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レコーディングの中断、そして初めて"L"と"R"から始まらないアルバム"Doubt"のリリース、
明らかにこれまでとは違う流れの中でのライブだけに会場に入ってからも何が起こるのか全く予想がつかなかった。会場には、メンバーがレコーディングで使ったギターが展示されており、ファンが直接触ることができるコーナーがあった。スタッフがその様子をハンディカメラで撮影しており、この映像がステージ上のスクリーンに映される。このスクリーンにはバックステージに固定されたカメラの映像も時折映される。バックステージの映像には通天閣やサザエボンなどが映され、またメンバーやスタッフの姿も時々捉える。ライブ開始前からこれまでにないライブを予感させるに充分だった。
開演の時間が近づき、客席のライトが落とされる。"Pumpin'
92"が流れ始めると同時にステージ上のスクリーンにメンバーの顔写真とプロフィールが映し出される。全員のプロフィールが紹介された後、"Now
Loading"の文字が映し出される。その直後、ステージ上の黒沢秀樹にスポットライトが当てられ、"Talk
show"が演奏される。スクリーンに視線が集中していたために黒沢秀樹の登場には全く気付かず、唐突にライブの幕は切って落とされた。黒澤健一のボーカルは力強く、演奏はタイトだ。特に、アイネ・クライネ・ナハト・ミュージックでのリズムセクションは見事の一言だった。腰を下ろし、足を組み、スラッピングを使いながら性格にベースが刻まれ、ギターのカッティング、ドラムス、ボーカルと全てが有機的に結びつき、CD以上に曲の力強さを表現していた。彼らの復帰第一作にこの曲が選ばれた理由がよく分かった。
CDそしてライブでなじみの曲が続くが、途中で初めて"Music
Jamboree'95"が演奏された。黒澤健一はバックステージに下がり、ステージ上では他のメンバーによるインストゥルメンタルの曲が演奏されている。しばらくすると、ステージ上のスクリーンにロビーでくつろぐ黒澤健一の様子が映し出される。受付の女の人と並んだり、タバコを吸ったり、パンフレットを買ったりとヤリタイ放題。まさに、パーティはこれからという感じで色々なことをする。その様子が映し出される度に客席は沸き返る。結局、この一風変わったインストゥルメンタルを通して完全に観客をコントロールしてしまった。
ライブが終盤に近づくと、"Land of Riches", "Game", "Bye", "Chinese
Surfin'", "Crusin' 50〜90's"とアップテンポの曲が続き、会場全体がヒートアップする。"Land of Riches"のコール&レスポンスや"Chinese
Surfin'"でのパフォーマンスなどライブの楽しさを濃縮したナンバーの後最後の"ブルーを撃ち抜いて"
が始まる。ブルーのライティングの中、一つ一つの言葉をかみしめるように歌い上げる。レコーディング一時中断後、レコーディングしたくなるような曲を作ろうと思い出来た曲がこの曲だ。しっとりと、熱くなった心に少し風を送るようにしっとりと、しかし力強く広がりを感じさせながらライブは終了した。
メンバーが引き上げると観客は当然のようにアンコールを求める。"Doubt
Preview"の放送やそれ以前のインタビューでメンバーは「当然のようにアンコールをやるのはおかしいんじゃないかと思う。確かにアンコールまでの流れを考えてアンコールを準備していくのもプロの仕事だとは思うし、それは考え方だ。しかし、僕たちはアンコールを含めたライブの流れは考えていない」というような意味のことを言っていた。彼らなりの、現在の音楽シーンに投げかけられた一つの"Doubt"だろう。演奏する側も聴く側も予定調和の中で演奏し、聴く。それは本当に意味のあるものなんだろうか、本当に観客は良いライブだからアンコールに出てきて欲しいと思っているのだろうかと考えるのは逆に当然なのかも知れない。事実、今回のツアーでもアンコールのあった会場は少ないという情報があった。それでも、もっと彼らの音楽をこの場で聴きたかったので、拍手を続けた。なかなか出てこないが拍手を続けた。
しばらくして、メンバーがステージに戻ってきた。黒澤健一はギターを指さして「これ?ギターを弾けって言ってるの?」と少しおどけたようなジェスチャーで客席に問いかける。メンバーがステージ上で集まり、アンコールの曲の打ち合わせをする。そして、それぞれが楽器を手にしてアンコール曲"Kansas
City〜Hey Hey
Hey"を演奏する。心から彼らの音楽を求めていた人にとってはこのアンコール曲は胸に響いたはずである。予定調和でアンコールを送った人にとってはこの曲はピンと来なかったかも知れない。
これまでの中で最も混沌とした状況の中で悩み抜き、自分自身の答えを見つけるために行ったライブだったのかも知れない。我々はこのライブに何を感じ取ることができただろうか。彼らの想いがたくさん詰まったこのライブに、彼らの想いを見ることができただろうか。聴くことができただろうか。
共有することができただろうか。 |