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The Chemical Brothers/ Zepp Osaka(2005.2.9)
 みんなが大好きThe Chemical Brothersのライブな訳で、今回もメチャクチャ人が多く、18時40分に会場に着いたときには、前から3分の2くらいまではギッシリと埋まっていた。1人辺りのスペースも異常に狭く、ちょっと身体を動かすと隣の人にぶつかってしまくらいしかなく、踊るのも大変そう。「ちょっと人詰め込みすぎじゃないのか?」と思いながら、混雑とは無縁のPAブース横に陣取って開始を待つ。

 開演前にDJが回しているが、曲が終わりそうになると大歓声と拍手が沸き起こり、欠乏感がフロアを埋め尽くす。9時頃から少しずつフロアの温度を上げるようなプレイを見せ、アゲアゲのフレーズで期待感を煽った後で、ややピッチを落としながらも"Are You Ready? Yeah"のサンプルを乗せて期待感を刺激する。予定時刻を15分過ぎた頃にDJがステージを後にし、フロアの照明が落とされ、ステージのブルーの照明が機材を浮かび上がらせた。

 最近のセットと同じサンプルが流れ、ライトがステージとフロアを縦横無尽に駆け巡る中、19時20分頃にお待ちかねのThe Chemical Brothersが登場。1曲目は"Hey Boy, Hey Girl"。イントロのバスドラの音が鳴った瞬間に熱狂度はさらに上昇する。アルバムと比べるとリズムが強調されたミックスになっていて、音圧も強めなので身体が自然と動き出すのに加えて、"Here We Go!"という日本人でも歌える短いキラーフレーズを持っているので、フロアの一体感は尋常ではなかった。ステージセットは前回と比較すると地味で、ステージ上に小型のディスプレイが2台、ステージ後方全面に大型スクリーンがあり、そこにビジュアルが映し出される。ライティングはブルーを基調とし、3台置かれたレーザー装置がスモークの中に光の壁を作り上げていた。

 1曲挟んで新作"Push The Button"のリードトラック"Galvanize"。アルバムのアートワークと同じく拳を突き上げるアニメーションをバックに、大味なフレーズとQ-Tipsのサンプルを重ねて、やや落ち着いた流れに再度上昇カーブのキッカケを与える。この後も"Music: Response"や"Block Rockin' Beats"などの切れ味抜群のフレーズを持ったヒットシングルを連発し、しかも最も美味しい部分のみを矢継ぎ早に繋げていく手法によって、非常にスピード感ある展開を見せる。

 圧巻は照明が落とされて始まった"Out of Control"〜"Star Guitar"の流れで、いつも通り間奏からNew Orderの"Temptation"へと流れる新旧マンチェスターリレーも健在。そこからシームレスに繋がるフロアアンセム"Star Guitar"では、それまでのストイックなリズムの洪水からの開放感と幸福感が非常に大きく気持ちが良い。そして、フロア中の人という人をジャンプさせた異様な盛り上がりの中、一旦音が鳴りやんで本編前半が終了。

 本編後半は新作のクロージングトラック"Surface to Air"でスタート。それまでのオーバードーズされた興奮をクールダウンさせるような静かな始まりだが、リズムトラックは鍛え上げられ、メランコリックな主旋律にもかかわらず、ひ弱さは感じさせない。その他の新作の曲では、渋い輝きを見せていた"The Boxer"はセンチメンタリズムを感じさせる部分が後退し、リズムの強化ばかりが耳につき面白味には欠ける一方で、"Come Inside"は曲中に含まれる各種フレーズが後半のDJ的プレイにマッチしていて、アルバムよりも魅力が大幅にアップしていた。

 但し、「このままのペースで進むとどんなことになるんだろう」とまで思わせた前半に比べると、後半はダメっぷりが目立った。後半はDJとしての側面が強く打ち出され、リズムの強弱を付けたり、各種のループを重ねたりと奮闘していたが、結果的にはバスドラの連打と時折挟まれるキラーフレーズが単発的に輝きを発する程度で、前半の巨大なエネルギーがフロアを飲み込んで行く感覚には程遠かった。特に、セットリストの要所には旧譜が配置されていて、新作の曲が流れを一変させられない分、停滞感と先細り感のみが増幅されていた。あと、ノリが今ひとつのときにTomとEdが大きく手を広げてレスポンスを要求するアクションも回数が増えるに連れて閉口。それでも、優しい日本のオーディエンスはシッカリとレスポンスを返していて、ケミカルが日本を好きな理由も何となく分かる気がした。

 後半で感心したのは"The Golden Path"の化け方で、ユルユルで印象が薄かったCDとは違い、包容力のある強靱なダンストラックへと変貌。それまで寒色系中心だったライティングが、オレンジを主体とした暖色系に変わり、曲の持つイメージとぴったり一致していたことも印象度を高めた要因だと思う。それ以外は特に見せ場らしい見せ場はなく、1時間15分程度で本編終了。

 約5分のインターバルを挟んで、クロージングトラックが相変わらず"The Private Psychedelic Reel"だったことにさらにガックリ。この曲の爆発力とクロージングとしての適切さは認めるし、オーディエンス側が待ちに待った「お約束」の曲で、ミックスも前回と多少変わっているとしても、そろそろこの曲を変えることはできないのだろうか。The Chemical Brothersの音楽がパフォーマーとオーディエンスの需給バランスが取れた予定調和の上に築かれた巨大なビートであるとはいえ、余りに怠慢で安易過ぎないだろうか。

 結局、キラーフレーズを連発するか、身体が音波で震えるくらいの音圧以外に今の彼らがライブを支配することはできないのかも知れない。ケミカルのライブが良く聞こえるのは、パフォーマー側がオーディエンスの音を聞く環境と体験を完全に制御できるからだ。そんな場を持ってしても、前半が予想を大幅に上回るパフォーマンスだっただけに、後半の落ち込み具合は辛かった。楽しくないことはなかったけれど、工夫を凝らしたパフォーマンスではなかったようにも感じた。その一方で、楽しませるための「仕掛け」は充分に盛り込んでいるから、楽しんでいる人が多いのも理解できる。ただ、過去に縋って生き延びるのはまだ早過ぎると思う。(2005/2/11)