Mus!c For The Masses
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(1日目)
本日のベストアクト :人力サイケデリアThe Polyphonic Spree
本日のワーストアクト:Radioheadのライブ中に拡声器で叫んでいた誘導担当係員
6:30 初年度の開催のマニフェストと出演バンドに惹かれて行ったけど、あまりの環境と運営の酷さにうんざりして「二度と行くかい!」と決心。それなのに、メンツの豪華さにとうとう決心は簡単に揺らいでしまい、フジ3日間参戦1週間後というキツイ日程にもかかわらず再挑戦。一般的な知名度という点ではフジの出演バンドに圧勝しているだけに、運営や環境に不安を残すものの気分は高揚してくる。前回行ったとき、リストバンド交換で完敗を喫したので、最低でも8時頃には並べるように5時半起床、6時半出発。
7:40 夏休みだけど早朝のため、阪神高速はガラガラ。結局、7時40分頃に南港に着き、オープンエアスタジアム正面の駐車場に車を停める。1日700円と安い上に会場から徒歩1分ということもあり、既にかなりの車が入っていて、出口の少なさからRadiohead終了後ではかなりの混雑が予想される状況。
7:50 この日、一緒にライブを見る約束をしていた人が遅れてくるということで、車を停めてリストバンド交換に直行。前回はガラガラだったインドアステージの交換所に向かうが、既に行列は500m以上になっていて、トグロを巻いている。朝方なので日陰は結構涼しいけど、直射日光を受けていると汗が滲んでくる。先週末は雨の中震えていたのに、一気に気候が変わって体力的にはキツイ。手書きで「さむ」と書いたTシャツを着た兄ちゃんの近くに並び、行列が動き始めるのをひたすら待つ。
9:10 リストバンド交換は8時からスタートするが列は思うようには進まず、結局交換できたのは9時。一応、想定範囲だったのでムカツクこともなく、長蛇の列ができているインドアのグッズ売り場を尻目にWTCへと戻り、マクドナルドで朝食。この辺は便利といえば便利。フジは食事美味しいんだけど、結局高くつくからなあ。フィレオフィッシュセットを食べて、1階の「休憩はこの中でして下さい」と書かれたロープの内側に入って休憩。
10:30 ヒンヤリした風が吹き抜けるWTCから、太陽が突き刺さるようなオープンエアスタジアムの前列へと向かう。もちろん、この日一番期待しているThe Polyphonic Spreeを見るためだ。ステージには不思議なデザインの垂れ幕がかけられ、ハープを始めとして楽器やマイクの数は尋常ではない。初日のメインステージ一発目ということもあり、既に多くの人が集まっていて、目の前には"I Bought A Ticket Only for Placebo:-)"と書いたTシャツを着た外人さんなどもいる。定刻になると、スクリーンでカウントダウンが始まり、オーディエンスはそれに合わせて叫ぶ。カウントがゼロになった瞬間に大所帯白装束バンドThe Polyphonic Spreeが登場だ。メンバーは何人だろうと数えてみたところ、23人か24人というところか。これまで見たBelle & SebastianSpiritualizedを超えて、似たようなスタイルの渋さ知らズオーケストラと同じくらいの多さで、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムス、ブラス、ストリングス、パーカッションはまだしも、ハープ、コーラス隊の他に何とテルミン奏者までいる。ステージの袖から止めどなく出てくるメンバを見て、軽い笑いが起こる中で演奏が始まる。ところが、このキワモノを見たときのような笑いが、一瞬にして彼らの音楽による笑みに変わった。オーディエンス側のエネルギー残量が100%の状態というメリットはあったにせよ、The Polyphonic Spreeの作り出す音楽の幸福感はアルバムで表現されていた以上で、会場の熱気をドンドン引き上げていく。アルバムでは冷静沈着に音を重ねながら聴き手を高揚させていく印象が強かったが、ライブでは熱さと力強さが前面に押し出されていて、覚醒感のあるフレーズが繰り返されるうちにモッシュまで始まる有り様だ。髪を振り乱してオーディエンスを煽るボーカル、取り憑かれたように乱舞しながらのコーラス隊が作り出す人間復興的サウンドをベースに様々な楽器が絡み合い、多くのオーディエンスにとって未体験の種類の人力サイケデリアが奏でられていく。結果、冗談のような大人数のバンド構成は、彼らの音楽を表現するための必要最低限の人数であることが明らかになり、トップバッターとしての役割を十二分に果たして帰っていった。暑さのせいもあるけど、分厚い音でアタマがクラクラになった。まさに、教祖降臨といった雰囲気。全てが素晴らしかった。
