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Pavement / Club Quattro

 ちょっとばかりなめきってた。整理番号は二桁だったけど、「そんなに並んでる客もいないだろう」という勝手な推測は開演前8階から2階まで続く人の波に飲み込まれた。久々に見る人で溢れかえったクアトロは、ただそれだけで期待感を必要以上に増幅していってくれる。1月のMansunと同程度は入っていただろうか。ただ、あのときと違うのは、Pavementは男の客の比率がかなり多いことだった。クアトロでのいつもの指定席、左後ろの柵の近くに行ってウイスキーのロックをあおってみる。オープニング前にフロアに流れる曲はダンスミュージックで、空腹に放り込んだアルコールが適度に頭をぼんやりとさせてくれて、正確に刻み続けるビートが心地よい。

 ほぼ時間通りにPavementのメンバーはステージに登場した。少し申し訳ない気がするほどの小さい目のステージに彼らはダラダラと、そして日常の一風景を再生するかのように自然に登場する。特に緊張感を持って登場するでもなく、やる気を見せないだらけた感じを見せるのでもない、不思議な雰囲気を携えてライブは始まった。

 彼らのライブを見て持った思いは「だまされてた」というものだった。実は彼らの作品はセカンドアルバムと最新アルバムの2枚しか持っていないのだが、そのどちらでも「ボロクサイ」音楽が鳴っていた。メロディーから常に少しずつハズしたようなボーカル、かっこいいんだか悪いんだかよく分からないギターのフレーズ、それらは使い古された「ローファイ」という言葉の範疇の中でうまくパッケージ化できていた。どこか気の抜けた暖かさと柔らかさみたいなものも同時に感じさせてくれていた。

 ところが、ライブでの彼らの音楽はそんな生優しいものではなかった。完全に羊の皮をかぶったオオカミ状態。柔らかいメロディーにノイズっぽさが強調されたギターが暴力的に押し入ってくる。ボーカルは調子っぱずれ、そこにコーラスのシャウトが入る。表面的には「ローファイな温かみを持った音楽」だけど、個人的にはRage Against The Machineに匹敵するだけのエネルギーと意志を持った音を感じた。それは、人々が彼らに対する「ローファイ」のイメージを裏切ろうとするような作られた姿勢ではなく、彼らの日常の姿そのものだった。そして、実はその中に強烈な暴力性が秘められていた。

 ライブの初めはわざと乗りにくい、演奏も難しい曲ばかりを集めてやってるんじゃないかというような構成だった。実は、ライブを聴き進むに連れて、あの複雑な楽曲を淡々と再生していたMansunの姿がかぶってきた。もちろん、PavementとMansunに共通項を見つけること自体が不可能なのかも知れないが、自然体の中に暴力性と音楽性を両立させる能力という点において共通項を感じていた。それぞれの音が攻撃性を携えているのではなく、それがアンサンブルになり、Pavementの楽曲として再構築されたときに持つ鋭いエッジの立った音、実は彼らの音楽の魅力はそこにあるような気がした。

 これだからライブは面白い。きっとCDを聴いていただけでは、Pavementの音楽についてこのような認識を持つことはなかったと思う。彼らの音楽に秘められたエネルギーに一生気づくことがなかったかも知れない。彼らは楽しみながらステージを進めていた。曲が終わるごとに軽く次の曲をみんなで決めている姿を見ていると、ローファイの彼らと攻撃性を持った彼らのどちらが本物の姿かが分からなくなった。もちろん、両方ともが彼らの姿であることには間違いないのだが、自分の中での固定観念があまりにも完成されていたので、ライブで新鮮な驚きを感じた。

 実は知らない曲も多かったのだが、それでもうねるようなクセのある楽曲と、メンバーのキャラクターで充分楽しませてもらった。内への潜り込むような感動とか外にあふれ出すような熱い思いのようなものとは全く別の座標軸にマッピングされる種類の音楽だった。そこに彼らの独自性があった。

 P.S. ライブ終わってからギターのチューニングみたいなことするなよ>Steve