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2009 July Review

Lungs / Florence + The Machine                                   Florence + The Machine - Lungs

★★★★

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Florence Welch率いるロンドンの5ピースの1stアルバムは、全体を通してオーガニックな印象で、時折ガッツリとソウルフルに振れるアプローチが猫も杓子もエレクトロポップに飛びつく今年のシーンと一線を画していて新鮮。序盤のしおらしさと中盤以降のポップさ、パワフルさの対比が印象的な"Dog Days Are Over"で始まると、薄い音をレイヤードすることで繊細さと力強さを両立させた"Rabbit Heart (Raise It Up)"、ボーカルの豊かな表現力が曲に艶を与えた"Howl"、良質のギターロック"Kiss with A Fist"など、シックさやエレガントさとは異なる大人っぽい音作りは魅力的。トレンドでガチガチに固めた表層的なファッション性を排除したサウンドは非2009年仕様。但し、実はJames Ford、Paul Epworth、元PulpのSteve Mackeyらをプロデューサに起用していて、そんなシーンとの距離の取り方もイメージ戦略の一つなのかも。それでも、野暮ったさが残る楽曲群にストリングスやキラキラしたキーボードを要所に配備し、「深み」や「味わい」に必要十分なポップ性を織り込んだのはトータルプロダクションとしての勝利で、作り込み過ぎた「プロデューサの作品」的な臭いがしないのも大きく、シーンに明確なオルタナティブを突き付けた「心意気」もプラスに作用。内容の良さに加えて、タイミングの良さも相まって、シーンで一番目立つポジションの獲得に成功。(2009/09/23)

La Roux / La Roux                                                          La Roux - La Roux

★★★☆

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注目のデュオのデビューアルバムはトレンドの80sエレクトロポップ直系サウンド満載ながら、バッチリとフルメイクを施し、キッチリとドレスアップしたLittle Bootsよりも隙がある分、リラックスして聴けるポップス仕様。煌びやかなシンセサイザーと正確にビートを刻み続けるリズムトラックにファルセット気味のボーカルでポップかつクールな"In for The Kill"で始まると、下世話なメロディと大仰な電子サウンドの食い合わせがマッチした"Tigerlily"、攻めサウンドにロマンティックな要素を加えた"Quicksand"とカラフルな展開。その後もメランコリックさを強調した"Colourless Colour"や"Cover My Eyes"、黎明期のエレクトロポップのような"As If By Magic"など、ポップミュージックとしてのクオリティは充分合格点。やや喉に引っかけるボーカルスタイルが気になる一方で、適度な刺激と心地良さを併せ持つ楽曲群は中毒性があって、若干甘さは控えめながらも、初期のErasureなどのガチガチのエレクトロポップが好きだった層には充分アピールできそう。今年のエレクトロポップのパンデミックは業界からの仕掛けの匂いが強くて違和感があったものの、これは思春期にニューウェーブの洗礼を受けた世代の子供達がシーンに現れて来ただけなのかも。とすると、ひょっとして来年はネオアコやニューロマンティックが来たりして…(2009/09/13)

Wait for Me / Moby                                                         Moby - Wait for Me

★★★

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1年3ヶ月という短いインターバルでリリースされた9thアルバムは、前作でのグラマラスなダンスミュージックから一転して、長音を多用したストリングス系サウンドをバックに従えたパーソナルな面が強調された内容。ボンヤリした明かりがガランとした部屋を満たしているようなイメージの"Division"で始まると、掠れ気味のボーカルとメランコリックなエレクトロニカのコンビネーションが見事な"Pale Horses"、簡素なアレンジが目立つ楽曲の中でトゥーマッチギリギリで踏み止まった"Shot in The Back of The Head"、Moby自らがボーカルを取った"Mistake"などでは何とかビートが感じられるものの、それ以外はアンビエントな曲のオンパレード。サウンドに共通して感じられるのは深夜や孤独といった類のキーワードで、まるで周囲を取り囲む静寂の中から染み出して来た音によって楽曲が構築されたような雰囲気。確かに、夜に部屋の明かりを落として聴くと非常にハマることは理解できるものの、さすがにそこまでシチュエーションを限定されると窮屈。全体を通してストイックさや抽象度が高いために集中力を維持することが難しく、ソウルフルなボーカルをフィーチャーした"Study War"や儚くも美しい"Slow Light"のようなアルバムの楔になるような曲でさえ、その良さを的確に印象付けられておらず、個々の曲は悪くはないのに退屈。(2009/09/05)

