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Sigur Ros / Kouseinenkin Kaikan
 "Takk..."リリース時の来日公演を見ることができなかったので、2005年のフジロックフェスティバル以来となるSigur Rosのライブ。とは言え、エネルギーゲージがEmptyに近づいた最終日の夜、豪雨の中のMobyで踊りまくり、New Orderでハシャギ過ぎた後、ホワイトステージに辿り着いたときには既に疲れ果て、結局数曲見て諦めて帰るという失態を犯したので、まともに見るのは2003年の単独公演以来。

 今回の大阪公演の会場は厚生年金会館。ここは25年前に初めて洋楽のライブを見た場所。また、Radioheadの"OK Computer"ツアーやBeckの"Mutations"ツアーなど個人的な節目のライブを見た場所ということもあって、始まる前から妙に気分が高ぶる。さらには、開演前に繰り返し流されていた短いループも、まるでDVDのタイトル画面のようで、これから始まる「祝祭」への期待が刻一刻と高まってくる。そして、定刻を少し過ぎた19時10分に客電が落とされ、それと同時に沸き起こる大きな拍手の中、メンバーが静かに登場。

 1曲目はSvefn-g-englar。厳かなキーボードとJonsiのボーイング奏法のギターによる深い霧のようなイントロから透き通ったJonsiのボーカルが印象的なサビへ…向かうはずが、どうもJonsiの喉の調子が悪そう。高音になるといかにも苦しそうに歌い、サビでは声もかすれ気味。Jonsiのボーカルはただの「歌声」ではなく、彼らのサウンドのコアモジュールなので、これからの展開が厳しくなりそうな予感。

 残念ながらその予想は的中。ポップサイドの"Við spilum endalaust"や"Hoppípolla"は何とか無難にこなせるものの、繊細さや透明感が要求される"Glósóli"や"Fljótavík"では独特の世界観を表現しきれないもどかしさが充満。但し、そんな厳しい状況をフォローするかのように、演奏はエモーショナルで安定。特に、ストリングス隊不在の中、キーボードやギター、打楽器などで曲に彩りを与えるKjartanと全身を使って曲のイメージを表現するOrriの奮闘ぶりはMVPもの。

 徐々に音を重ねながらクライマックスへ登り詰めて行く"Inní mér syngur vitleysingur"の多幸感、可愛らしいグロッケン三重奏のイントロと次第にスケール感を増していく"Sæglópur"の懐の深さ、Georgの太いベースによって曲の表情が一気に変わり、Orriのドラミングで生気が注入されていく"Festival"の力強さなど、彼ら流の世界が再現されている一方で、どこか物足りなさも。

 観客を立ち上がらせ、拍手で参加させた"Gobbledigook"は彼らの新しい面を強く印象づけたものの、CDで聴くのに比べて大きな上積みはなく、表面的には大団円を迎えたものの、想定を大きく上回るというところまでには至らなかったというのが正直なところ。そして、アンコールの"Popplagið"では彼らの美しさの陰から顔を覗かせる暴力性が一瞬垣間見られたものの、本編ラストで吐き出してしまったエネルギーを再吸収して再度一気に放出するような爆発力は見られないまま約90分のライブは終了。

 ひと言で言えば、2003年のライブの印象が強烈過ぎたこともあって、残念ながら今回のライブは不完全燃焼。幾つか思い当たる原因の中で一番大きなものは、ひたすら美しく、多幸感の強い音が支配的になった結果、「美しさと紙一重の暴力性」が薄らぎ、サウンドイメージがやや定式化したこと。また、暖かさを感じさせるライティングや粉雪を降らせる演出も、その定式化されたサウンドの一面のみを強調するに留まってしまったこと。そして、やはり大きかったのはJonsiの喉の不調で、微妙な空気の揺れさえも聞き逃さないという集中力が削がれてしまった感は否めない。ただ、逆に言えばコンディションさえ整えば、「こんなもんじゃない」レベルに到達する可能性は大。

 今回もライブ終了後に拍手がしばらく鳴り止まなかったけれど、ライブ終了時まで観客全員が水を打ったようにステージを凝視して座って聴き、ライブ終了直後に全員が自然発生的にスタンディングオベーションをした一体感と比べるとちょっぴり弱いかなあというのも正直なところ。そして、何より残念だったのは"Viðrar vel til loftárása"が演奏されなかったことで、息をするのも憚られるような長時間の無音によって、「静寂」さえ演奏してしまうマジックを体験したかった。(2008/11/1)
Set List
  1. Svefn-g-englar
  2. Glósóli
  3. Starálfur
  4. Fljótavík
  5. Við spilum endalaust
  6. Hoppípolla
  7. Með suð í eyrum
  8. Inní mér syngur vitleysingur
  9. Heysátan
  10. Sæglópur
  11. Festival
  12. Gobbledigook

Encore

  1. Popplagið