」のMCで始まった"Everybody's
Changing"ではキラキラしたバックトラックを従えて、透明感と力強さが共存する美声を響かせる。オフトーン気味のエレピでシットリした"Sunshine"を挟んだ後、落ち着いたAメロと美フレーズが連続的に押し寄せてくるサビを持った"Snowed
Under"、暑苦しさを抑えながらも情感がタップリ込められた"We Might As Well Be
Strangers"が序盤のハイライトで、アルバムでは線の細さが感じられたTomのボーカルもツアーを重ねた成果なのか、原曲の持つダイナミックレンジの広い色彩を忠実に、そして必要な部分はカスタマイズできる性能の高さを見せつけていた。
中盤は新曲中心に展開され、その中でも"Nothing in Your
Way"は1stの曲調とは少し趣が異なり、懐かしさを感じさせる中にKeaneならではの透明感と美しさが同居していて、次のアルバムに大きな期待を抱かせるデキに仕上がっていた。
「コノキョクハ、ボクヲカナシマセルオンナノコノウタデス」のMCで始まった"She Has No
Time"のファルセットボイス、Timがピアノを弾いているとは思えないような派手な動きを見せ、Tomは西城秀樹を彷彿とさせるアクションでフロアを地味に煽る"Somewhere
Only We
Know"、一転してピアノとボーカルの素朴なコンビネーションで聴かせる「昔の曲」"Allemande"、キラーメロディと流麗なアレンジの"This Is
The Last Time"も文句なし。「ライネンモヨロシク」と言った後、スケール感と次への期待を抱かせつつ、余韻を残して全てを締めくくる展開の"Bedshaped"も見事にハマッた。複雑なアプローチを見せるバンドが多い中、正攻法に拘ったライブは1時間10分で終了。メンバーは肩を組み、お辞儀をした後、ニコニコしながらバックステージに下がっていった。
ライブならではのサプライズ、例えばCDで印象が薄かった曲がオーディエンスとのインタラクションを通して輝きを得るというような場面はなかったので、ロックバンドのライブという文脈では物足りなさがなくはない。それでも、個々の曲はCDよりも繊細な美しさとしなやかな力強さを得て、ブラッシュアップされていた。叩いていない筈のドラム音が鳴ったり、明らかに弾いていないキーボードのフレーズが鳴ったりするというトホホ感も、現状のKeaneに対して問題にすべきではないことだと思う。今の彼らの最優先事項はメロディとTomのボーカルの魅力を壊さないことで、そのためには原曲のイメージを壊すようなライブ用アレンジはリスクが高過ぎるからだ。
様々な層のオーディエンスがいる中、それぞれが気持ち良さそうに身体を揺らしていたのが非常に印象的なライブだった。良いメロディを書き、そのメロディとバンドの強みを活すアレンジをし、それをサプライズではなくプラスαを加えて生で演奏するというシンプルなアプローチを生命線とする限り、メロディの品質が落ちた瞬間に存在意義が急速に失われていってしまう。そんな厳しいポジションの中でも、自然体で自信満々に歌い上げるKeaneは、外見の素朴さやサウンドから想像できる以上に逞しいのかも知れない。そして、呆れるくらいにピュアな音楽への姿勢は彼らが「音楽バカ」である証拠のような気がした。
ライブ終了後に立ち寄ったなんばパークスのロマンティックなクリスマスイルミネーションに、彼らの音楽がオーバーラップして頭の中でずっと鳴り続けていた。(2004/12/18) |