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僕はSuedeのコアなファンではなく、最新作"Head
Music"のうねるような楽曲にも完全にのめり込みもしなかったし、チケットの当日券が残っているというような情報も聴いていたので、「どれくらい客入っているんだろうなあ」とか「どんなライブやるんだろう」というような物見遊山的な気持ちがあった。開演時間少し前に会場に行くと、なかなかの客入り。まあ、客が入っていようといまいとそんなことは音楽の素晴らしさとは関係のない話であることは確かだが、何故かほっとした。開演前からやたらとスモークが立ちこめ、キーボードの近くには花瓶が置いてあり、何だかへんてこりんな雰囲気を醸し出していた。
開演時間少し過ぎたところでメンバー登場。比較的年齢層の高い目の客は大騒ぎ。なるほど、確かにBrett
AndersonはCDで聴ける声と同様になかなか艶っぽい。キーボードのNeil
Cordingはクールで男前、ただ他のメンバーは結構オヤジしてるなあなどと思っているところで1曲目がスタート。会場は堰を切ったように一気にボルテージを上げていく。序盤は最新作からの曲ではなく、前作、前々作あたりからの曲を中心に組み立て、"Beautiful
Ones"あたりで一回目の盛り上がりの頂点を迎える。Brettはナルシスト気味に大げさなアクションで客を煽る。時にはマイクを客席に向け、時には拍手を求め、マイクを振り回す。ストリングスが大仰に絡んでくる楽曲でこういうことをされると思わず恥ずかしくなって、「そりゃないだろ、兄ちゃん」と言いたくなってしまった程だ。また、Brettがどれほど熱く河村隆一のように歌おうとも他のメンバーは冷静に演奏を続けるのも何ともいえずそのコミカルさを増長させる。
ところが、ある瞬間それはコミカルさを超えた。恥ずかしさの境界線を越えてしまったところで彼らのステージング(アクション・曲の両方)が心地よく感じられ、ジャンプする自分がいた。ランナーズハイの瞬間を迎えたように何も考えずに、ストレートな演奏とうねるボーカルに身を委ね
ていた。
中盤から新作"Head
Music"の楽曲が増えてくる。明らかに、前作までの曲調とは異なり、リズムの取りにくい曲が続く。僕にはここに溝が感じられた。それまでの、「歌謡ロック」的な気持ち良さが"Head
Music"からの曲の演奏によって途切れてしまった。ある意味でこれは仕方ないんだろうとは思う。Blurにして、"Blur"と"13"の間の溝を埋めることは困難だった。その飛躍の具合が激しくなればなるほどシームレスに過去と現在をつなぐのは至難の業だ。だから、彼らは新作からの曲のみを演奏するような形態のライブを続けたんだろう。
ではSuedeの場合はどうか?僕はそれほど大きな溝は感じられなかった。それは選曲や曲順でどうにかできる問題なのかも知れないし、バンド側の込めたそれぞれの楽曲への想いを摺り合わせることで克服できるのかも知れない。あるいは、そんな溝は僕だけが感じたのかも知れない。
その一点さえ除けば「楽しい」ライブだった。コアなファンでない僕が楽しめたというのは、恐らくキャッチーな楽曲を中心に組み立てたからであって、昔からのファンには納得のいかない部分もあるに違いない。確かに、単独ライブはフェスティバルとは違い、自分たちのファンが来ているから誰にでも楽しめる楽曲を選ぶ必要はないのかも知れない。それでも、この日のライブの盛り上がりは相当なものだった。この矛盾が現在の彼らが立っている地平から見える風景なのかも知れない。 |