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2009 August Review

Humbug / Arctic Monkeys                                                Arctic Monkeys - Humbug

★★★★

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James Fordに加え、Queens of The Stone AgeのJoshua Hommeをプロデューサに迎えた約2年ぶりの3rdは、前作と同じく、1stの即効性の高いメロディと直情型アレンジのロックスタイルとは距離を置きながら、多彩なアイデアを前作よりも自然に取り込むことに成功。ドラムロールのイントロに「オッ」と思ったものの、意表を突いて内部にエネルギーを貯めていく"My Propeller"で始まると、ネトッと絡みつくようなリズムトラックと妖しげなギターのフレーズが特徴的な"Crying Lightning"、アクの強さこそ弱めながらも同郷の大先輩Morrisseyを彷彿とさせるボーカルワークを聴かせる"Cornerstone"、瞬間的な爆発力とエッジの鋭さで切り込んでくる"Pretty Visitors"など、楽曲の幅はますます拡大。特に、カラダに染み込んでからビンビン効いてくる重さを獲得したことが大きく、結果的に大声で喚き騒ぐ憎めない不良の1st、ギリギリの線を越えてしまったような凄みを感じさせるワルという2ndから、優しさと鋭さを持つ足を洗った青年という印象へと変貌。僅か4年という短い時間スパンに対するスタイルの変化が大き過ぎるために一聴すると軋みを感じる部分もあるものの、実は奇を衒うことのない正常進化。それでも、以前の超絶の爆発力をリアルタイムで体験していることがマイナスに作用し、「もう一度、あの音が戻って来てくれれば…」という想いが巡るのも本音。(2009/10/24)

No More Stories Are Told Today I'm Sorry They Washed Away No More Stories The World Is Grey I'm Tired Let's Wash Away / Mew      

★★★★

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出世作"Frengers"を手がけたRich Costeyを共同プロデューサに迎えた4年ぶりの5thアルバム。前作と同じくギターが強めにフィーチャーされた曲もあるものの、基本的には以前のような美しいメロディをコアに据えた従来の方法論による楽曲がズラリ。厚めのアレンジながらも不思議とトゥーマッチ感は控えめな"New Terrain"で始まると、ゴツゴツした攻撃的なギターのフレーズが新味を感じさせる"Introducing Palace Players"などを挟みながら、シンセサイザーとギターのバランスを巧みに取った"Beach"とアッサリ感の目立つ展開。中盤以降は、珍しくカオティックな面が見え隠れする"Sometimes Life Isn't Easy"などもあるものの、突き抜けるような開放感と心地良い温度感を持つ"Hawaii"や美しさと力強さを兼ね備えたサウンドスケープを持つ"Vaccine"や"Reprise"など、自分達の音を理路整然と表現。今年ブレイクした新人バンドが80年代的メソッドを活用しながら、サウンドは2009年型最新仕様だったのに比べて、この作品はメンタリティを含めて80年代的なロマンティックを感じさせるサウンドで、結果的にリバイバル的な仕掛け臭さはなく、一風変わったエバーグリーンな感覚が表出。たまたま重なった偶然がプラスに作用している気もするものの、その立ち位置を発見したこと、そしてそこから最初に鳴らしたサウンドのクオリティが高かったことが勝利要因。(2009/10/18)

Sing Along to Songs You Don't Know / Múm                  Mum - Sing Along to Songs You Don't Know

★★★☆

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約2年ぶりの5thアルバムは、前作と同じく電子音と生音が絡み合う人肌温度のエレクトロニカで、そのガチャガチャした牧歌的なサウンドは、ジャケットさながら湖畔での妖精達の演奏会を覗き見しているような感覚。ローファイなギターやピアノを鳴らしつつ、ストリングスや柔らかなブラスを重ねて厚みを持ったキュートさを感じさせる"If I Were A Fish"で始まると、序盤は透明感のある音で寡黙なイメージを保ちながら、サビに向かうに連れて饒舌になって行く"Sing Along"、簡素なシロフォンの出だしから一転、アップテンポのイントロから全力疾走で駆け抜ける"Prophecies And Reversed Memories"、それぞれのパートが思い思いに奏でた音が消失点で重なり合う"A River Don't Stop to Breathe"、壊れたメトロノームに必死に追いつこうとするようなユーモラスなサウンドの"The Smell of Today Is Sweet Like Breast Milk in The Wind"など、前半の曲に佳作が多数。独特の視点から世界を俯瞰したサウンドスケープを持ちながら、神々しいばかりのスケール感も小難しいアート性も放棄し、いたずらっ子っぽい表情を浮かべたポップサイドの楽曲群は好印象。その世界観に徐々に慣れてくる後半にキメの一押しが欲しくなる「相変わらずのMúm的展開」ではあるものの、聴いている内に優しい気持ちになり、笑顔で心と身体がユラユラ。今の季節にピッタリの温度感を持った素敵な作品。(2009/10/13)

