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Stereophonics / Club Quattro

 Fuji Rockリターンズの第一弾は今最もライブを見たいバンドStereophonicsだ。Fuji Rockでも3ピースにも拘わらずその骨太でタフなサウンドは他のバンドと比べても文句なくカッコ良かった。突き抜けていた。そして、待ちに待った単独公演。本国では1万人クラスの会場でもできるくらいの実力を持ったライブバンドをクアトロで見れる、日本人で良かったと感じる一瞬だ。早めに会社から引き上げて、6時半頃に会場に着く。先週のThe Jesus & Marychainはまだこの時間だったら空いていたと余裕を持っていたが、今日は凄く混んでる。もう、後ろの方まで人が詰まっていて、明らかに興奮状態の一歩手前になってる。これは、ものすごいことになりそうだ、と思いながら定位置の奥の後方に陣取った。その周りも既に人が集まり始めてきていて、ライブの始まる前から熱気がほとばしってる。

 予感は見事的中。19時15分に照明が落とされた瞬間に観客の興奮は頂点に達した。いきなりブチ切れる客が続出。1曲目の"Check My Eyelids for Holes"からダイブする客が続出で、メンバーも驚きながらも嬉しそうな表情でとにかくスピーディーにブットイサウンドをたたき出す。今時キーボードもいない、ギター、ベース、ドラムスの純粋なスリーピース。そこに歌が絶妙に絡んでくる。ややかすれ気味のKellyのボーカルは、彼らの音楽に完璧にマッチしている。力強く責めまくるところは責めまくり、少しクールダウンさせるところはとことん切なく歌う。CDでもそうだが、ライブでもとにかくど真ん中のストレート。カーブやフォーク、シンカーなんて全くない。ど真ん中の剛速球勝負で投げ込んでくる彼らの音楽は力強くエモーショナルだ。ファーストアルバムの曲も新曲もアップテンポな曲は突き抜けるほどポジティブで、ややスローな曲も優しく包み込むような感じだ。

 それよりも、何よりも、メンバー、スタッフを含め会場にいる人全員が笑顔なのが凄い。やってる本人たちも本当に楽しそうだ。「くそー、あついなー」といいながらタオルで汗を吹き、どんどん演奏を進めていく。客がダイブして、モッシュするのを、にこにこしながら、嬉しそうに見ている彼らの姿がとても印象的だ。Fuji Rockのときの表情よりも格段にイキイキしてる。もう、こっちまでどんどんハッピーになってくる。もう、完全に彼らの音楽にコントロールされてしまった感じだ。

 全ての場面が強烈な印象として焼きついていて、どの一瞬も甲乙つけ難いくらい貴重で素敵な時間だったけれど、その中でも特に良かったのは本編のラストからアンコールの最初の部分だった。"This Is The Last Song, Local Boy in The Photograph"といった瞬間のそれを拒むブーイングの声と待ちに待った曲が演奏される興奮とが一気に爆発した瞬間、最後に残っていた理性が吹き飛んだ。もう、気がついたら大声で叫んで、 喉が枯れるほど歌っていた。とにかく、声を出さずにはいられなかった。メンバーが一度ステージを後にして、再びKellyが出てきたときはここ数ヶ月で一番嬉しかった。本当にそれくらい嬉しかった。

 アンコールの1曲目は"Billy Davey’s Daughter"、しかもアコギ一本で歌い上げる。彼の声が切なく胸の奥まで突き刺さる。さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る。"He Dreams, Dreams"の高い部分を少し苦しそうに、そしてややファルセット気味で歌うときに彼らの本質を見たような気がする。やっぱり、奴らは凄いよ。想像してたよりももっともっとレベル高いし、とんでもないバンドになる可能性があると思った。そして、"Words Get around"の消え入りそうな声に男ながら惚れそうになった。全ての激しさは今のこの瞬間のためにあるのかも知れない、そう思った。さらにニューシングルのB面に収録されるという"She Takes Clothes off"も同じような路線でこれがまたまた心にぐっと来る。もう、この辺では感情を押さえきれなくなり、思わずこみ上げるものがあった。こんなに感情を揺さぶられたのは久しぶりのことだ。もう、完璧に参ってしまった。そして、ラストの"More Life in A Tramps Vest"では再び何もかも吹き飛ばすような元気の良さ。1時間15分、幸せな時間だった。 バカ正直なほどストレートなロック。カッコ悪いくらいど真ん中だけのサウンド。それでもロックの底力、直接的な表現の美しさを完璧なまでに見せ付けられた時間だった。まっすぐでいること、ピュアでいること、表現すること、少しずつ忘れかけていたものを少しだけ思い出せたような、そんな気がした。会場を出てからも周りの人は楽しそうに笑っていた。笑顔しかなかった。笑顔だけがあった。すばらしい音楽があった。それで十分だった。