個人的には2003年度ベストアルバムが"Absolution"だったこともあり、待ちに待った単独来日。会場のなんばHatchは初めてで、難波駅を降りて近鉄電車の乗り場や全く反対方向に歩いたりと迷いながらも、何とか5時40分頃に会場に到着。PAブースより前のフロアの密集率はこの時点でかなり高かったので、PAブースの後ろの壁際に陣取って始まるのを待っていた。
ライブは"Absolution"の仰々しさを詰め込んだ"Apocalypse
Please"でスタート。大袈裟な照明やキーボードの前面に組み込まれたネオンの怪しげな光との相乗効果によって、一瞬にしてアルバムの独特の雰囲気が構築される。小さなフロアに作り上げられた世界はまさに「オレ流」で、冷めた感じでシーンとの距離を取るのではなく、熱くなりまくってシーンから乖離する姿には強烈なアイデンティティが存在している。そして、音楽に対するスタンス、熱さと泥臭さはほとんど演歌の世界だ。そうした熱さの一方で、ステージの様子をリアルタイムにエフェクトをかけてスクリーンに投影した映像は、目の前の熱いパフォーマンスを抽象し、まるで別空間での出来事のように表現することによってステージの熱さを程よく中和するクレバーな演出も見せる。
"Absolution"の世界の全ての要素を詰め込んだ"Thoughts of A Dying
Atheist"はライブでもインパクト大。ベタなギターリフと陰鬱なメロディから始まり、"Yeah Yeah
Yeah..."の開放感は生でもキモチ良く、Muse流の3分間ポップスの一つの完成型だ。ディストーションがかかりまくったギターのイントロと分厚いアナログシンセの音が重ねられて進む前時代的な"Citizen
Erased"は、どうしようもなく情けない夜を感じさせるメイン部分も素晴らしいけど、音が減らされる中で陽の光が差し込んでくるようなアウトロへのつながり、Mathewの優しげな歌声、そしてその部分で映し出された映像のコンビネーションは素晴らしかった。
世界観の統一性の点では"Absolution"が抜きんでているけど、破壊力という点では"Origin of
Symmetry"の楽曲に一日の長がある。要所には"Space Dementia"や"New Born", "Plug in
Baby"などの"Origin of
Symmetry"の曲が配置され、"Absolution"で構築したMuseワールドのフレームワークに最後のエネルギーを注入する。ナルシスト気味のボーカルとギターが炸裂する"Muscle
Museum", "Time Is Running Out", "Plug in
Baby"への流れは素晴らしく、途中でダレ気味になった流れを一気に修正した。特に、フロアにジワジワと蓄積されてきたエネルギーに点火して、一気にスパークさせる本編ラストの"Plug
in Baby"は圧巻で、オレ流ワールドを有無を言わさない圧倒的な力で完成させた。
アンコール一発目は"Blackout"。Chirisが奥行きをあるキーボードを奏で、「僕がサポートするよ」と言ったMathewのギター、ボーカルが絡み合いながら、フロアにはホッコリした幸福感が拡散していく。そして、"Stockholm
Syndrome"で次々と白く巨大な風船がステージからフロアに投げ込まれる。その数、合計で15個。最後の曲が終わっても割れない風船が残っていて、メンバーがギターを使って割り始める。それでも全てが割れなかったので、メンバは演奏をリスタート。しばらくオーディエンスとメンバが風船と格闘した結果、見事に全ての風船が割れて時点でライブは完結。
シーンのコンテキストを完全に無視するリスクを背負いながらも、他のバンドとの圧倒的な差別的優位性を生み出せる今のMuseのポジションは、自らのクリエイティビティの追求とマスマーケットからの支持というトレードオフになり得る要素を包含できる奇跡的な位置だ。3枚のアルバムを聴いていると指向性が違うように感じていたけど、ライブでは楽曲によって微妙な音の厚さの違いや破壊力の差はあるものの、世界観は驚くほどシームレスにつながっている。シーンから乖離しているとはいえ、間違いなく今のシーンに存在する最強のバンドの一つと言えるだろう。 |