「うわ、えらい変わってるなあ」久々に来たZepp Osakaの周りは2007年のUnderwoirldのライブで来たときにはなかった大きなマンションが建っている。「まあ、1年以上経っているから変わっていても当然か・・・」と思いながら、駐車場から歩いて会場へ向かった。
Travisのライブは2001年と2008年のフジロックフェスティバルと2003年のサマーソニックで見ているので、それ程久しぶりという感じはしないものの、単独公演としては1999年の9月以来となる約9年ぶり。よく考えてみると、Travisのライブに来るのは、あの初来日のときの幸福感を追体験したいからかも知れない。その点、去年のフジロックフェスティバルは「天からの恵みの演出」はあったものの、新作リリース前の楽曲の割合が多いためか、今ひとつチグハグな印象が強く、少し期待ハズレだった。また、敢えてロック色を強めた感じの新作も少し芯から外れていたので、実は今回のライブで「あの時」の追体験ができるかどうかは不安だった。
18時45分に会場に着いたときには前方はほぼ一杯ながら、後ろの方は結構余裕があって、ユッタリと見られる程度の混み具合。いつも通り、PAブースの横に陣取って待機。19時までは今にも始まりそうなくらい、ステージ上では何の作業も行われていなかったのに、19時になった途端にギターのチューニングなどの準備が始まり、結局フロアの照明が落ちたのは19時15分。それと同時に"Sound
of Music"の"Do-Re-Mi"が流れ始め、しばらくしてメンバーが登場するやいなや、場内から歓声が沸き起こる。
オープニングトラックは"Chinese
Blues"。アルバムよりも演奏は随分とロック色が強くなっていて、Franの喉に引っかけながら声を絞り出すような歌い方が曲とマッチはしているが、やっぱり個人的には違和感を感じる。ただ、これは続く"J.
Smith"でもそうだったが、ドラムスの音が目立ち過ぎていて、音のバランスが崩れ気味だったせいかも知れない。次第に音がこなれて来ると、"Selfish
Jean"、"Pipe Dreams"、"Re-Offender"と、アップテンポでポップな曲からスローで叙情的な曲でダイナミズムを生み出し、ペースを完全に取り戻していた。
「次の曲は3拍子だから、曲に合わせて身体を揺らしてね」と言いながら「イチ、ニ、サン、シ」と4まで数えてしまうMCの後に始まった"Love Will
Come Through"、サビ部分の大合唱にFranが「Cool!」、「Fantastic!」と叫んだ"Closer"から、「Back! Back!
Quiet!」と叫びながらFranがフロアに降りてきて、オーディエンスと同じ目線で歌った"Falling Down"への中盤の流れは序盤の「?」を払拭。
その後は"Writing to Reach You"などの初期の名作を織り交ぜながら、新作からの"Song to Self"や"Before You
Were
Young"など、彼らの絶対的な長所である「メロディの良さ」を中心にした選曲でライブは進む。溜まりに溜まったオーディエンスのTravisへの愛情が徹底的にプラスに作用したライブで、メンバーもそれを感じ取ってか、終始笑顔で演奏。そして、それに呼応してオーディエンスも好レスポンスを返すという正のスパイラルが常に繰り返される。そんな中、再びサビで大きなコーラスが起こった"Turn"で本編終了。
数分のインターミッションを挟んでステージにはFranがアコースティックギターを持って登場。「次はB面の曲なんだ。ちゃんと弾けるかな。大丈夫みたいだ」というMCと共に、"Sarah"を演奏。アルバムではギターと共にピアノが流麗さを増していたが、ギターのみでもその美しさは翳らず、逆にメロディの良さとFranの歌の巧さが目立っていた。Dougieがリードボーカルを取った"Ring
Out The Bell"を挟んで、"My
Eyes"。多少メロウな曲が続き過ぎの感はあるものの、とにかくメロディの良さが圧倒的で、グイグイと引き込まれていく。
そして、"Flowers in The
Window"ではメンバーがステージ中央に集まり、マイクをオフにして完全なアンプラグドで演奏。始まると同時に沸き起こった拍手に、Franは「拍手は止めて指パッチンにしようよ」と呼びかけ、ときに音に聞き入りながら、ときに遠慮気味にコーラスを被せながら進行。そして、やっぱり雨模様だったこの日のラストは"Why
Does It Always Rain on
Me?"。サビの前に「サビでは2階席の人も立ってジャンプしてね。足の怪我をしてなかったらだけどね」という言葉を挟み、全員でジャンプ&大合唱の中で1時間45分のライブはフィナーレ。
オーディエンスからバンドへ、そしてバンドからオーディエンスへ、そして両者から楽曲への愛情とリスペクトに溢れた時間はアッと言う間に終わってしまったけれど、その後には溢れて止まらない笑顔が残っていた。できるだけ分かりやすい英語を使ってオーディエンスとコミュニケーションを取りながら音楽を伝えようとするバンドの姿勢、それを全て迎え入れようとするオーディエンス、この日はそのどちらもがMVP。そんな中、ライブ前に感じていた漠然とした不安は単なる笑い話に変わり、日を追うに連れて良さが過大評価される傾向のある過去は完全に吹き飛んで、この日は間違いなく新しい彼らのライブの基準となる1日になった。
多少不本意かも知れないけれど、Coldplayのように曲やバンドが膨らみすぎて自分自身の意図だけで制御できなくなることもなく、Travisは「まるで、ホームで演奏してるみたいだよ」という言葉通り、非常に恵まれた環境の中で音楽を奏でていると思う。
「9年も経つのに全く変わってないなあ」久々に見たTravisの単独公演の余韻に浸りながら、建物が林立する道を通り抜け、暖かい気持ちのまま駐車場から日常へ向かった。(2009/02/28) |