|
「クアトロでSpiritualized?ん、メンバー10人以上?どうやって、あの狭いステージで演奏するんや?」という疑問の日々。ステージは普段より前にせり出していて、ステージ上にはマイクスタンドがニョキニョキと林立。「やっぱり10人を超えるメンバーってのは本当なんだなあ」と思って開始を待つ。ただ、意外なほど観客が少なくアッサリと前の方の真ん中に移動できた。観客の年齢層は幅広く、若い人もいれば、僕と同じくらいの30歳前半の人、それ以降の人もぱらぱらと見かけた。特に、僕の周りは平均年齢が高そうだった(笑)
開演前はストリングスのクラシカルな音楽が流れていて、いつもとは少し雰囲気が違う中、その違和感を期待に変化させながら待っていると、予定より10分くらい遅れて会場が暗転。同時に意表を突いて、背後のPA卓からトランペットの音が聞こえる。「おお、こんなところにもメンバーがいたのか・・・」と思っていると、ステージにもトランペットが登場。しばらく、前と後でトランペットによる掛け合いが続く。そして、ようやくメンバー登場。ぞろぞろぞろぞろ・・・出てくる出てくる、ボーカル、ギター×3、ベース、ドラムス、パーカッション、キーボード、ブラス×6の総勢14人の大所帯だ。
1曲目は前作"Ladies And Gentlemen 〜"から"Cop Shoot
Cop..."。アルバム中でも15分を超えるこの曲は、最初は気怠げでジャジーな雰囲気を漂わせながら最後にカオスへと突き進んで行き、まさに彼らの音楽のあらゆる要素を凝縮させたような感じの大作。延々と繰り返されるギター、ベース、キーボードのフレーズに時間の感覚が麻痺しそうになったところで、突入する全楽器で作り出されるカオス。そして、その中にあってそれぞれの音がクッキリと聞こえるインプロビゼーションっぽいけど限りなく精密にアレンジされた
音はノイジーでありデリケート。この曲が終わったとき、とんでもない場所に居合わせていることを確信した。いきなりのクライマックスだ。
というか、全ての曲がクライマックスだ。アルバムで聴いている分には多少冗長に感じられる部分さえも、少しでも長くその音が続くことを祈ってしまうくらいだった。そして、同じフレーズを淡々と繰り返す中にあって、微妙な楽器の増減と表現力豊かで饒舌な楽器群。気がつくと、曲の表情はがらっと変わっていて、その変化にシンクロするように自分の感情も起伏する。言葉で表現するのが難しい言葉、これがその「サイケデリック」という言葉なんだろうと
思った。
彼らの場合、楽曲を時系列で切り出してみると比較的真っ当な手法での表現が多いと思うけど、最終的にまとめられた音楽としてのオリジナリティは恐ろしいほど高い
。どうして、各プレイヤーが奇を衒うこともなく、当然のように自分のパートを演奏している結果がこの音楽なんだろう。このバンドは無意識にフォロワーを生み出すことさえ拒むオリジナリティを内包している気がする。そして、それがSpiritualizedの本質の様な気がする。アルバムで聴くことができるスペーシーさは抑え気味で、サウンドは全体的にドライ。カオティックな曲だけでなく、ひたすら美しい曲もある。そして、こうした対極にある曲がこの日のライブでは完璧に一つの点に集約されている。通常の世界では決して交わるはずのない曲を、空間を歪めることで出会わせた、そんな異次元感覚を何度となく味わった。後を振り返ってみると、始まったときとは比べ物にならない程のオーディエンス。誰もが自分の世界の中でステージを凝視しているようだった。
気がつくと2時間が過ぎていた。いや、大袈裟じゃなくて、本当に時間の経過する感覚がなかったんだ。足腰のだるさは普通のライブより激しいっていう肉体的な疲労感はあったんだけど・・・そんな疲労感の中での"Come
Together"のブラスのユニゾン、冗談ではなく無意識に身体と声帯が反応した。単なる大音量による迫力以上のものがあった。CDを聴いただけでは彼らの半分も理解できていなかったような気がする程の凄まじいライブだった。この日の約2時間半は未だに頭の中に滞留している。この感覚が一秒でも長く続きますように。今一番叶えたい願いは間違いなくこれだ。
ライブ自体はこれまで体験した中でもトップクラスだったけど、終了後に抽選会のためにすぐに出てきたスタッフは無粋過ぎ。あの余韻をぶった切る神経はちょっと信じられない。もちろん、あの強烈な体験の余韻が全部消えてしまったこともないけど、もう少し考えて欲しい。それにしても、楽屋に招待された彼は10人以上に囲まれて何の話したんだろう・・・ちょっと興味あるな。
|