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初めて体験した2000年3月の神戸ではアリーナ1列目だったのが災いしてか音のバランスが悪く、期待していたベクトルとの微妙なズレもあってイマイチ乗り切れず。続く2001年のフジロックではレアな選曲を楽しめたものの、直前のManic
Street
Preachersで体力を使い果たし、最後方でボンヤリ見ていたこともあってイマイチ没入できずと、本人達とは無関係な原因で連敗中。でも、この日はPAブースのすぐ横の席と場所も適度に良く、「二度あることは三度ある」よりは、「三度目の正直」になりそうな予感だった。 開演間近になってもアリーナ、スタンドともに空席が目立っていて、「おいおい、Liamが機嫌損ねて出てけーへんのちゃうか」と二日前の悪夢が押し寄せてくる。三度目の正直になるためには、やっぱり手を後に回してがに股で歌うLiamがいることが重要。そう、だからいつも以上に盛り上がらなくっちゃダメなんだよ。って感じで自分にプレッシャーをかけ続ける。「いつも以上に大声で歌わなくっちゃ。」
定刻を10分程過ぎて客電が落とされ、ステージ後の垂れ幕にソフトのローディング時に現れるプログレスバーのような映像が映され、"Fuckin' in
The
Bushes"が流れ始める。瞬間的に客が立ち上がり、大歓声がわき上がると、メンバーがゾロゾロと出てくる。「お、Liamもちゃんといるな。思いっきり拍手して喜ばせなくっちゃ」と何故か気を遣いまくり。
1曲目は挨拶代わりの"Hello"。演奏がちょっと走り気味のようにも思ったけど、ウォーミングアップを兼ねたリードオフトラックとしては充分に機能した。続いて"The
Hindu Times"と"Hung in A Bad
Place"。ニューアルバムの曲はCDで聴いてもロック的要素が多かったけど、ライブで聴くとそれが増幅される。特に、"Hung in A Bad
Place"は乱暴なメロディラインがLiamの声と良い感じに混ざり合っていて、CDとは比べ物にならないほどロックだ。リフでこの日最初の大合唱が起こった"Go
Let It Out!"を挟んで、初期の佳曲"Columbia"と"(What's The Story) Morning
Glory"へ。後者では兄弟掛け合いバトルの部分で再び大合唱。Liamはしきりに、オーディエンスに向かって小さく拍手をする。気持ち悪いくらいにご機嫌のようだ。屋台でジャンボたこ焼きでももらったか?
さらに、彼らのキャリアでも異色の「歌謡ばらーどろっく」"Stop Crying Your Heart
Out"とOasisらしさ溢れる即効性あるメロディラインの"Little by
Little"。湿っぽい曲のLiamとカラッとした曲のNoelのボーカルバトル。"Stop Crying Your Heart
Out"の美しさは誰もが認めるところだけど、ライブ映えやオーディエンスを巻き込んだ合唱パワーで"Little by
Little"に軍配を上げたい。その後、"Live
Forever"などと新旧様々なタイプの曲を織り交ぜながらテンポ良くみ、ダンサンブルで他の曲とは少し毛色の違う"Better
Man"が始まる。ボーカルと演奏が良い感じに溜めたり絡んだりしながら、初期の曲で沸点に達したテンションと温度を見事に確保。この日は、ここ2回のライブで感じた昔の曲と最新の曲との温度差はあまり感じられず、バンドがオーディエンスを完全にコントロールできているのが印象に残った。
アコギ1本でNoelの歌う"Wonderwall"の澄んだ美しさにはため息が出そうだったけど、ニューアルバムのキートラックの一つ"Born on A
Different
Cloud"で弟が演出する力任せの美しさの前には兄貴の存在感も薄れ気味。というわけで、兄弟ボーカル対決第2弾は純粋な美しさを呆気なく吹き飛ばしてしまう恐るべきパワーでLiamの完勝。と思っていると、"Acquiesce"では兄弟のコラボレーションが始まり、完全には仲直りしてなさそうな感じもするけど、少なくともそれぞれが自分のパートをこなし、互いをスポイルすることなくリスペクトしている感じだ。アイドリングから暖気、さらにはトップスピードを保つ流れは、バンドのウネリ、自分を含めたオーディエンスのノリの両方の面で大満足。
メンバーが引っ込んでしばらくすると、再びLiam以外のメンバーが登場。「ひょっとして…」と嫌な予想が頭をよぎるが、これは単にセットリストの関係。Noelボーカルのシンプルなコーラス系ロック"Force
of Nature"を挟んだ後、会場中のお待ちかね"Don't Look Back in
Anger"のイントロが始まる。予想通り、ここの歓声が一番大きかった。そして、当然のようにリフの部分は大合唱。もちろん、自分も大声を張り上げて合唱。そして、日本でもこれだけの合唱が聞けるんだなあと単純な出来事に妙にゾクゾクした。
ここでLiamが再び登場して、「主役は俺だ」とばかりに"Some Might
Say"で観客を再びロックンロールモードへ引きずっていく。「もう、どうにでもして〜♪」と気分はぴちょん君。連続して演奏されるキラーチューンに大満足&喉は大疲労。そして、最後の曲はThe
Whoのカバー"My
Generation"。ユニオンジャックのフラッシュする映像をバックに、再びロックンロールパーティモード。のはずだけど、オーディエンスの反応は今ひとつだったかな。盛り上がってる人はメチャクチャ盛り上がってたけど、「???」って顔して何となく身体を揺らしていた人も目立った。メンバーがステージから去った後、"Champagne
Supernova"のレコードがかり、オーディエンスは思い思いにクールダウン。メンバーが帰った中での合唱ってのもOasisらしくて、ベタな演出かも知れないけど何だかゾクゾクした。
今回も小さな部分の変化を除くと目新しい発見はなく、Oasisのライブだったなあと思う。彼らのライブで重要なことは、オーディエンスに対して楽曲を共有できる場を提供すること。そして、その場で、山のようにストックしているキラーチューンを演奏することだと思う。そんなこと誰でも簡単にできそうな気もするけど、これを両立させうるのはやっぱりOasisくらいしかいないとも思う。だからOasisは今日も存在する。自我を忘れ去りそうなくらいのグルーヴや次世代へのリズムの提案といった副産物的なものを手持ちのカードから捨て去り、原材料のクオリティ一本で勝負するってのは、本当の天才か本当のアホかのどっちかしかやならいだろう。逆に、今の時代で、そんなリスクの大きなことができるのはOasisくらいしかいないような気もする。今日のOasisはアホ丸出しで、最高の共有場と殺傷力のある音楽をサーヴしてくれた。何度もLiamがオーディエンスに拍手し、"Very
Nice"とボソッといい、Noelが機嫌良くMCをこなす。ボーカリストがいなくなるかも知れないというスリル満点の現実の中で、異様な盛り上がりを見せたオーディエンスも場の形成へ正帰還をかけ続けた。三回目の正直の大勝利。(2002/10/5) |