11:10 いきなり暴れて汗だらけになったので、クーラーの効いたWTCでクールダウン。すると、待ち合わせをしていた人からメールが来ていたので、落ち合うためにインテックスへ移動。インドアステージに向かうものの、メールの発着信の遅延と携帯がつながりにくいせいで巧く連絡が取れない。仕方ないので、そのときのアクトが終わってから出口で待ち合わせることにして、一番後に座りこんでRoonyを聴いて過ごした。Roonyは確かにメロディの耳辺りは良かったけど強烈な印象が残る程ではなく、数多くいる同種類のバンドの"one of them"のイメージを超えることはなかった。
12:20 で、Roonyが終わってやっとのことで出会うことができたけど、見たいと思っていたThe Raptureがメンバの乗った飛行機の乗客が急病で空港に戻ってしまうというドラマのような展開で時間が変更になったため、既に死体置き場状態になりつつあるSonic Stageの後の方でしばらく座り込んで雑談する。
13:30 体力も戻ってきたのでエレファントカシマシを見るためにアウトドアステージへ移動。アウトドアステージは後方近くまで人工芝が敷き詰められているので砂埃は軽減されていて、暑さを除くと比較的快適だ。前まで行って見たいというほど興味はなかったので、PAブース後方に座り込んで見ることにする。エレファントカシマシで認識できる曲は「今宵の月のように」だけだったので、尾崎豊ばりに暑苦しさを感じさせるステージングには圧倒されるとともに、呆気に取られてしまった。タイトで不気味な程に太いバックの音だけでなく、ボーカルの宮本浩次のテンションは尋常ではない高さで、曲を始めたドラムスに対して「突然始めるんじゃねーよ。俺が入れねーだろ。バーカ」と罵倒。何だか見てはいけないものを見たような気まずさの中、さらにハイテンションで演奏は続き、ラストの曲が終わると、「暑苦しいな、俺」と言いながら去っていった。間違いなく、この日一番これまでの印象が大きく変わったバンドだった。
14:40 Interpolを見るためにインドアステージに移動。ところが、インドアステージの入り口辺りが大渋滞。どうやら前のMando Diaoが入場規制が出るほどの客入りで、入れ替えがスムーズに行ってないようだ。といってもスムーズに行かないのはちょっと考えれば明らかで、数カ所あるうちの入り口を1カ所以外は全て閉鎖し、その1カ所から中の客を出させ、その後客を入れようとしているから、出てくる客が待っている客で進めず、さらに渋滞が続くという悪循環。オマケに係員は出口付近にいるだけで、全体の人の流れを全く制御できていない。結局、呆れるほどの間抜けな誘導のせいで、30分近くも並ばされるハメになった。
15:25 並んでいる時点でステージ開始時間が過ぎていたが開始時間は遅らせたようで、中に入ってしばらくするとInterpolの演奏が始まった。ニューヨーク出身とリバイバルメソッドを組み合わせたという点では最近ハヤリの一派的にカテゴライズすることもできるが、80年前後のポストパンク〜ニューウェーブムーブメント的音作りはRadio4あたりと共通しているもののちょっぴり異色。アルバムではJoy DivisionEcho & The Bunnymenを彷彿とさせる重暗しさとポップさが同居し、それらがジワジワと耳を浸食して行っただけにライブも期待。アルバムジャケットと同じように薄暗いステージに現れたメンバは上下スーツでキメていて、他のバンドとは場の雰囲気が全く違う。シルエットだけが浮かび上がるような青や緑の照明を使いながら淡々と演奏が続いていくが、ポップサイドな曲が多かったので初めて聴いた人にも充分にアピールできていたと思う。演奏のテクニックやバンド−オーディエンスの間のスパイラルによって盛り上がっていく雰囲気は皆無だけど、楽曲に漂う微妙な重さを伴った美意識が展示場という退廃的な環境とマッチしながら徐々に浸透していく。上述のバンドのような閉塞感を打ち破ろうとするようなテンションの高さや悲壮感、自分達の深層に落とし込んで行くような重さや自虐的なポップさよりも、自由奔放で開放的な重苦しさの21世紀的表現と言えそうだ。深めのリバーブがかけられ、ヒンヤリしたメロディとギターフレーズに耳も心もクールダウンさせられた。こういった単独では見るのが難しいバンドをショウケース的に見られるのが、サマソニの持つ差別化可能な競争力の一つだと思う。結果としては熱さとノリを前面に出すフェスシーケンスにクサビを打ち込んだ異色バンドの位置づけになった気はするけど、情緒的で美的感覚を感じさせるライブパフォーマンスは満足度も充分で単独再来日を強く希望。
