"Evil
Heat"を聞いた時点ではもちろん平均レベルは超えていたものの、アルバム毎に表情を大きく変えながら様々なブレイクスルーを実践してきた彼らのキャリアを考えると物足りなく、正直言うと停滞感を感じた。2000年の来日時の一瞬にして会場中の熱気を束ねてしまったアクトが素晴らしすぎたため、先日のUnderworldのライブのように肩透かしにあったらどうしようかと、そんな漠然とした不安ばかりが先になっていた。
この日は気温自体はそれほど低くはないけど、風が強いので体感温度は究極に低く、身体を震わせながらZeppに到着。到着するのが遅くて定位置を確保できるかと心配だったけど、Underworldのときほどは人も入っておらずPAブースの横に適度に動けるスペースを確保。とはいうものの、「前回のときの方が客が多かったなあ」とか「チケットあんまり売れてないのかな」などとペシミスティックな想いが過ぎりまくり。定刻を過ぎても会場の雰囲気は意外にも緩く、前回のように会場中がPrimal
Screamへの渇望感を露わにしている様子もイマイチ感じられず、さらに不安は募っていく。
しかし、そんな思いは10数分遅れで始まった瞬間、文字通り一瞬で全て吹き飛んだ。CDよりも回転数を高めに設定した"Accelerator"でのドラムのカウントダウンとギター、ベースが絡み始めた瞬間、Bobbieが歌い出す前に既に勝負あり。それくらいに最初の音の集中力は凄く、それまで緩かった雰囲気は一気に引き締まり、テンションと興奮度は極限まで振り切れパンパンに膨らんだ。アドレナリンが吹き出し始めたところに輪をかけるように、地鳴りのようなリズムトラックと吐き捨てるように歌われる"Miss
Lucifer"へと流れ込む。リズムマシンとドラムがシナジックに絡み合って作り出されるビートが身体に打ちこまれるような感覚がひたすら続く。そう、Primal
Screamは無責任にビートを叩き出すことはなく、責任を持って身体の奥深くまで打ち込み、身体はその力にアクティベートされる。もう、これ以上強力なセットはないだろうと思ったところで、さらに輪をかけて強靱なリズムトラックと狂ったようなギターの襲いかかる"Rize"。この辺で既に満腹になりそうな充実感。フラッシュを中心にしたライティングもシンプルながら、正面を見据えて立っているメンバーを浮かび上がらせ、攻撃的な曲と絶妙にシンクロ。
ご機嫌Maniの「こんばんは大阪。お楽しみ下さい」というMCを挟んで初期New
Orderを思い起こさせるようなヘッポコなエレクトロロックが既に息が上がり始めた身体に優しい。ほっとしていたら、ラップをフィーチャーした"Shoot
Speed Kill Light"で再び攻撃モードへ突入。"Autobahn
66"まで息の入らない強力なナンバーの連続で「二回目の体力限界状態だ〜」と思っていたら、「大阪は日本の首都だぜー。東京じゃなくってね」というManiのMCで幕を開けたラストまでの全ての瞬間がハイライトという驚異的な流れの開始。プリミティブなロックの格好良さが残っている"Kill
All Hippies"からニューアルバムでも最もロックよりの"Sick
City"、そしてみんな大好き土埃の香りを放つ"Rocks"で会場中がバースト。ステージ上のメンバーもオーディエンスも「なんじゃ、こりゃ」っていう盛り上がりが続く続く。それでもこれだけでは終わらない。続くはエレクトロニクスバージョンへの変体を予感させる"Kowalski"から"Rocks"に負けず劣らず爆発力を秘めた"Swastika
Eyes"、そして微妙な開放感を感じさせる温かさのある"Movin' Up
On"で一旦メンバーは引っ込む。ハッキリ言って、ここまででも充分と言えるくらいの充実度と疲労感。「すげぇ〜」という声が至るところから聞こえる。
アンコールはBobbieが曲名を間違えた"Higher Than The
Sun"からスタート。それまでの身体の隅々の毛穴からエネルギーを吹き出すようなパワー全開モードから一転して浮遊感溢れる世界が生まれ出て、しばらく身体をクールダウンさせながら揺らす。ただ、本編が終わってから"Higher
Than The
Sun"が終わるあたりまでに、会場の体温がやや下がり気味になって、再度ヒートアップさせるのに少々時間がかかって流れが少し途切れたのは残念。まあ、当然のように"Jailbird",
"Detroit", "Skull
X"と続く中でシッカリと流れを掴み直したのはさすがだったけど。そして、二度目のアンコールは"Medication"と"Born to
Lose"。特に、"Born to
Lose"は"Medication"の盛り上がりを冷めませることなく、ラストにピッタリの選曲で充分締まっていたライブの印象をさらにタイトなものにすることに成功。最初から最後までカッコ良すぎるよ。
ライブ前の不安なんかPrimalの音の洪水の前に木っ端微塵で、どこを探してもカケラさえ見つからなかった。それにしても驚かされるのは持ち駒の多さで、身体を突き刺すようなリズムとギターがあるかと思えばホンキートンクピアノが絡むロックンロールがある。どんな曲を演奏してもPrimal
Screamの名の下に成立するエレクトロニック・ガレージ・バンド・フューチャー・ロックンロール。自分達のやりたいこととオーディエンスが期待していることがオーバーラップした最高の地平に立ったPrimal
Screamは余すことなく自分達の音楽を表現していった。アルバムには少々戸惑ったけど、ライブは今年最初に見たSpiritualizedと並んでベストアクトに指名できるデキだった。Underworldの敵はPrimal
Screamが取ってくれた。始まる前には冷たすぎた風が気持ちよく感じるくらい、頭の先から爪先までオーバーヒート気味に疾走したライブだった。 |