その日は、伊豆に向かって車を走らせていた。
修善寺のリゾートホテルで3時から会議があるのだ。
道はすいているし、余裕で到着するはずだ。
11月にしては暖かく、日差しも柔らかで、
幌を下げたまま、快適なドライブで東名高速を西へ走り続けていた。
大井松田インターを過ぎ、東名が2ルートに分かれるところで、
迷うことなく右ルートを取った。
時速100キロをはるかに×××(都合により削除)
失礼。え〜と、法定速度をきっちりと順守しながら、
とろい車をしり目に、追い越し車線をずっと×××(都合により削除)。
そして、「もうすぐ都夫良野トンネルだな」というところで、それは起きた。
メーターがいきなり、一斉にゼロを指した。
スピードメーターも回転計も、水温計も、
全部の針がパタンと倒れて動かなくなった。
「何が起こったんだ」一瞬白くなった。
デジタル表示のトリップメーターの、液晶数字もバックライトも消えて真っ白だ。
エンジンが止まったか?このスピードでエンジンが停止してしまうと、
そのまま走り続けたら、タイヤの回転が逆にエンジンを回すトルクになり
シリンダーが焼き付いてしまうかも、と焦った。
あわててギヤをニュートラルに入れ、左に車線を変更して、
しばらく惰性で走って様子を見る。
オーディオのスイッチも切った。
(なにせ、オーディオをガンガンに鳴らしていたし、
そもそも、これくらいのスピードが出ていれば、
幌がオープン状態だと、背中の後ろにあるエンジンの音など、
風で後ろに流されて、全然聞こえないのだ)
スピードを落とすと、エンジン音が聞こえてきた。
ニュートラルのままでもアクセルを踏むとちゃんと排気音が応える。
(エグゾーストと回転計の針、頭の中では連動しているのに
実際の針が動かないのは妙に違和感がある。
いかに日ごろ、回転計を頼りに運転していたかが分かる)
とりあえず、ギヤを入れてクラッチをつないでも大丈夫だ。
と、ごちゃごちゃやっていたら、都夫良野トンネルに突入、ライトをつけてみた。
メーターの照明がつかず、メーターパネルは真っ暗。
コンソールの時計や空調の操作パネルの照明はつくんだが。
ヘッドライトは正常に点灯するし、ハイビームにすると警告灯はつく。
ウインカーのインジケーターもちゃんと点灯する。
試しに、ちょっとだけサイドブレーキを引いてみると(危ねーな)、
その警告灯も点灯する。どうやら、メインのメーターパネルの機能だけが
一部不全になっているだけらしい。これだけならばさして支障はないだろう。
沼津インターで一般道へ下り、三島方面へ向かう。
ちょっとコンビニに寄ろうとして、店の前の駐車場に入れようと、
低速でハンドルを切って進んでいたら、いきなりステアリングがガクンと重くなった。
なんだこりゃ。駐車スペースに合わせるために、据え切りして切り返す。
むちゃくちゃ重い。パワステが死んだみたい・・・
油圧じゃなくて、電動モーターアシストなんだよ、このパワステは。
とりあえず、コンビニで買ったミネラルウォーターを飲んで気を落ち着かせる。
まあ、でも、これくらいなら別にどうってことはない。
車本来の走る機能に支障はない。前に乗っていたミニには、
そもそもパワステなんかなかったし。それでも、
なんか、応急措置があるのかどうか、ちょっとローバーレスキューに電話してみよう。
と思ったが、間が悪いことに、この日はケータイを忘れてしまった。
公衆電話からかければいいや、ということで、
三島市内をぐるぐる走り回ってみたんだけど、
探してみると、意外に少ないんだな、これが。
みんなケータイを持つようになり、公衆電話の利用率が下がったので
どんどん撤去されて、台数が減っているという話は聞いていたが、
こんなに見つからないとは思わなかった。
市内をグルグル回っているうちに、ふと気づいた。
「ウインカーがついていない」。ウインカーレバーを倒してもインジケーターがつかない。
さっきまでついてたのに。なんで?
外に身を乗り出してみても、サイドマーカーは点滅していない。
またひとつ、死んでしまった。
運良く、公衆電話が見つかったので、
ハザードを出して車を路肩に止める。ああ、ハザードはつくんだ。
電装系が、ひとつ、またひとつと、櫛の歯が欠けるように死んでゆく。
まるで、沈んでゆく船に乗っているような気分になってきた。
タイタニックのあのテーマ曲がどこからか聞こえてくるような気がする。
車を止めて、動かせる電装系を全部作動させてみる。
空調関係は動く、これは大丈夫。
パワーウインドウは・・・だめだ。開けっ放しのまま動かない。
電動ミラーも動かない。まあこれはどうでもいい。
ここから、修善寺のホテルまで、あと20キロぐらい、とはいえ、
ウインカーなしで運転するのは結構危ない。
たぶん、フューエルメーターも死んでいるから、
針は今の位置を指しっぱなしで動かないだろう。
だったら残量が分からないぞ。
しかも1泊の予定だ。駐車場に、一晩中、窓を開けっ放しで置いとくわけにはいかないぞ。
そして何よりも、これから先、どの電装がいかれるか分かったもんじゃない。
電動ファンがいかれたら、こんな冷却に不利な車では即オーバーヒートかも。
フューエルポンプがいかれたら・・・動かんわな。
点火系が、いや、やめておこう。
一応、ヒューズボックスを開けてみると、
切れているのは一本もない。とするとバッテリーか、配線か?よく分からん。
(結局、ローバーレスキューに電話して、
積載車で近くのディーラーに入院することに。
まだ2時過ぎなので、電車で行けば3時の会議には充分間に合うはず、と踏んでいたのに、
運搬の業者がここの場所がなかなか分からず、2時間待たされるはめに。
結局、会議には出れず、打ち上げだけ参加。まるっきりダメ人間になってしまった)
という顛末で、三島から修善寺までの電車賃、
修善寺駅からホテルまでのタクシー代、
修理費、修理後の車の、東京までの陸送代はすべてクレーム処理でただ。
(あたりまえだ。まだ新車で買ってから半年だ)
1週間後、車が陸送されてきて、地元のディーラーまで届いた。
トラブルの原因はなんだったのか。
インパネの裏側に通っている、配線のハーネスの取り付けが悪くて、
強いテンションがかかっていたということだそうだ。
テンションがかかっていて、しかも金属のパーツのエッジに当たっていたので、
ハーネス中の配線が一つ切れると、強度が下がって、さらに次々と、ブチブチと、
切れていったために、電装系が次々と死んでいったということらしい。
欧州車はだいたいにおいて電装系はタコだけど、
(知り合いでアルファ146に乗っている人がいるけど、
やっぱり電気系でかなり泣かされてるんだよね、あ、ドイツ車は別か)
今回のは、電装系が弱いからうんぬん以前のレベルだろう?
ローバーのロングブリッジ工場のラインは一体どうなっているんだ?
ローバージャパンの検品体制は?
な〜んて言っても、ローバージャパンが消滅した今では意味がないね。
これぐらいのことはトラブルのうちに入らないことは、
ミニに12年も乗っていたからいやでも分かってるし。
だいたい、日本車って、どうしてあんなに壊れないのかね?
そのほうが不思議だ。単なる負け惜しみか。