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The Chemical Brothers/ Zepp Osaka(2002.2.26)

 凄かった、ケミカル。何が凄かったって、4時前にZeppの前を通ったらダフ屋に声かけられるくらい凄かった。会場に入ると動かなくても汗が滲んでくるくらいの熱気が凄かった。ライブ終了後に外に出ると、パトカーと警官がたくさんいるほど凄かった。ただ、ライブ自体は予想以上でも以下でもなかったというのが正直な感想だ。
6時50分に会場に入るとステージではDJがプレイ中で、まだまだリラックスしている会場の温度を適度に引き上げていく。bpmの変化に引きずられるようにオーディエンスの熱気もコントロールされる。予定開演時間を10分程過ぎたときにDJがステージを去ると同時に暗転。その瞬間、それまでいい感じに緩かった雰囲気が一変し、一気に渇望感が頂点に達した。

 フジロック'99、前回の来日公演と同じSEが流れ始めると、既に会場は一度目のクライマックスを迎えたかのような盛り上がりだ。Primal Screamのときと同じような雰囲気で、オーディエンスがThe Chemical Brothersを待ち焦がれていたのがヒシヒシと伝わってくる。SEがしばらく続いた後、悲鳴にも近い歓声が続く中ケミカルの2人が登場。1曲目は予想通りの"Come with Us"。今回のセットは天井に円形のスクリーンが取り付けられていて、それが垂直になったり斜めになったりし、そこに映像が映し出される。目映いフラッシュとエネルギーを解放するかのような"Come with Us"の映像はエッジの立ったクッキリした音粒子と共に運動神経を直撃する。マジで身体が勝手に動き出す感じだ。増設されたスピーカーによるパンニングも心地良い。そして、"Music: Response"から"Block Rockin'  Beats"へとつなげる。

 "Out of Control"では途中に同郷の先輩New Orderの"Temptation"のシンセフレーズを挟み込むというようなニクイ小技も効かせながらステージは全速で進む。そして、これまた予想通りのタイミングでの"Star Guitar"。それこそNew Orderが演奏しそうな青っぽいロマンティシズムを感じさせる曲はこの日のセットリストの中では少々特異ながらも、それまでの流れを維持しながらさらに頂点へ上り詰めていく。"Star Guitar"で解き放たれたオーディエンスのエネルギーを再び一点に集中させるような音と映像の"The Sunshine Underground"などを挟んで、2回目のエネルギー放出は"Hey Boy Hey Girl"。恥ずかしくなってしまいそうなベタベタな曲だけど、"Hey Girl! Hey Boy! Super Star DJ! Here We Go!"のフレーズを叫び続け、残っている僅かな力を振り絞ってジャンプ。単純で、それでいて求心力のある曲。最高です。本編ラストは予想通りクールダウンさせるようなアレンジの"The Test"。ただ、CDのRichard Ashcroftのボーカルが強烈だっただけに、ボーカルフレーズのサンプリングだけでは曲のポテンシャルを余すところなく再現するのは辛かったようだ。

 アンコール2曲目そしてオーラスは"The Private Psychedelic Reel"。この曲の爆発力は改めて言うまでもなく超絶。静と動を自由自在に動き回り、ダイナミックレンジをフルに利用してパフォーマーとオーディエンスの間のエネルギー交換を繰り返す。リフが終わり無音になって再びドラムのロール。何度も何度もこれが繰り返される。そして会場全体のエネルギーを吸い上げるかのようなフィナーレ。もうこれ以上身体動かないよ。

 という感じで楽しいライブだった。でも、これは最初から予想の範囲内で、全て折り込み済み。残念ながら予想をブッちぎるような部分はなかった。オープニング、クライマックス、クロージング、エンディングも予想通り。俺程度に予想される範囲でいいのか、ケミカルブラザーズ!?特に、最大の不満は新作のアルバムの曲がエネルギー充填/放出の起点になっていないことで、これまでのアルバムの曲で始まった流れを壊さずにフォローするに留まっていることだ。もちろん、これは計算が尽くされた結果かも知れないけど、何だか次へ踏み出すステップが見えない気がした。そして、これはアルバムを聴いたときと同じ印象だ。

 まあ、こんな屁理屈をこねながらも、"Out of Control"のNew Orderのフレーズに微笑み、"Star Guitar"では跳びまくり、"Hey Boy, Hey Girl"では叫び続けた。音楽は理屈で聴くもんじゃないって意見はごもっとも。ただ、ライブ全体から受けた印象は予定調和を会場内に充満する圧倒的なパワーで乗り切ったって感じだった。まあ、救いは音の大きさではなくグルーヴで乗り切ったところではあるけど。前回のライブの"The Private Psychedelic Reel"のラストで感じた「いつまでも続きますように」という想いが今回は起こらなかったというところに、今回のライブが集約されているような気がする。

 あんなライブをできるバンドはそうそうないだろうけど、普通より少々上くらいじゃ我慢できないんだよ、ケミカルブラザーズ。