16:10 Interpol前の渋滞ではぐれてしまった人とは、携帯はつながらず、電池切れまで起こしてしまってその後連絡が取れず仕舞い。仕方がないので、大混雑がようやく収まったグッズ&飲食エリアに向かう。アーティストグッズは売り切れのものが多く、残っているもので心惹かれるものはなかったので、パンフレットだけ購入してブラブラ。Voderfoneブースの勢いが目立ち、お姉さんを使って団扇やら光る携帯ストラップなどプロモーション用品をばらまき状態。「エレクトロニクスショウで見られるようなコスチュームだったら言うことないのになあ」などと思いながらストラップをもらい、飲食エリアに移動。カルビーのお姉さんがポテトチップの出張販売をしてたり、スタバが店を出しているところはさすがサマソニ。ただ、初年度とは比べ物にならないくらい店の種類もメニューの種類も増えているのはかなりの成長。一番空いている店でナシゴレンとビールを買って、Good Charlotteが終わったのをモニタで確認してオープンエアスタジアムへ移動。
17:25 一時の勢いは感じられなくなったとはいえ、ヘッドライナークラスのStereophonicsがサードヘッドライナーとして登場するのも日本ならではの現象だ。Stereophonicsの出番が近づく頃には強烈だった日差しも穏やかになって過ごしやすくなってきたこともあり、真ん中辺りまで進出して見ることにする。ステージが始まると太い眉毛はそのままなに、ちょっと垢抜けたヘアスタイルのKelly Jonesを筆頭にメンバと3人の女性コーラスが登場し、この時点でアルバム同様の分厚い音の予感がする。ライブは最新アルバム"You Gotta Go There to Come Back"から"High as The Ceiling"でキックオフ。ゴスペルやサザンロックの影響を強く感じさせる楽曲は、本人達も大ファンであり、ツアーも一緒に回ったというThe Black Crowsが取り憑いたように太く、黒く、そしてグラマラスだ。さらに、ロックンロールモード"Madame Helga"もアルバムバージョンを上回る泥臭さで、ギュインギュイン鳴らされるギターに身体の揺れも自然と大きくなっていく。一曲挟んだ後の"The Bartender And The Thief"が一度目のハイライト。アルバムリリース時よりもエッジが取れた感じはあるが、攻撃性を強めたサウンドが五月雨式に繰り出され、寡黙ながらもロックンロールの持つエネルギーを説得力を持って表現する。こうしたアップテンポなトラック以上に素晴らしいのがスローテンポのトラックで、"Since I Told You It's Over"の黄昏れメロディにKelly Jonesのシャガレ声がハマリ過ぎでウットリ。二度目のハイライトは技アリ"Mr. Writer"後に演奏された"Local Boy in The Photograph"。メロディ、演奏、ボーカルが完璧な形で組み合わされた楽曲は、ドロップされてから長い時間が経過しても色褪せることはなく、Kellyのボーカルの精度の高さと相まってこの日一番の盛り上がりを見せた。スマイルマークのステッカーが貼られたギターと雰囲気がマッチしたアッケラカンとしたポップな"Have A Nice Day"でテンションを和らげておいて、新作を端的に言い表している"Help Me"でライブ終了。KellyのボーカルもSteveのドラムスタイルも、分厚く華やかな女性コーラスも、ハデハデな照明も全てが絡まりながら熱さを放ちながら終了。全体的にオーディエンスの反応は冷め気味だったのが気になったが、パフォーマンスのクオリティはさすがで、来年1月の単独来日が楽しみになった。
18:50 Stereophonicsが終わると、前の方のブロックから人が出てきて、その倍くらいの人がブロックへ入っていく。次のアクトはアルバム1枚まだけで頂上へと駆け上っていったThe Strokes。個人的にそれほど興味がなかったので、開演が近づくにつれて後ろへ下がっていった。メンバーが登場するとものすごい歓声が沸き起こり、その人気の高さには驚かされる。カタカナで「ザ・ストロークス」と書いたバスドラが緩い雰囲気を醸し出す中、全力疾走の3分間ロックが駆け抜けていく。セットは3分の2くらいが2001年リリースの"Is This It"からで、残りは10月にリリース予定のニューアルバムからだ。彼らの音はスピード感とポップ感覚が親しみやすい一方で、ゆで卵のようにツルンとキレイ過ぎるところにどうも興味が沸かない。どの曲を聴いても身体は反応するんだけど、頭が頑なに拒否してしまう。この日も「ストッパーさえ外れたら楽しめるのになあ」と客観的に思っている自分が場違いな気がして、途中からトイレに行ったり、会場内を散策したりして過ごした。何曲かやった新曲もやっぱり即効性の高い必殺のメロディを持っていて、またまた大ヒットになりそうな予感がした。今度こそ楽しめるだろうか。The Strokesは「マイウェイ(日本語版)」を流暢な日本語で口ずさみながら、1時間弱のパフォーマンスにややヘヴィなStereophonicsとは違ったエネルギーを放出して帰っていった。
