Mus!c For The Masses
Home > L!ve > The Polyphonic Spree

The Polyphonic Spree / Club Quattro
 「polyphonic 【形】多声の」、「spree【名】酒盛り、バカ騒ぎ、浮かれ騒ぎ」だから、強引に言うとThe Polyphonic Spreeとは「雑多な声が混ざったのバカ騒ぎ」。結論から言えば、今回のライブはこのバンド名を体現したものだった。

 ステージは新譜のインナースリーブにも書かれていた"HOPE"の垂れ幕だけの簡素さ。それでも、ドラムスが2セットにパーカッション、キーボード、フルサイズのハープやテルミンというクアトロのステージの大きさからすると無謀な数の楽器群が閑散さを感じさせない。というか、始まる前に既にステージ上で人のいるスペースがほとんどない状態だった。

 ほぼ定刻にメンバーが登場。楽器とマイクだけで溢れかえっているクアトロのステージに出てきたメンバーは20人を超えていて、人口密度ではフロアよりも高いくらいだ。足場が少ないのでメンバーが揃うのに時間がかかり、その間を繋ぐようにハープの荘厳で深みのある音でライブは始まった。続く"We Sound Amazed"も一応はその「音楽的」な面を引き継いだものの、コーラスが加わった瞬間に会場の雰囲気は一変。何を食べたらこんなに身体を動かしながら歌を歌えるんだというくらいに髪を振り乱し、身体を捩りながら発する人間の声が持つ力強さがそれまでの「音楽」をアッという間に飲み込んでいく。

 ステージではハープやフルート、バイオリン、テルミンなどの音が鳴らされているが、ニューアルバムで聴けるような繊細なオーケストレーションはほとんどなく、許容量限界までパワーを蓄積しては放出し、放出しては蓄積するサイクルを繰り返していき、音楽の持ち得るエネルギーの実証のような感じだ。続く"It's The Sun"でもウネるようなエネルギーの流れが会場を支配し、フロア前方を中心にして笑いながらジャンプするオーディエンスが続出。そして、この曲を聴いていると、彼らの中で最も重要な位置を占めるパートが「人間の声」であることが明白だ。そして、それは歌の巧さとか繊細な表現力ではなく、力強さがファーストプライオリティである。イントロから比較的楽器パートのアンサンブルが前面に出ている"Hold Me Now"でさえ、結局はリフのボーカルとコーラスが中心となる構成の徹底ぶりも見事だ。

 序盤の2曲で既に体力を使い果たし、ほとんど慣性の法則で身体を揺らしている状態での"Two Thousand Places"はキツイ。それでも、脳の疲れを感じる部分をバイパスして筋肉を直接刺激するようなリフに飛ばされてしまい、膝がガクガクしているのにキュートなフルートのお姉さんの笑顔を見ながらジャンプし続け息も絶え絶え。イケイケの流れをクールダウンさせる"One Man Show"で何とか呼吸はできるようになったものの、既に体力的には限界を超えている。そして、それは、何かを与えるパフォーマーと何かを受け取るオーディエンスという関係ではなく、オーディエンスがパフォーマーの領域に踏み込んで大声で歌い、身体で感情を表現するライブだからこそのキツさだと思う。あらゆる瞬間で「Give & Take」ではなく、「Share」する関係の構築。この日の体験は、それこそが音楽が本来持つべき基本的な特性のような気さえしてくる。

 それぞれの楽器の音が全体としての「バカ騒ぎ」に埋もれてしまっていたのが残念といえば残念だが、それを補って余りある人間の力強さと音楽の楽しさが表現され、その当然の帰結としてフロアには笑顔が溢れていた。音の傾向や生成プロセス自体は全く違うものの、Spiritualizedと同種のカオスとサイケデリアを持ったパフォーマンスで、久々に感情をストレートに表す時間を過ごすことができ、終わってからもしばらく宙に浮いたような感覚が続いたライブだった。(2004/9/7)