4年ぶりのRadioheadの来日公演は、今年の5月から続くワールドツアーの最終レグ。2004年の来日公演はワールドツアーのキックオフ的な日程ということもあったのか、細かなところに「あれ?」と思うような部分があったが、今回は良い意味で安定した内容が期待できるはず。そして、最新アルバム"In
Rainbows"のリリースからはしばらく時間が空いてしまったタイミングのズレは、ライブの完成度で補完してくれそう。
会場の大阪市中央体育館はサマーソニック大阪のソニックステージ「舞洲アリーナ」とほぼ同じくらいの大きさだったので、スタンド席の上の方に空席が目立っていたことを考えると、全公演ソールドアウトとなった東京・埼玉と比べて動員的には少々寂しいけど、平日ということを考えるとこんなものか。ただ、細かく仕切られたアリーナの中も密集率は低く、自由に身体を揺らすことができたのは大歓迎。
18時半になると照明が落ちて、オープニングアクトのModeselektorが登場。最新アルバムにThom Yorkeが参加している2人組のDJユニットは、3枚の大きめのスクリーンにビジュアルを映しながら、ダンスミュージックをプレイ。上物が少々落ち着いたトーンで鳴らされていたこともあり、プチ爆発さえ起こすことはできなかったけど、胃を揺らすような重めのビートは結構気持ち良かった。今回はアウェイ度が強過ぎたので、もう一度他のイベントで見てみたいところ。
Modeselektor終了後、セットチェンジが行われる中、Radioheadの開始を待ち望む拍手が沸き起こる。そして、19時半に再度照明が落ち、大歓声とも絶叫とも取れる中をメンバーが登場し、Thom
Yorkeがひと言、「こんばんは」。4年前と同じく、「コンバンハ」ではなく「こんばんは」だったのが妙におかしい。そして、1曲目の"15
Steps"でライブはスタート。
前回のツアー同様に、リズムマシンやドラムス、ベースラインが織りなすリズムトラックは繊細かつ強靱で、アルバムとは比較にならないほどにパーカッシブな出来映え。もちろん、それは単発的ではなく、"There
There"や"The National
Anthem"でも、メロディに対してカウンター的に重ねられる複雑なリズムが時系列で次々に表情を変えるメロディを背後からシッカリと支えると共に、リズムの弱拍部分に生まれる空白によって、圧倒的なダイナミズムを生み出して行く。
序盤の3曲が終わると、"Amnesiac"以降のアルバムから静かめな楽曲を中心に進行。ここで活躍するのは細い線を巧みに表現するThom Yorkeのボーカル。但し、今回改めて感じたのは、そのボーカルのユニークさに依存するのではなく、他のパートのいずれもが主役級を張れる実力を持っていること。この全方位的な筋力こそがライブバンドとしてのRadioheadの最大の強みで、その結果、「非ロック」の曲にも生気が溢れ、ライブ仕様のアンビエントなサウンドが表現されることになる。
ステージにはスパゲッティのような物体が吊され、そこに様々な角度から光が当てられる。スパゲッティの所々短くなった部分にはメンバーが立ち、その隙間からはステージの背後に設置されたスクリーンが見えるようになっている。ベースカラーを変えたモノクロームの映像や幾何学的な光の演出には細かいアイデアと技術が詰められていて、かつ実用的。それは彼らの音楽にも通じるものがある。
本編の中盤以降は"Kid
A"前夜の「クラシックな」曲が増加。音楽的なフォーマットとしての古さは多少感じさせるものの、流れという視点では最近の曲との不連続点はなく、時間が経つに連れて深みが増していく"Exit
Music"やノイズギターの力を見せつけた"Paranoid Android"などの存在感もサスガ。そして、"Lucky"から"Idioteque"という自らのキャリアにおける音楽的ギャップを楽々と飛び越し、2度のアンコールを含む2時間で25曲の初日のパフォーマンスは終了。Thom
Yorkeの最後の言葉は日本語での「ありがとう、おやすみなさい」。
全体的には曲のエッセンス部分以外を短めにアレンジしていたので、余韻が弱めだったのは残念だったけど、SEやサンプルなどのエレクトロニクス、ギター、ピアノ、リズム、ボーカル、そのどれもが主張を持ちながら、美しい時間が作り上げられていたのは圧巻だった。
そして、様々な要素を飲み込みながら、通常のメインストリームのロックのフォーマットと大きく違う音楽で、これだけのオーディエンスを先導するRadioheadというバンドは極めて希有な存在だと改めて感じた。(2008/10/04) |