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昨年の6月の日本デビュー以来、8月のFuji Rock Festival
'98、11月の単独公演に続いて、早くも三度目の来日公演を果たした彼らの持ち味は、やはりライブだった。今回は、キーボーディストをサポートメンバーとして加え、昨年の来日時よりも音にバリエーションが増え、厚みも増していた。もちろん、彼らのタフなライブアクト、時に繊細なボーカルワークといったものが中心ではあるが、今回の勝因の一つにオーディエンスがあったのは間違いない。
開演時刻が近づくにつれて、赤坂Blitzには何とも言えない待望感のようなものが蔓延し始めていた。7時10分前くらいに会場に入った時点で、既にほぼ満員の状態で、それ以降もどんどん客は増えてきた。7時15分に客電が落ちると、それまで理性で何とか抑えていた興奮が一気に沸き上がったかのように、大歓声が彼らの登場を迎える。とにかく、大歓声だ。腕を突き上げ、拍手をし、メンバーの名前を呼ぶ。会場規模が違うだけに、本国での観客のエネルギーと単純に比較はできないが、きっと密度的には全然負けていないと思う。とにかく誰もが彼らとの再会を喜んでいる、そんな雰囲気が満ちあふれていた。
1曲目はセカンドアルバムのオープニングチューン"Roll Up and
Shine"。前作がニュートラルな曲が中心だったのに比べて、タフなリズムとギターの音色が引っ張っていく、オープニングにはピッタリの曲だ。と同時に、ダイブする客がチラホラ見える。この時点で最初のピークを迎え、さらに"The
Bartender And The Thief"で更に回転数は上がっていく。この2曲はセカンドアルバムの中で前作と異なっている曲で、前作がどちらかというとニュートラルなタイプの曲が多かったのに対して、パワーでねじ伏せるタイプの曲だ。かすれ気味なKellyのボーカルはこういう荒削りな曲にも、他の繊細な曲にもマッチする不思議さを備えている。ドラムのSteveは相変わらずのキャラクターで、どんな曲でも、スティックをクルッと空中に投げて受け取りながらのドラミングを見せ、しかもなぜか笑顔満面でボーカルのパートを口ずさんでいる。素朴な感じの良い兄ちゃんというのがぴったりだ。
もちろん、トーンを抑えた曲も彼らの持ち味の一つで、"Up to You"やアンコールでの"Just looking", "I Stopped
to Fill My Car
up"のように、観客のノリをクールダウンしながら、動のエモーションを静のエモーションに転化させるような働きを持つ。ここでも、Kellyのボーカルの魅力は健在だ。彼がシャウトすると外から内へ音が突き刺さってくるし、彼が話すように静かに歌えば内から外へ感情の波が吹き出す。Kellyは丁寧に、1曲毎に曲紹介を繰り返し、奇をてらったアレンジをほとんど入れることなくバンドは演奏する。基本的には前回の来日時と同じように、ストレートなロックタイプは継承されていて、セカンドアルバムのやや落ち着いた曲がうまくライブで機能していた印象が強い。セカンドアルバムだけで聴いたときには、やや落ち着いた印象が強かったものの、ライブでファーストアルバムの曲と混ざり合うと、ライブのテンションのコントロールをするキーとなるような重要な役割を果たしているようだ。
ピュアネスとヘヴィネスの両方を獲得したStereophonicsは基本的な二つの武器を身につけた。次にどんな新しい方向に進んでいくかがとても楽しみだ。全体的な感想としては、PAの調子があまり良くなかったのか、ハウリングが起こっていたのが残念だった。特に、ラストの"I
Stopped to Fill My Car
up"の静かな部分でノイズが乗っていたのは痛かった。あと、アンコールでKellyはドラムを叩こうとしたり、ラストでギターを振り回したり、これまでの彼のイメージを壊してくれるような場面を見れて楽しかった。アンコールでのオーディエンスの心底もう一度彼らの音を聴きたいという姿勢も、ここ最近見たことがないほどだった。基本に忠実な音楽は、人に基本に忠実な行動を取らせるのかも知れない。ラストでSteveの投げたスティックを取ろうとしてエルボーしてしまった前に立っていた女の子、ごめんね。 |