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Radiohead / Koseinenkin kaikan

 まず、大阪厚生年金会館に着いたときから驚いた。7時開演のはずだが6時にはもう会場の入り口付近と前の公園には大勢の人、人、人。チケットを手に入れられなかったのか、「チケットがあまっていれば譲ってください」と書いたプラカードを持った人もいる。また、「23, 24日のBlitzのチケット売ってください」と書いたプラカードを持った人もいる。「こんなにRadioheadを聞く人がいるのか」と少し不思議な感じだった。観客は、男性と女性がほぼ同じくらいか男性がやや多いといったところかだろうか。年齢層は、20代が中心で、20代後半から30代くらいの人も大勢見られた。自分自身がその中に入っていたりもするのだが。そして、いかにもイギリスの一癖あるバンドが好きですという感じがする観客層だった。

 来日バンドのライブは1994年のRoddy Frame (Aztec Camera)から約3年半ぶりである。Roddy Frameはアコギ一本の弾き語りという感じのライブだったので、来日バンドのライブとしては誰以来だろう。PrinceかThe Theか。とにかく久しぶりなことだけは確かだ。チケットを買ったのが遅かったため立ち見だったが、早めに会場に着いて並んでいたため1階の最後方ながらステージのほぼ中央、ライティングやPAのスタッフ卓のすぐ側で見ることができた。ステージはドラムセット、アンプ、ギター、キーボードが置かれている程度で他に特に仕掛けは見当たらなかった。いたってシンプルなステージだ。会場に入ったときにはステージ上はスモークがたかれ、ライブが始まるという緊張感が漂っている。いい雰囲気だ。

 7時20分くらいだろうか、予定より少し遅れてメンバーがステージに現れた。僕はこの瞬間がものすごく好きだ。張り詰めていた会場中の緊張感や期待感が一気に解き放たれ、それに対するレスポンスとして音楽が聞こえてくる。この瞬間がたまらない。オープニングは恐らく"OK Computer"のオープニングチューンの"Air bag"だったと思う。もしかすると違うかもしれないが、"The Bends"か"Ok Computer"のどちらかのオープニングチューンであることは確かだ。Radioheadは、というよりThom YorkはCDからは少し神経質な印象を受けたが、「こんにちは」「どうもありがとうございます」などと日本語を混ぜながら一生懸命ライブを続ける。明るい奴等ではないが、特に暗い奴等でもないらしい。どんなライブになるのか、無意識のうちに期待が高まっていった。元々それほど大きな期待を持ってライブに行ったわけではないのだが、結論を言うととんでもなくすごいライブだった。

 RadioheadはThom Yorke (Vocal, Guitar), Jonny Greenwood (Guitar), Phil Selway (Drums), Ed O'Brien (Guitar), Colin Greenwood (Bass)の5人のメンバーからなる。ライブでは、Thomはキーボードも弾いていたし、JonnyやEdはグロッケンをを弾いたり、ドラムのサポートをしたりもしていた。このギター3人というのがRadioheadの大きな特徴だろう。そして、ライブでは特に強みを発揮していたと思う。まず、音のスケール感が圧倒的だ。3人のギターが音の壁を作り、フレーズを弾き、コードを弾き、ソロを弾く。それらが同時に行われ、一曲一曲にメリハリを与え、キャラクターを明確にしていく。ノイジーなギターサウンドの後ろに、メロ ウなコードが刻まれ、カウンター気味にメロディーが歌われる。CDとアレンジが大きく変わっているような曲はないものの、CDよりも一つ一つの曲がイキイキとして聞こえてくる。一つ一つの音に表情がハッキリと見えている。

 ドラムとベースのリズム隊が正確にリズムを刻み、様々なエフェクトのかかったギターの音の壁の向こうからThomの歌が聞こえてくる。この歌のうまさがハンパじゃない。声量があるとか音程が正確だとかいうだけではなく、とにかく感情の起伏をメロディーに完璧に織り込ませながら歌う。これらの特徴が一つにあわさって、Radioheadの音楽を他のバンドとは一線を画しているということがライブを通して改めて分かった。ギターのサウンドが強調された力強い曲、アコースティックギターによる物静かな曲、序盤は物静かで次第にノイジーなギターのフレーズが強調されていく曲、どれもがただRadioheadだった。全てに強烈な個性があり、全体として一つのキャラクターを完璧に作り上げている。ほぼ理想的なパターンだといえるだろう。

 期待感を持っていかなかったためだろうか、彼らの演奏と歌は耳から入って心に届くというよりは、直接心をつかまれたような感動を覚えた。不器用ながら生きていくことの困難さ、素晴らしさみたいなものが伝わってくるような気がした。これまでに見たライブの中でもトップクラスのライブで、感動したという点では文句なく1番のライブだった。行こうかどうか悩んだが行って良かった。本当にRadioheadの音楽をリアルタイムで共有できて良かった。