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以前の「壮絶な」という形容詞とは違っても、唯一無我のライブであることを明確に主張したSummer Sonic
'08のライブから半年で約4年ぶりの単独来日が実現。サマソニでの集客は決して多いとは言えないものの、あの場に居合わせた全てのオーディエンスを飲み込んでしまうパフォーマンスは圧倒的で、様々なブログで「ベストアクト」という意見もあった。それだけに、クアトロの左側の柱奥を立ち入り禁止にした状態で9割弱程度の客入りは「勿体ないなあ」というのが正直な感想。
定刻を少し過ぎたときに徐に照明が落とされ、メンバーが登場。メンバー構成は恐らくサマソニと同じで、Jasonの他には、ギター、ベース、キーボード、コーラス2人の計6人。そして、"Amazing
Grace"でライブはスタート。コーラス隊がメロディを歌っている分、マイルドな仕上がりを見せているのとは裏腹に、主旋律の奥ではギター、ベース、ドラムスがシッカリと暴力的に動き回っている。そして、サマソニよりもハコが小さい分、音が固まりになって突き刺さって来て、骨太さが増した印象が強い。さらに、「歌」のパワーアップも顕著で、オルタナティブという音楽の部分集合を越えたシンプルなロックを奏でる瞬間が何度もあったのも印象的。
もちろんブラスセクションが欠けることによって、独特の昂揚感がなくなったのは残念ながら、各パートの複雑な音の糸の絡まりを一旦ほどいて、再び糸を使って編み上げたようなアレンジはこのバンドセットにフィット。新作からの曲で流れが緩くなってきたタイミングではサイケデリックなギターの音が放たれて、完全にフロアをコントロール。狂気の部分は幾分抑えられたものの、メロディやコーラス、ギターのフレーズなど、これまで裏側に隠れていた要素が顔を出し、音楽的に薄っぺらになった感じは皆無。
そして、歌の力を見せつつも陰の部分が強い"Death Take Your Fiddle"から、意表を突いたカントリーっぽい新曲"Life Is
A Problem"で一旦ロック的な展開にオトシマエを付け、ここから終盤に向かって極上のサイケデリックワールドがスタート。まずは、"Ladies And
Gentlemen We Are Floating in
Space"。ステージ上にカクテルライトが満たされ、ミニマムな演奏とコーラスによる荘厳な美しさが徐々にフロアを浸食していき、最後は"Can't Help
Falling Love with
You"のフレーズを重ねて完璧なキメ。Jasonが少し照れながら拍手していたのも当然のデキで、聴いていて鳥肌が立ったほど。
当然、これはその後の流れの序章に過ぎず、"Take Your
Time"ではジワジワと音圧を増しながらチラ見せしかしていなかったアチラ側の世界への視界を広げた後は、焦らしに焦らされたフロアの「待ってました感」爆発の"Come
Together"。バンド側もシフトを一段階上げた感じで、ライブとしてのダイナミズムは最高潮。本編最後はSpaceman 3の"Take Me to
The Other
Side"。これでもかという位にゴリゴリのノイズのインプロビゼーションが展開され、ここに来て昔の彼らのライブで感じた時間感覚が麻痺して行く感覚が再現。その後、数分のインターミッションを置いて、アンコールは"Oh
Happy
Day"。優しく、柔らかい音は彼らのリラックス感と絶妙にシンクロしていて、何とも言えない多幸感を放っていて、Jasonが笑みを浮かべて拍手しながら帰って行ったのと合わせて、素敵な時間を味わえた気がした。
今までの音が鳴り止んだ後も脳の中をそれまでの残響が支配して、思考中枢を停止させるような持って行かれ方ではなく、現実と非現実の間をシッカリとした意識を持ってフワフワするような新しい持って行かれ方が増えたパフォーマンス。奏でる音が変わっても、使える音が変わっても、見せてくれる風景は不変。熟しつつ、尖った、しかも自然体のオーケストラは正にモノが違うという感じで、本質の壮絶さを発揮。肩の力が抜けているにもかかわらず、進化し続けて行くというのは一体何なんだろう。
やっぱり、彼らのライブを見ていない人は勿体ないと思う。(2009/2/4) |