Shaka Rock / Jet                                                              Jet - Shaka Rock

★★★☆

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過去2作でタッグを組んだDave Sardyから離れ、セルフプロデュースによる約3年ぶりの3rdアルバム。前作はオーバードーズ気味のアレンジによって、背伸びしている印象が強かったものの、今作は全体的に無駄を削ぎ落としたシンプルなロックンロールへと回帰。音の厚みで圧倒するのではなく、アンサンブルで畳みかけてくる"K.I.A (Killed in Action)"で始まると、破壊力は若干足りないものの、喉に引っかけて歌うボーカル、必要十分な性急さを持つリズム、エッジの鋭さを磨き上げたギターの3要素が"Are You Gonna Be My Girl?"を想起させる"She's Genius"など等身大の攻撃性を感じさせる展開。中盤以降はメロウさと力強さを絶妙なバランスでブレンドした"Seventeen"や"Goodbye Hollywood"、リズムギターのフレーズが非常に印象的な"Times Like This"、アルバムのメランコリーを一手に引き受けた"She Hands A Grudge"など、勢いだけではない側面もアピール。たった1曲でアルバム1枚分の閃光を放つ曲がある訳でも、サウンドプロダクションで擬似的なスケール感を表現する訳でもないので、これまでのアルバムに比べて派手さに欠けるのは否定できないものの、この実を伴った正統進化は今後の作品の重要な礎。そして、その礎を軸にして、爆発的なキレ味とうねるようなグルーヴを手に入れたとき、等身大のスケール感を手に入れ、大化けしそうそうな予感。(2009/10/11)

Jewellery Quarter / The Twang                                                      

★★★☆

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Mint RoyaleのNeil Claxtonをプロデューサに迎えた約2年ぶりの2ndアルバム。独特のクセのあるメロディとグラマラスなアレンジから滲み出してくるグルーヴを感じさせる楽曲が印象的だった前作から一転、メロディもアレンジもキャッチーさを軸に構築された感じが強く、標準的な仕様のポップロックへと変貌。カウベルをアクセントにして、ガチャガチャしたリズムと低音のピアノがカラッとしたポップワールドを作り上げた"Took The Fun"で始まると、アッケラカンとしたギターの音色とフレーズがメランコリックなメロディと程よく溶け込んだ"Barney Rubble"、キラキラしたキーボードサウンドがメロディの持つ青さをデフォルメした"Twit Twoo"、オリエンタル風メロディにトライバルなリズムを突っ込んで大衆的なグルーヴを生み出した"Put It on The Dancefloor"、ノスタルジックなメロディを外連味なく仕上げた"May I Suggest"、静かなダイナミズムを感じさせる"Williamburg"など平均を超えるレベルの楽曲がズラリ。確かに、スリリングな部分が目減りして、全体に小さくまとまったことは残念で、結果的に日和ったように感じられる部分は否定しませんが、個人的にはイギリス的なポップミュージックが多いところがお気に入り。当初の期待が大きかった反動もあって、本国では辛辣なレビューが多いですが、「これはこれでアリなんじゃないの?」というのが正直な感想。(2009/10/04)

Temporary Pleasure / Simian Mobile Disco                    Simian Mobile Disco - Temporary Pleasure

★★★☆

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Super Furry AnimalsのGruff RhysやGossipのBeth Dittoらをフィーチャーした約2年ぶりの2ndアルバム。基本的には前作のテクノ寄りのエレクトロポップ路線を踏襲していますが、今年大流行のバキバキのエレクトロポップと比較すると格段に整理された内容。そのGruff Rhysをゲストに迎え、甘めのメロディとアレンジの取り合わせがNeon Neonを彷彿とさせるた"Cream Dream"、Beth Dittoをフィーチャーし、クドさを充分に抑制した"Cruel Intentions"、そのまんまHot ChipサウンドのAlex Taylorとのコラボレーション"Bad Blood"などは比較的ポップミュージック的な世界を構築し、座って聴いても楽しめる内容。その一方で、エモーションの振れ幅を極端に抑制した先行シングルの"Audacity of Huge"、軽めながらもエッジをクッキリと立てた"10000 Horses Can't Be Wrong"、淡々と、ストイックに刻み続けるリズムトラックが印象的な"Synthesise"などは、フロアの空気を無添加でパッケージングした雰囲気。どちらのパターンも平均レベルはクリアしていて、フロアで流す分には非常に心地良いことを理解できる一方で、CDというメディアで「聴かせる」場合には中途半端な印象。特に、ド派手な大技を繰り出すタイプでないことも災いして、アルバムを通してメリハリが弱く、フォーカスも甘めなのは残念。ただ、間違いなくライブでは化けそうな曲が多いのは、せめてもの意地。(2009/09/27)