前日の東京公演が機材トラブルのため2時間遅れで始まったという情報をキャッチしていたので、キャンセルになっていないか心配しながら定時に猛ダッシュでBig
Catへ向かう。18:55に会場に着くと、キャンセルにはなっていないようで、ドリンクチケットをZIMAと交換してフロアへ入る。フロアは身体を充分に身体を動かすスペースがある程度の客入りだったが、ここ最近仕事が忙しく、体力的に自信がなかったので、後方のPAブース横に陣取って開演を待つ。
19時少し過ぎに、PAブースに2人のヒゲ男が登場。「Good Evening
Osaka!」とマイクで叫んだ男はFredだったような気がする。で、何で開演前に叫んでいるかというと…「これからみんなでゲームをしましょう。勝った人には大阪のライブ用に作ったスペシャルミックスCDを差し上げます。ワールドツアー最後の3枚なので、是非ゲットしてね(意訳)」らしい。で、どんなゲームかというと、幾つかのヒントにマッチする会場に潜んでいるスタッフを見つけてパスワードを告げるというもの。パスワードは「タコアキ(たこ焼き)」らしい。結局、ヒントが出るとすぐに3人とも見つかってしまい、スペシャルCDはゲットできなかったけど、ライブに向けて気持ちが高まってきた。それにしても、Fredの英語を訳していた「いかにもガイジン」って感じの兄ちゃんが日本語ペラペラなのに一番驚いた。
19:30頃、フロアの照明が落とされ、FredとNickが屈託ない笑顔を浮かべて登場。本当に「ニコニコ」っていう音が聞こえてきそうな程の笑顔が印象的だ。1曲目は"'64〜'95"の"Come
Down on
Me"。淡々とシンプルなリズムトラックが繰り返される中、少しずつウワモノが重ねられ、低めの音温度を保ったままロック的なノリへと展開する曲調はCDよりも明らかにライブ向きだ。人肌の温もりを感じさせる"In
The
Bath"を挟んだ後、早くも"Spacewalk"へと展開。アコースティック楽器のダンスミュージックへの導入という方法論に新規性はないが、キュートでカラフルなオブリガードはLemon
Jellyの真骨頂。そして、愛らしさをドーピングした"His Majesty King Raam"では更にアコースティックサイドへ重心を移し、飾り音符を多用したエレピの間奏が極上のアダルトオリエンティッドダンスミュージックを奏でる。
緩んだ流れを引き締めるようなタイトなリズムの"Don't Stop Me Now"と"Only
Time"で夢見心地だった気持ちが現実へと引き戻されるが、"Make Things Right"や"Ramblin'
Man"で再びリラックスモードへとスイッチ。過不足ないダンスミュージックをベースにして、時にタイトでクールに、時にルーズで柔らかな表情を見せるLemon
Jellyの音楽は、強靱な基本アーキテクチャとワンクリックでビューをカスタマイズできるユーザフレンドリーなインタフェースが融合したオペレーティングシステムのようだ。そして、プルプル揺れるゼリーを通して見た世界のように、目まぐるしく変化する音世界も面白く、固定観念に囚われずに美味しいところをツマミ食いするフットワークの軽さも抜群だ。
ややフィニッシュブローが弱いと感じていた前半の印象が変わったのは"Nice Weather for
Ducks"以降。キュートなオカズ的フレーズを連発するギターダンスミュージックで、フロアの熱気は一気に上昇し始めるたと思ったところで、一転してシックな曲調の"Soft"を挟む。フロアで揺れるライターの炎が物憂げさを強調する。かと思えば、過度にロック度を増幅した"The
Shouty Track"では、Fredが"Ah-"のフレーズをタイトル通り絶叫した後に、フロア指向へシフトしたLemon
Jellyサウンドの最新バージョン"Stay with
You"へと流れ、突っ走った後のクールダウンと「パーティは終わった」的寂しさを同時に表現し、「これで終わりだろうなあ」と思わせる。ところが、これで終わりではなく、「今夜はあと1曲やるね」というMCと共にラストの"The
Staunton
Lick"が始まる。カントリー風味の濃いアレンジは、それまでのフォーキーな人肌ダンスポップとも一線を画していて、彼らの守備範囲の広さを感じさせる内容だった。
演奏を終えた彼らは「ジャア、マタネッ!」と流暢な日本語を操り、拍手をしながら満面の笑みでステージから去って行った。そんなステージ上から発せられたこの笑顔と、それに呼応したフロアの笑顔が彼らのライブ特徴を端的に表現していた。バンドとオーディエンスの間に主従の固定関係を築くのではなく、限りなく両者が対等で、かつインタラクティブな関係で生まれた幸福感の当然の帰結としての両者の笑顔。The
Chemical
Brothersのように強迫観念的デジタルビートに共振した結果でも、Underworldのようにストイックに内面へ蓄積したエネルギーを一気に放出した結果でもなく、自然発生的にフロアに沸き起こったユルユルのダンスと幸福感。色々な表情を見せるLemon
Jellyの音は、そんな不可解な現象さえも思わず納得させる説得力を持っていた。(2005/4/2) |