8月のサマーソニック以来となる約3ヶ月ぶりのライブは、フジロックフェスティバル2003でホワイトステージの大トリを飾ったMogwaiだ。あの場での彼らの音はストイックで、曲に関わる全ての音素が結合し、膨大なエネルギーを発していた。フラッシュやミラーボールを使った簡素なライティングとプリミティブな音の塊は四方の山を揺らし、身体にビートをたたき込み、夜空にかかる雲を引き裂いて星を呼び寄せた。そんな強烈な印象のライブだっただけに、今回も異常に期待をかけてしまう。
会場のOn Air Osakaに行くのはHeat Beat Umedaと呼ばれていた頃に行ったMansunのライブ以来だ。キャパはそれ程大きくはなく、IMPホールと同じか一回り小さくしたような感じで、Mogwaiの集客力に釣り合うのか少し不安。前座にEnvyというバンドがブッキングされていことは知っていたが、会社を休んだこともあって楽々19:00前に会場付近に着いたので、軽く夕食を取った後会場へ向かった。
会場に入ると人の多さにビックリ。19:00少し前だったけど、入り口付近まで人が詰まっている。特に、前の方は背の高い人が多く、後ろからではステージ上がほとんど見えない状況だ。まずは、ドリンクチケットをZIMAと交換してゆっくりと見れそうな場所を探して陣取ることに成功。予定より10分くらい遅れて前座のEnvyが登場。開始してしばらくはギターノイズの音に気持ち良く身体を揺らしていたけど、途中でハードコア系の金切り絶叫ボーカルが挟まれる部分でドッと疲れる。どの曲も同じような展開で、インストゥルメンタルの部分は耐えられるけど、思い出したように絶叫ボーカルの挿入。ただ、最後に演奏した曲だけはそれまでの悪夢のような展開を断ち切り、ジワジワと沸き起こるダイナミズムはMogwaiのステージへのシームレスなリエゾンだった。それまでは曲が終わっても拍手を3回する程度だったけど、ラストの曲だけはしばらく拍手を続けたくなるデキだった。
Envyが終わると、予想外に人の入れ替えが起こり、それまでよりも空間に余裕ができた。ステージ前方にいた背の高い人達もどこかへ行って、見晴らしも良く、快適な環境へ変わった。ただ、それはそれで少し微妙。すぐにセットチェンジが終わるかと思いきや、ギターのセッティングに手間取っているのか、延々とチューニングが繰り返される。何度も何度もクルーがステージを行き来し、足が疲れてきて座ろうかと思ったときに客電が落ちてメンバー登場。
セットリストは最新作"Happy Songs for Happy
People"を中心としながら、過去のアルバムやEPの代表曲をほぼ網羅した構成。オープニングは"Happy Songs for Happy
People"から丁寧にギターの音を重ねながら音の壁を構築していく"Kids Will Be
Skeletons"。予想しなかった物静かで平穏な始まりに完全に意表を突かれた。続いて、前の曲で作った流れを慎重になぞりながらボコーダで音のレイヤを増やす"Hunted
by A Freak"へと進む。アルバムを聴いたときにも思ったけど、"Rock
Action"以降の曲は1曲だけそれまでの雰囲気をスクラップ&ビルドしてしまうような強烈なエネルギーを持った曲は少なく、一連の流れの中で独特の世界観を組み立てていくという感じが強い。前半戦は時折挟み込まれる強靱なノイズはあるものの、初期の名曲"Stanley
Kubrick"も巻き込みながら、比較的淡々とした流れでライブは進んでいった。
一方で、Mogwaiの過去の作品にはそれ自身がそれまでの流れを一変させてしまうだけの強烈な個性を持っているものも多い。この両者の取り合わせによって表現される世界が二転三転するのが非常に面白い。それぞれのパートが繊細に重ねられた静的なな曲ではパートのみならず、一つ一つの音までもが明確に識別可能であるかと思えば、重ねられたギターが最終的にノイズという新しい楽器を構成するダイナミズム溢れる曲では、そこに表現された音がアトミックな一つのパートとして表現される。この相反する音を繰り出すバンドの力量は桁違いだ。
メランコリックな"May Nothing But Happiness"からギターという楽器の意志の強さをアピールする"Ratts of The
Capital"、さらに"Helicon 1"、"Christmas
Steps"と来る終盤は前半の緩い流れを徐々に引き締め、緊張感を増していくていく。本編ラストは張りつめたテンションを一気に解き放つような開放感溢れる"タップリの"2
Rights Make 1
Wrong"。流れるような叙情的なメロディとギター、キーボード、ボコーダ、リズム隊が融合したサウンドはそれまでの迫真の音に比べると至って普通ではあるが力強い。アウトロのリズムボックスとギターノイズのフィードバック音が残る中、メンバは一旦退場。
リズムボックスがジャストビートのリズムを淡々と刻み、アンコールなのか本編ラストなのか分からないくらいの短いインターミッションの後、再度メンバがステージに登場。始まったのは"My
Father My
King"。この曲をCDで聴いたとき、音の持つあまりの生々しさに退いてしまったけど、ライブで聴くとメチャクチャカッコ良く、本質的にはライブのために存在する曲だ。本編でも何度も全ての感覚が麻痺したような気がしたけど、この曲を浴びているうちに、その感覚はドンドン強まっていく。
フジロックでは、あの場にいる段階で彼らの音に心を捕まれたが、この日は少し様子が違った。ストレートに対峙していたはずのライブでは彼らの音に身体を委ねるのみで、作り出された世界に映し出された音を感じることしかできなかった。家に帰ってセットリストを見直し、CDを聴き返すに連れて、あの場の強烈な体験がフラッシュバックし、徐々に消化できてきた。ライブの感覚をCDでアクティベートされた経験は初めてだ。非日常のライブでカジュアルに音の感じ、日常のCDを聞く行為でその強烈さを再確認するという矛盾も、日常の平穏と非日常の狂気の絶妙なバランスの上で成り立つMogwaiの音には実にピッタリなのかも知れない。(2003/11/21) |