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Pulp / IMP Hall

 前日からの予報されていたとおり台風がライブ当日の午後に近畿地方に上陸しそうだった。会社の昼休みにイベンターに電話をしてみて「今日のPulpのライブは予定通り行われるんですか」と聞いたら、「もちろん、やりますよ」明るく答えられてしまった。こうなったら、もう行くしかない。当初の予定通り、昼から会社を休んで台風の中大阪へ向かうことにした。会社の人たちは、「こんな雨の中行かない方がいいんじゃない?」とか「大変だね」とか言うけど、グラストンベリーに比べると会場は室内だし、なにしろあのPulpをIMPホールという小さいホールで見ることが出来るんだから大変でも何でもない。ただ、この辺の理屈は普通の人には分からないようだった。午後1時半頃に会社を出て駅に向かおうとするが、予想以上に雨と風が強く、100mほど歩いただけで身体中ビショビショになってしまい、仕方ないので一旦家に帰りシャワーを浴びて車で行くことにした。50キロ規制の高速をしばらく走り、その先の高速が渋滞しているというので途中で降りると、今度は道路が冠水していたり、渋滞が続いていたりと、結局会場に着くまでに3時間少しかかってしまった。軽く夕食を取って会場に入った。

 IMPホールはこじんまりとしていていい感じのホールだ。クアトロほど狭くもないし、見ようと思えば後ろの方でゆっくり見ることもできる。グラストンベリーの11万人に比べると100分の1も入るだろうか。でも、とにかくこんな小さな会場でPulpを見ることが出来るなんて日本ぐらいだろう。会場で少し話した外人さんの旅行者は「こんな小さなホールであのPulpを見れるなんて信じられない」と驚いてたが、本当にその通りだろう。

 予定より15分くらい遅れて客電が落ちる。"This Is Hardcore"のディストーションのかかったギターの音が鳴り響きメンバーがステージに現れる。スモークがたかれ赤い照明が当てられ、幻想的な雰囲気のオープニングだ。しかし、Jarvisはまだステージには現れない。イントロが終わった頃にJarvisが袖から現れ、変なパントマイムのようなパフォーマンスをしながら歌う。CDを聞いている限りでは"This Is Hardcore"なんて凄く地味な曲だったにも関わらず、ライブで聞くと全くそんな感じはしない。むしろ、Jarvisのボーカルは非常に声量があるし、演奏もきっちりしていて、安定感抜群のどっしりとしたサウンドだ。そして、1曲目が終わるとMCが入る。「ここへ来るまでトラブルあったでしょ?大丈夫だった?」。グラストンベリーでは「You survive three days. Respect!」と言っていたが、今日もある意味で過酷な状況だった。きっと、本人達も色々と大変だったんだろう。とにかく、嵐を迎えたPulpのライブが始まった。

 その後もおかしなパフォーマンス、クルクル変わる表情などオーディエンスに対するサービス精神を惜しみなく発揮しながらの演奏が続く。もちろん、そんなパフォーマンスだけではなく、演奏も歌もハイレベルな仕上がりだ。水色の青いTシャツを中に着込んで、ジャケットにパンツ姿のJarvisは力強く歌い上げたり、心の底から絞り出すように感情を込めたり、声に凄く表情がある。照明もある時はオーディエンスを主体として浮かび上がらせたりして盛り上げるのに一役買っている。その後も"Joyriders", "Help The Aged"や"Dishes", "T.V. Movie"といった曲が続いていく。大好きな"Somethings Changed"もやってくれた。この曲の叙情的な雰囲気と、ささやくようなJarvisのボーカルは最高の組み合わせだ。曲の間には必ずMCを入れてジョークを混ぜながら進めていく。オーディエンスとの距離が小さいライブパフォーマンスだ。そして、"The Fear"から"Party Hard"とギターを中心としたハードなサウンドの曲で本編は終了する。ここまで約1時間だ。とにかく、時間が短く感じられる。楽しいライブだ。

 しばらくしてアンコールに出てくる。1曲目は"F.E.E.L.I.N.G.C.A.L.L.E.D.L.O.V.E."だ。この曲も"Different Class"の中では"Underwear", "Somethings Changed"と並んで好きな曲だ。イントロはベースラインとドラムのリズムセクションを強調して始まり、ダンスミュージックっぽいアレンジに仕上げられていた。そして、"Glory Days"を演奏し、間奏でMCが入りラスト(だろうと思われた)"Common People"のイントロが始まる。ここまで、盛り上がりはしていたが爆発するには至っていなかった客席が一気にキレた。みんなが飛びはね、ダイブする客も出始めた。"I want to live like common people〜"からのコーラスは大合唱になり、とにかく盛り上がった。やっぱり、誰が何と言おうがこの曲は名曲だ。音だけ聞いていると軽めのディスコっぽい音に聞こえるかも知れないが、歌っている内容がこれまた渋い。やっぱり、根がマジメなんだよな、彼らは。とにかく、この曲で体力を使い果たした。最後のコーラスなんて息が上がってしまって半分くらいしか歌えなかった。それでも、Jarvisがステージ左袖のスピーカーのところに来たときには一番前まで行って手を突き上げながら歌ってた。この辺では既に意識は飛んでたような気さえする。

 "Common People"の喧噪が終わった後、再びアンコールが起こる。「もう、出てこないかな」と思っていると再びメンバーが登場。「今日の嵐の中来てくれた全ての人に感謝を送ります。それから、このビルを出てから泳がなくてすむことを祈ってます」というMCを挟んで本当のラストの曲の演奏が始まる。実はこの曲のタイトルが分からなかったのだが、"Common People"で熱くなった体をクールダウンしてくれるようなメランコリックでロマンティックな曲だった。Jarvisの優しくオーディエンスを見つめながら歌うスタイルにピッタリとはまっていた。しばらく、身体を揺らしながら聞いていると今日のライブのことがフラッシュバックしてきた。「ありがとう。また、次のツアーで会いましょう」の声と共にメンバーはステージを去っていった。ライブ慣れしていて観客をつかむのが非常にうまいバンドだった。だてに20年近く活動してないというのが正直な感想だ。そして、演奏の正確さ、歌のうまさを含めて、終わったときに「楽しかった」といえるライブだった。Pulpの真骨頂はライブにある、そう言い切れるライブを体験できた。台風の日に行われたと言うことを含めて、今年最も印象に残るライブの一つになるのは間違いない。