去年のサマーソニック以来というのは、"OK
Computer"以降急速に巨大化したバンドの現状を考えると非常に短いインターバルでの来日だ。この日は彼らにとっても久々のライブで、日本とオーストラリアを回る短いツアーの初日。会場のインテックス大阪には6時半頃に到着。既に、Aブロックの前方は人がギッシリ詰まっていて、Bブロックもかなりの混雑だ。取りあえず、A-Rブロックの後方に陣取って開演を待つ。会場にはレゲエっぽい曲が流され、リラックスした雰囲気が充満し、渇望感や異常なテンションのようなものは感じられない。日常の風景をキャプチャしたような自然で緩い時間が流れていく中で、ステージ上で忙しそうにセッティングを続けるスタッフが視界に入ったときだけライブ近しと感じる。開演予定時刻から10分くらい過ぎたときに場内の照明が落とされ、メンバーが手を振りながら登場。それまでの場内のフワフワした空気が瞬間的にステージ上へ収縮するような感覚があった。
オープニングトラックは"There
There"。ミックスのせいなのか、それともコンクリートに囲まれた環境のせいなのか、リズムが曲の中から浮き気味になり、楽曲のバランスはやや悪い。それでも、CDと同じく序盤から少しずつ楽器を重ねていき、終盤でバンドとアンサンブルへと結実するプロセスは見事に表現されている。セットリストは"Hail
to The Thief"と"OK Computer"が中心で、"Kid A"や"Amnesiac"からの選曲は少ない。但し、"OK
Computer"からドラスティックなパラダイムシフトを起こした"Kid A"の楽曲、"The National Anthem", "Idioteque",
"Everything in It's Right Place"は要所で演奏され、ライブの温度をならす役割を果たしていた。
序盤は、マイクがハウリングを起こしたり、スクリーンに映すカメラアングルがずれてしまったり、映像にノイズが乗りまくったりとハードウェアのセッティングの甘さが目立った。その究極の形が、メンバがステージ袖のスタッフに手を下に動かすようなジェスチャを続けた挙げ句、Thomが「ちょっとどうしようもないんで次の曲に行こう」といって演奏を止めてしまった"Backdrift"だ。これまで、常時ハイクオリティのライブを続けていたスタッフとバンドだったのでかなり驚いた。
本編で感じたのは、最新アルバムの曲も昔のアルバムの曲も、現時点のRadioheadのポジションに立ってリストラクチャリングしていたこと。特にシーケンサやリズムマシンを使ったエレクトロニカっぽい曲ではビートの強調が目立ち、ダンサンブルな面がデフォルメされていたのが印象的だった。それが強烈に現れたのが"Myxomatosis"。太いアナログシンセの音を後ろから支えるリズムトラックは一つずつの音の粒子が明瞭で前面に現れ、"Where
I End And You
Begin"でもリズムとベースが強く、CDで聴いたときに感じた音のジャブを浴び続けることによって得られる陶酔感がダイナミックなグルーヴによるインスタント感覚なキモチヨサへと変わっていた。また、"Airbag"は新しいアレンジを手に入れて、別の曲であるかのように新鮮に響いてきた。
一転してアンコールは原曲に沿った表現がされていた。別格の美しさを放つ"No Surprises"、この日最も感情のダイナミックレンジの広さが現れた"A
Wolf at The
Door"では若干のフェイクを入れながらも、サウンド自体は産み落とされた時代の音と大きく変わることはなかった。2度目のアンコールで"I Might Be
Wrong"と"Everything It's Right
Place"の2曲を演奏し、サンプリングの音が響く中、スクリーンに"FOREVER"の文字が流れて約2時間のライブは終了。
ダメダメということはなかったけど、決して満足できたライブではなかった。サマーソニックではクールな音でさえもエモーショナルに聴かせた音はなかった。エレクトロニカへの傾倒を強め、スマートさとクールさは増幅されていたが、身体の中を直接掴まれるような激しさは感じなかった。完成度の高い曲を曲をポテンシャルの高いミュージシャンが演奏したという事実はあったけれど、Radioheadのライブならではのプラスαが余りに小さく、曲のクオリティに頼ってどうにか乗り切ったような印象があった。もちろん、"Sit
down, Stand
up"の後半で激しく畳みかけていく部分のシーケンスパターンとバンドの演奏の有機的結束力や"Scatterbrain"の穏やかで美しい流れの対比など、現在のバンドの充実度を証明する部分もあったが、これまでの彼らのライブでは決して感じたことのない中弛み感や散漫さを感じた時間もあった。ひょっとしたらメンバが悪いのではなく、今ひとつ盛り上がりに欠けたオーディエンス側のリアクションや決して良いとは言えない音響に依る部分もあるかも知れない。それでも、Radioheadにそんな言い訳は似合わない。少なくとも、これまでの彼らならそんなハンディや逆境は笑い飛ばしてはね除けてしまうバンドだった。単に耳が贅沢になっただけなら良いのだが、何とも言えないモヤモヤ感が残った事実は非常にショッキングだ。(2004/4/17) |