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Manic Street Preachersはカッコ悪かった。ブルー系やストロボを多用した過剰演出ともいえるライティング、サウンドはよりドラマティックに、JamesのボーカルはCDとは比べ物にならないほどエモーショナルだ。
なんてカッコ悪いんだろう。
Zepp
Osakaは赤坂ブリッツと似た雰囲気のヴェニューで、キャパシティはスタンディングで2000人程度だという。ただ、当日券も出ていたので満員というわけでもなかったようだ。この冬で一番寒かった日に、開場の6時までキッチリ外で待たされてから中に入る。整理番号は400番に近かったので、一番前のブロックのど真ん中というわけにはいかず、やや右寄りのNicky側に陣取った。開演時間が近づくにつれて客が増えてくる。誰もがManicsを渇望している、そんな少し異様な雰囲気さえ感じられた。客層は思っていたよりも幅広く、女性の姿もかなりいた。誰もが3人を待っていた。ステージ上のアンプにはウェールズの国旗が掲げられている。噂どおりだ。
客席の明かりが暗くなり、"Everything Must
Go"イントロが響いた瞬間に7年間の空白が埋められる。メンバーが登場して「コンバンハ」といった瞬間にはアイドリングする間もなく、一気にトップスピードに到達した。というより、ここに来る前から既にアイドリングはしていたのかもしれない。少なくとも、最前列のブロックにいた周りにいた人からはそんな印象を受けた。時間の流れ方、空間の広がり方さえ変わったような気がした。
前半は、"The Everlasting", "You Stole The Sun from My Heart", "Tsunami"など最新アルバム"This
Is My Truth Tell Me
Yours"からの曲が中心で、CDさながらのダイナミックで叙情的でドラマティックな演奏に、ゆったりと感情のこもったJamesのボーカルが重ねられていく。CDを聴いていると、彼のボーカルは高くて線が細いような感じを受けていたのだが、ライブではそんな事は全く感じさせない。感じさせないというよりも、このサウンドメイクにバチッとはまっていて、曲との一体感は抜群だった。そして、Jamesのギター以上に光っていたのがNickyのベースだ。彼のベースがManicsの曲に重要であることが実感できた。
中盤からは初期の曲も織り交ぜながら進む。必要以上にソリッドで攻撃的なアレンジではなく、それでいてポイントではディストーションサウンドを使ってメリハリを付けながら観客を昂揚感を萎えさない。この辺はスタジアム級のライブを幾つもこなしてきた彼らの貫禄がなさせる技だろう。一つ目のクライマックスは"Motorcycle
Emptiness"。ファーストアルバム"Generation Terrorist"に収録されているこの曲は初期の名曲だ。現在の彼らのサウンドの中に置いても、輝きは全く失われていなかったし、今のリッチになったこのサウンドの中でこその耐性が感じられる原石の輝きがあった。
そして、Jamesがアコースティックギターを持って登場して、"The Holy Bible"から"This Is
Yesterday", "Everything Must Go"から"Small Black Flowers That Glows
in The
Sky"が演奏される。メロディーの美しさを簡素なサウンドの中で、しかしJamesはエモーショナルに歌い続ける。彼らの歌の力強さが本物であることがここで分かる。リッチなサウンドが彼らのエモーショナルな世界を作り上げているわけではなく、あくまでも素材と歌が作り上げているのだ。
その後、"Nobody Loved You"から"You Love Us"へと続く。「愛されること」に拘り続けたManicsらしい流れだったと思う。特に、"You
Love
Us"は圧巻だった。高いレベルで維持してきた観客の感情レベルを堰を切ったかのように爆発させるだけのポテンシャルを持ったこの曲で、会場は何度目か忘れるくらいの沸点に達した。Nickyは縄跳びも御愛敬。ラストは"A
Design for Life"。"This is called 'A Design For Life', Good
night"というMCと共に演奏された"A Design for
Life"にもクールダウンさせるというよりもこれまでの温度を保つような印象を受けた。そして、メンバーは「バイバイ」という言葉とともに去っていった。
会場中から拍手が続く。みんな心からアンコールを求めている。最近のライブでは経験したことがない程の大きいアンコールを求める拍手だ。無情にも客席の照明がつけられる。ブーイングが起こるが、それでも拍手は鳴り止まない。帰る観客もほとんどいない。誰もが、濃密な彼らのライブで満足している表情をしているのに、誰もがさらに彼らを求め続ける。ステージ上でセットがばらされ始めてからも、彼らを求める拍手は続く。演奏が終了してから20分は続いていたと思う。
Manic Street
Preachersはドラマティックなサウンドに乗せて、エモーショナルに歌うというスマートとは言い難い方法で彼らの真実を我々に伝える。Jamesのもがくような姿は決してカッコいいものではなく、どちらかといえば無様だ。それでも、実は人間の本質なんてそんなもので、自分たちのカッコ悪い部分を隠して、人に気づかれないようにと必死になってエネルギーを使っている生きている。誰もがカッコ悪く、人にそれを指摘されるのを恐れる。Manicsはそんな部分をさらけ出し、その分、単に「歌うこと=伝える」ことのみにエネルギーを投下している。それは、誰の感情をも掴んで揺さぶるだけの力に満ち溢れたエネルギーだ。
ライブは生命力と発展を感じさせる素晴らしいものだったが、Manic Street Preachersはカッコ悪かった。結局、Manic Street
Preachersとはそういうバンドなんだと思う。本質を伝えるために自分たちを飾らない、そうした誠実さが詰まったライブだった。とんでもないものを見てしまった、そんな思いが残った。鳴り止まない耳鳴りが取れるまでは、彼らの音楽をずっと聴くだろう。そして、彼らの歌で収まらない感情がなくなるまでは、これから先ずっと彼らの音楽を聴き続けるだろう。 |