Technicolor Health / Harlem Shakes                                            

★★★★

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Chris Zaneプロデュースによるニューヨークの5ピースバンドのデビューアルバム。キャッチーなメロディを武器にカラフルなキーボードを散らした楽曲群は、ハンドメイドの緻密さと温かさを持ちながらも、コントラストの強い2009年型サウンドにも埋もれない内容。要所に加わるブラスが人懐っこいメロディラインに躍動感を加える"Nothing But Change Part II"で始まると、サビのボーカルのユニゾンが一体感を作り上げる"Strictly Game"、ユッタリしたテンポに早口のボーカルやキラキラしたキーボードといった相反する要素を加えた"TFO"、ピアノと薄いコーラスがメロディのメランコリックさを際立たせる"Niagara Falls"、ギターロックの長所を鮮やかに描いた"Unhurried Hearts  (Passaic Pastoral)"や"Natural Man"、ベタ塗りのキーボードのサウンドに飄々としたメロディを重ねた"Technicolor Health"など、メロディもアレンジも充分に練り上げられ、最後まで飽きさせることはありません。特に、積極的に生のブラスサウンドを導入するなど、音に厚みを持たせる工夫が奏功し、チープさを感じさせながらも、薄っぺらな部分は皆無。もう少し尖った部分が欲しい気がする一方で、アイデアを充分に整理しつつ、インディーズ路線の王道を進みながらも、独自の色合いと風合いを感じさせる内容は充分ハイレベル。(2009/08/31)

Grrr... / Bishop Allen                                                      Bishop Allen - Grrr...

★★★☆

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ブルックリン出身のデュオの約2年ぶりの3rdアルバム。前作は個々の楽曲の圧倒的なレベルの高さをコアコンピタンスにして、あらゆる面でインディっぽい音作りがプラスに作用していましたが、今作は逆にそのメソッドが巧く機能しておらず、全体的にやや不満の残る内容。それでも、ちょっとClap Your Hands Say Yeah路線過ぎる気はするものの、サスガのポップセンスを見せつける"Dimmer"、チープなアレンジとサビのメロディがジワジワ染みてくる"The Lion & The Teacup"、くすんだメロディとキュートなバックトラックの組み合わせが絶妙な"The Ancient Commonsence of Things"、簡素なメロディと構成にもかかわらず不思議と耳に残る"Don't Hide Away"など、前作の残り香を感じさせる曲も散見。確かに、メロディの即効性は多少弱くなっているものの、致命的なのは前作を傑作として成立させていたアマチュアリズムとプロフェッショナリズムの絶妙なバランス感覚が失われたことで、結果的に「よくあるギターポップ」の領域に収まってしまった印象。前作では良い面がより多く前面に現れ、今作はイマイチな面がより多く前面に現れたのが評価に直結しただけで、楽曲のデキ自体は大きく後退していないのが救い。まだまだ巻き返しは可能なはずなので、もう一度良いメロディを書ける力を見せつけて欲しいところ。(2009/08/29)

Wilco (The Album) / Wilco                                                           

★★★★

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約2年ぶりの7thアルバムは音響的アプローチを休止した前作路線を押し進めることで、ザラッとした初期の頃の手触りが戻って来た一方、"Yankee Hotel Foxtrot"という作品を経由した影響はやはり強く、ロック指向の強いサウンドの中にも洗練された部分が色濃く析出。スパイラルな原点回帰によって新しさと懐かしさを同居させた"Wilco (The Song)"で始まると、実験的な香りを残しつつ、繊細なメロディを充分に活かした"Deeper Down"、バックトラックの音密度を緻密に制御し、鮮やかに表情を変えていく"One Wing"と「らしさ」を感じさせる立ち上がり、。その後も、Wilcoらしさが滲み出た"Bull Black Nova"、控えめなキャッチーさを持つメロディとシンプルなアレンジの取り合わせが絶妙な"You And I"、物静かなフォークソング"Solitaire"、独特のフックを持ったロックナンバー"Sonny Feeling"など、派手さはなくても、曲とアレンジが常にハイレベルで結合。特に、前作と比べてメロディのキャッチーさが強くなっていることもあり、土埃が立ちこめるようなアレンジでもクラシカルになり過ぎず、時折見られる実験的なサウンドアプローチでもエンジニアリングの面ばかりが強調されないという強みもプラスに作用。ハッとするような斬新さこそ控えめになったものの、キャリアを貫き通して来た軸は以前にも増して明確になり、15年分の身と旨味がギッシリと詰まった作品。(2009/08/17)