20:20 この日のトリは注目のRadioheadStereophonicsのときにも気になったが、オープンエアスタジアムは海沿いにあって、しかも隣に高いビルが立っているために非常に風が強く、周期的に音が流れてしまう。このコンディションの中、Radioheadの繰り出す繊細な音が影響を受けなければいいけどなあと思いながらセットチェンジを待つ。本当は前の方に行く体力は残っていたけど、会場から出るのに時間がかかると駐車場から車を出すときにハマリそうな気がしたので、出口のすぐ横で見ることにする。インドアステージやその他のステージから人が流れて来る中、ライブが始まる。前回の"Amnesiac"リリース後のツアーは、咀嚼した"OK Computer"以降の音を吸収するのに必要なプロセスだったけど、"Hail to The Thief"の場合はアルバム自体が非常にライブ感に富んでいて、そのプロセス自体は必然であるわけではなく、前回のような昂揚した気分はしてなかった。「コーンバーンンワァーー」という前回の来日時と同一人物とは思えない不気味な挨拶でライブは幕を開けた。一旦ライブが始まってしまうと、RadioheadThom Yorkeの存在感と表現力に飲み込まれてしまって、頭でっかちに考えていた今回のライブの意味付けなんてどうでも良くなってしまう。取り憑かれたように首を振りながら歌うThomの姿に、近未来的な夜景とステージ右上方に見える三日月の取り合わせがやけにマッチしていて、特に"Kid A"以降のエレクトロニカの影響が強い楽曲の世界観が増幅されて非常に映像的に感じられる。これは前回のツアーでは得られなかった不思議な体験だ。ただ、後方に陣取っていた自分にも責任があるのだけど、前にいた女性4人組がずっとおしゃべりしていて非常に不愉快だった。それから、入り口のところで拡声器を使って人の流れをコントロールしている係員の頭の悪さにも呆れた。特に、息を飲むような美しさの"No Surprises"で「どんどん奥の方に詰めていってください。」と大声で叫んでいた係員、それがあなたの仕事だというのは分かるけど、もう少し考えて欲しかった。周りにいた人全員が睨みつけていたよ。セットリストは新作の曲がやや多いながら、"The Bends"や"OK Computer"からの曲も満遍なく演奏され、個人的には大好きな"Fake Plastic Trees"を生で聞けたのは大きな収穫だった。ライブ後半は、Thom Yorkeも演奏もテンションが非常に高く、"Paranoid Android"、"Idioteque"、"Everything in It's Right Place"という流れで本編は無事終了。"Everything in It's Right Place"では前回のツアーと同じく、サンプリング音を操るJohnny Greenwoodを残して、メンバが一人ずつステージを後にし、最後にJohnnyが帰っていくという演出がされていた。メンバがステージを後にするのと同時に駐車場へとダッシュ。で、駐車場の入り口に着いたときに大歓声が起こった。どうやらアンコールがあるようだ。実は、オープンエアスタジアムのステージやスクリーンは駐車場の入り口からでも充分に見えるので、ここで"My Iron Lung"を聴き、急いで車を出してZepp Osakaの近くに移動して"Sit Down, Stand Up"と"Street Spirit(Fade Out)"を車の窓を開けて聴いた。遠巻きに見るステージは小指の先くらいの大きさにしか見えなかったし、音も小さくしか聞こえなかったけど、天保山の夜景、ステージとRadioheadの様子と音楽、その他の雑音全てを箱庭に閉じこめて俯瞰したような贅沢な気分も味わえた。もちろん、これが実際に贅沢な訳ではなく、本当ならもっと前のブロックで最後まで気持ちよく見れれば良かったんだけど、サマソニという日常的都会的な現実空間の中で「混雑」という強迫観念に負けてしまった。後ろの方に陣取った時点で負けが決まったのだろうけど、正直言って満足感は80%くらいだったので、次の単独公演、それからフジでリベンジしたいと思う。ところで、Thom Yorkeが「ワタシモソロソロ・・・」と言ってたが、あれはいったい何を言いたかったんだろうか。
21:55 Radioheadのアクトが終了したのを確かめて、そのまま車で15分ほどのホテルへ戻り、コンビニで弁当を買って食べた。非常にサマソニらしい一日だった。夜は「すぽると!」を見ながら1時頃に就寝。