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The Delgados / Club Quattro
 「大阪のチケット売れてないらしい」という噂を目にする度に、Catatoniaの悲劇を思い出し、「あまり少ないと気まずいなあ」と漠然とした不安が過ぎる。ライブの日にしては珍しく定時まで仕事をし、ちょうど19:00にクアトロに着いた。不安の種だった客入りは、確かにそれ程多くはなかったが、テーブルが出たままになっていることも考慮しても7割くらいは埋まっていて一安心。

 19:10頃にオープニングアクトのAutour de Lucieが登場。フランス人の男女2人組で、女性がボーカルとギター、男性がキーボードというシンプルな構成だ。物憂げで無防備なメロディとアンニュイなフランス語の語感はミニシアター系映画のサントラのようで、心のデコボコを直してくれそうな音ではあるが、やや平板的過ぎてインパクトは小さい。終盤の英語で歌った曲で僅かに盛り上がったが、オーディエンスも反応しづらそうで、うまく温度を上げることができないまま約30分の持ち時間は終了。

 20分ほどのセットチェンジの後、照明が落とされ、入場のテーマソングが流れる中、サポートメンバー2人を加えた6人が登場。AlunとPaulは繊細そうな雰囲気で、Emmaは想像よりも小柄で可愛らしい。Stewartは無駄にデカイ。初来日公演は"I Fought The Angels"でスタート。メンバーもオーディエンスも腹を探り合っているような緊張感があり、身体を揺らしながら音楽に聴き入っている人が多数。続いて、ノリノリでもシットリでもない"Is This All This I Came For"。AlunとEmmaのツートップのボーカルは好調で、ソロはもちろん、ハーモニーもバッチリ。新作が非常にポップだったので、ライブもポップス寄りかと思いきや、ポップさを残した上でEmmaが激しく掻き鳴らすノイジーなギターによって、ロック/オルタナティブ色も垣間見える。

 サポートメンバーがキーボードをストリングスに持ち替えた"The Light Before We Land"では、ノイジーでスペイシーでポップでドリーミーな摩訶不思議な世界を描いたかと思えば、ヘヴィなギターとドラムスで緩かった雰囲気を自ら切り裂き、最終的にはEmmaのキュートなボーカルに戻るという自在さ。そんな力強いライブ仕様の音の中にも、生のストリングスやピアニカを取り入れて原曲のニュアンスを再現する拘りと、分厚い音に埋もれることのないメロディの屈強さはライブを通して際だっていた。

 静かだった反応が変わり始めたのは、日本酒をラッパ飲みしていたStewartがメモを見ながら、「こんばんは。私は日本語を話せません。」と日本語で話したとき。このときウケに気を良くしたのか、その後は曲の間には酒を煽って雑談。「今日はカラオケバーに行って、Queenを歌うんだ」とか「バンドを初めてから10年で初めての日本だ。今日来てくれた人本当にありがとう」とか他愛ない内容だけど、アットホームな雰囲気が充満し始める。"Everybody Comes Down"ではメンバーの要求ではあったが拍手も起こり、ポカポカした春のようなメロディがと微妙に暖まったフロアの温度がキモチイイ。曲が終わったとき、「大阪の人は世界一のハンドクラッパーだね(笑)」という素晴らしいMC。その後も、PaulやEmmaが曲の出だしを間違えてやり直したりというユルユルの流れの中、幸福感は次第に強まっていく。その後もオシャベリと酒の勢いは増し続け、その音楽の内容の濃さとのギャップに唖然。演奏しては雑談し、雑談しては酒をラッパ飲みし、演奏の途中にはタバコを吸うというサイクルで進んだ本編1時間10分、アンコール10分間は本当にアッという間に過ぎていった。

 キュートさと激しさの間で猫の目のようにクルクルと曲の表情を変える"Accused of Stealing"、キーボードとストリングス、そしてリズムが強調された活躍した"All You Need Is Hate"、ストリングスとギターの競演も骨太の2005年モデルに化けていた"The Arcane Model"などの本編も素晴らしかった。ただ、John Peelについてコメントした後に始まった深い悲しみから抜け出すような力強さを持った"Pull The Wires from The Wall"から"No Danger"のアンコールの流れは別格。特に、"No Danger"は消え入りそうなストリングスの音から始まり、優しく暖かいメロディをAlunの繊細なボーカルがなぞりながら徐々に昂揚感を高めていき、EmmaのノイジーなギターやPaulのハイハットを多用したリズム、キーボードにストリングスが絡まりながらSpiritualized並みの圧巻のサイケデリアを描き出して大団円。

 Belle & Sebastianの繊細なアンサンブル、Franz Ferdinandのポップな爆発力、Mogwaiの強力な破壊力という異音楽空間を変幻自在に動き回る様子を目の当たりにして、「グラスゴーの裏番長」の異名の神髄を見た気がした。音楽もバンドのスタイルも野外に似合いそうだし、夏にはもっとたくさんの人達に見てもらえる場所があればと思う。ライブ終了後にStewartが酒瓶を片手にフロアへ下りてきた。オーディエンスも気付いているものの、嬌声を上げることも、取り囲むこともなく、一言二言笑顔で話しかける程度で、アットホームな感じのライブの雰囲気が凝縮されていた。ちょうどStewartが目の前を通ったときに、ライブがすごく楽しかったこと、また大阪に来て欲しいこと、今日はありがとうと言って握手をしてもらった。その後、入口の物販横のテーブルに移動したので、Stewardとサポートの人のサインを貰えた。最後の最後まで人柄の良さが溢れていて、笑顔がなかなか消えることのない素敵な夜を過ごすことができた。(2005/2/19)