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基本的に僕はミーハーなので、今回のOasisの来日が決まってからライブが始まるまでの間はすごく楽しみだった。前作の"Be Here
Now"が出たときは、その前の"(What's Story) Morning
Glory"に比べると、やけに猛々しい音があまり好きでなかったものの、その後好きになっていったし、ライブ前に聞き直してみたらそれまではそれほど聞いてなかった"Definitely
Maybe"がフェイバリットになったりもした。しかも、席がアリーナの1列目と来れば、否が応でも盛り上がってくる。というか、自分をどんどん盛り上げてる自分がいた。
4枚目のオリジナルアルバム"Standing on The Shoulder of
Giants"リリース後のワールドツアーは日本でキックオフされた。アルバムレコーディング直後にオリジナルメンバーの二人が脱退し、その後新しい編成になっての初めてのライブ、それまでと少し方向性の異なるアルバムをどのようにライブで聞かせるのかなど、不安材料ももちろんあった。ニューアルバムは、以前までのメロディの良さでオーディエンスをねじ伏せるようなタイプの曲はなく、迷いながらも別の方向に歩き出そうとしているような彼らの姿が見えた。それは、従来のOasisの音を期待している人にとっては肩すかしになったような気がするほどだ。自分たちのやりたいことを自分たちだけで決めることができない不自由さを背負い込むほど、彼らの存在は大きくなってしまった。アルバムもライブも、そんな彼らに対する賛否両論が渦巻いていた。ワールド記念ホールは超満員だった。席は1列目のNoel側から少し端によったあたりで、NoelもLiamも肉眼ではっきりと見ることができた。「あの」Oasisを何の機械も使わずに生で見ることができる位置だった。「盛り上がらないはずはない」
本当に7時ちょうどに客電が落とされ、ニューアルバムのオープニングチューン"Fuckin' in The
Bushes"が流れ始めた。ステージ前に張られた黒い幕が落とされ、しばらくしてメンバーが登場する。始まる前からウェーブが起こっていた会場はこれ以上ないくらいの拍手で彼らを迎える。そして1曲目は"Go
Let It
Out!"。僕の席がスピーカーの前だったからのせいもあるのだろうか、どことなく音が悪い。ボーカルのバランスは悪く、Liamの声が聞き難い。加えて、Liamの声があまり出ていないようにな気がした。特に高音にさしかかると、フラフラしていたような気がした。Liamはポケットに手を突っ込みながら、「そんなことねーよ」と言わんばかりに歌い続けてはいたのだが…さらに、ニューシングル"Who
Feels Love"と続く。ニューアルバムの曲はこれまでのOasisの曲とは違って、うねるような感じがあってなかなか乗るのが難しい。特に、"Who
Feels
Love"はボーカル中心のスローな曲だからなおさらだ。そして、"Supersonic"。ここで盛り上がりが一度目のピークを迎える。ただ、やっぱりLiamの声は出ていないような気がする。ここでLiamが引っ込み、Noelがボーカルをとる"Sunday
Morning
Call"が始まる。ところが、Noelの声も割れている。どうもPAのセッティングが甘いようで、ハウリングが起こったり、ボーカルの高音の抜けが悪かったりとバラバラだった。「それでも盛り上がれるはずだった」
その後は初期のシングルを中心にステージが進められていく。"Shaker Maker", "Cigarettes & Alcohol", "Roll
with It", "Wonderwall"など、オーディエンスの持っているOasisらしい曲が矢継ぎ早に演奏される。ニューアルバムのスローなうねりの曲に乗り切れなかったオーディエンスは飛びまくる。そして、必殺の"Don't
Look Back in Anger"から"Live Forever"につないで本編は終了。「まだまだ盛り上がれる」
アンコール1曲目はThe Beatlesの"Helter Skelter"。Noelがボーカルを取り、ハードなロックンロールが演奏される。Liamは最後の方にちょこっと顔を出し、オーディエンスを挑発するようなポーズを取る。メチャクチャ態度でかいぞ、Liam。そして、「これが今日最後の曲です」といって"Rock'n'Roll
Star"が演奏された。ライブ前から彼らを待ち続けたオーディエンスはこの曲でジャンプし続けた。
さて、「楽しかったか?」と聞かれたら、僕は「楽しかった」と答えるだろう。では、「ライブとして良かったか?」と聞かれるとどうだろうか。音の悪さを抜きにしても、ライブとしての完成度が高いとは思えなかった。ツアーの最初と言うことやアルバムリリース直後という条件を抜きにしても、である。もちろんキャパシティが全く違うが、The
Chemical Brothersは完璧なまでにオーディエンスをコントロールしていたし、Primal
Screamは客と一緒にロックしていた。ところが、この日のOasisにはそうした圧倒的な何かに欠けていた。その欠けていたものの一つが、オーディエンスの望むOasisと自分たちで変えていくOasis像のベクトルの違いのような気がした。それは、1stや2ndアルバムの曲が最新アルバムの曲を演奏したときより大きな声援を受けていたことからも明らかだ。これは結構辛いことのような気がする。Oasisはかなり思い切ってニューアルバムの音を僕らに突きつけてきたはずだ。もちろん、僕らはそれを拒否してはいないが、明らかに前の音をより受け入れていた。
もっと問題なのは、彼ら自身の吹っ切れ度だと思う。もちろん彼らなりの考えがあった選曲だろうが、もっとニューアルバム中心の選曲にすることもできたと思う。これからの楽曲の広がりを予感させるLiam作の"Little
James"やアルバム中でNoelが一番気に入ってるとコメントしている"Roll It
Over"をなぜ演奏しなかったのかが分からない。ニューアルバムからは結局6曲が演奏されたが、それにも関わらず昔の曲が中心と感じられたのは彼らの吹っ切れ度に起因する部分が大きいように思った。結果、「あー、"Champagne
Supernova"聞きたかったなあ」となってしまう。
変わらなければ変わらないでアンチからは非難され、変わればファンに苦言を突きつけられる彼らの立ち位置はハードだ。特に、音を聞いても分かるように過渡期で一番苦しい時なのかもしれない。新作で模索した新しい道へのブレイクスルーはもうしばらくかかるのかもしれない。今は新しく加入したGemとAndy
BellがOasisの新しい作品にどういった影響を与えるのかを見てみたい気がする。結局、僕はイベントとしてのOasisのコンサートは楽しめたものの、ライブとしてのOasisのコンサートでは消化不良を起こしてしまった。とてもじゃないけど、ライブとしては良かったとは言えないと思う。それでも、基本的に僕はミーハーだからそれなりには満足はしているんだけれど。僕はソングライターとしてのNoelは本当にすごいと思うので、次作で僕らの想像を超える「スゲー音」を聞かしてくれるのを待つことにする。その上で、新作からの曲を中心にしたライブを見てみたい。 |