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Primal Scream / Zepp Osaka

 強引に言ってしまうと「ロックンロールなライブ」だった。さらに強引に続けると、「理想的な音楽表現の場」だったと思う。

  ライブ前からオーディエンスはPrimal Screamのメンバーの登場だけを待っていた。客席のライトが少し落とされるだけで拍手が巻き起こり、定刻を少し過ぎてメンバーが登場したときには、「何じゃ、こりゃ」というくらいの拍手。これには、Bobbieもニコニコ顔になる。ステージにはManiはもちろん、何とMy Bloody ValentineのKevin Shieldsまでいる豪華さ。メジャーリーグのオールスター並みのラインナップで始まったライブの1曲目はニューアルバムからの先行シングル、"Swastika Eyes"。アルバムと同様にハイパーダンスチューンの魅力を残しながらも、「ロック」している。音がデカイとかそういう話ではなく、とにかく音が太い。腹の底にずんずん響いて、知らない間に身体を動かしてくる。豪華なライト装置やスクリーンを駆使しているわけではないものの、曲にピッタリと合ったストロボライトや映像を使うことで、音楽と遊離することなく、ごく自然にライブの場を形成していく。いきなりの"Swastika Eyes"に観客大喜び。いきなりのダイバー出現であった。

 曲はニューアルバムからだけでなく、"Screamadelica", "Give out But Don't Give up",  "Vanishing Point"からも演奏される。アルバムでは自分たちのやりたい放題をやっている、例えば"Movin' up on"はダブ&ゴスペル調だし、"Higher Than The Sun"はまた少し違った雰囲気、"Rocks"はモロロックだと思えば、"Swastika Eyes"はダンスミュージックだ。ところが、ライブではこのカテゴリー分類は全て無意味となる。彼らはこれらのカテゴリーの垣根をぶちこわすのではなく、空中で行ったり来たりする。音楽的カテゴリーではなく、自分たちのやりたい音楽をやっているから故可能な荒技である。そして、全てをつなぐキーワードが「ロック」なんだと思う。

 サンプリングを効果的に使った"Kill All Hippies"やBobbieのヘナチョコラップが聴ける"Pills"など、アルバムでは聴き手の期待をうまくそらすような曲があるが、これらはライブの中では「ロック」として機能する。そして、全ては"Rocks"の方向のベクトルに平行だ。途中でどれだけダンスオリエンティッドになろうとも、メンバーもオーディエンスも実は一つの方向を向いている。それは、彼らが"Rocks"を演奏したときに明らかになった。恐らくメンバーも、そしてオーディエンスもこの曲を待っていたんだろう。それまでのどの瞬間よりもエネルギーの爆発力が大きかった。

 この日のライブの完成度の高さは、Primal Screamの音楽、演奏の他にも、ライティング、そしてオーディエンスのリアクションによる部分も大きかったはずだ。少なくとも、ここ数年間のライブで聴いたアンコールの中では拍手の大きさは最高だった。それだけ、Primalのライブはすごかった。誰もが彼らの再登場を熱望していた。

 1回目のインターミッション後は"Higher Than The Sun"などの少々クールダウンさせる曲を挟んで再びロックンロールパーティの開始だ。MC5まで始まる。普通ならちょっと恥ずかしいコールアンドレスポンスまであった。ハイパーダンスチューンで始まったライブは、知らぬ間に「大ロックンロールパーティ」に変わっていた。誰もそれに気づかない間にPrimalは簡単に変えてしまっていた。最後の曲の演奏が終わると、メンバーは本当に嬉しそうな笑みを浮かべながら帰っていった。「フジロックでまた」の言葉を残しながら…

 Primal Screamは良いポジションを確保しているんだと思う。自分たちのやりたいことをできる環境、そして、それを説得力のある形で表現する力を持っている。彼らの生産物は周りのシーンを引きずりこむだけのものを持っている。そして、なにより、あらゆるカテゴリーの壁を壊すのではなく、そのカテゴリーを明確に意識させながら「ロックンロール」のキーワードでPrimal流にまとめ上げる力を持っている。この日のライブは、この彼らの魅力が余すところなく表現されていたと思う。

 Primal Screamは最強のロックバンドだった。