音色       著者.山本有希子

遠すぎるのは空だけじゃなかった。
あたしの愛する人は届かない遙か遠く
もう恋をしないなんて言い放った。
----------あの日の空は紫色--------

どれくらいたったのでしょう
あなたが此の世から姿を消し、
「愛している」と言ってくれたコンクリートの部屋
もう今はソファーだけ
ただだらしなく置かれたままのあなたの服
散りばめられた星
あなたはあたしのために地下室にプラネタリウムを作った。
東京には存在すら薄くなってしまった星達を
2人のために集めたよだなんて
大げさすぎる冗談も
雑音すら何も聞こえない

日々爆音でJAZZを。
でもそれは無意味に・・
あたしの耳は聞こえない
あの日の事故以来キレイな音を失い
残ったのは確かな・・・あなたの名残
目を閉じれば涙が静かに流れるけど
その音も聞こえない
涙に音なんかないって言うけど
あたしには聞こえてたはずなの
無いはずの音も全部
そう。全部よ

明日耳が聞こえるようになっても
あたしは喜べない気がするわ
だって聞きたいはずの音がない

雨の日が嬉しいの
あなたがあたしに会いたくて
きっと泣いてるんだよねって
そう思えるから
傘をささずに笑ってあげるの
だってそうでしょ
あなたのためなら泣いてたって笑えるから

小春日和な午後
道ばたで子供が泣いてたの
なんでだろう
目の前が真っ白だった
あたしにみえてしょうがなかったのよ、きっと。
迷子なのはここにいる自分
あなたと入ったはずの迷路から
出口が見あたらなくて
そしたら一人置いてきぼりになってた
ユメだとおもっていたんだもん
小指繋いで笑い合ってたのよ

おかしいじゃない
あたしじゃなくてあなただなんて

あなたの誕生日には大好きだったプラネタリウムの部屋で
何時間も眠り続けるの
あなたは何度も言ってくれた
「がんばれよ」って言ってくれた
「俺も頑張るから」なんて
ため息がでてくるこの夜は
辛い辛いとうったえる

音色は今日もあの日のまま

カレンダーもめくってないけど
知りたくないの
現実を

・・・・・・・・・みんな忘れていくのよ
あなたと過ごした日々を
たまにふと会話にでてくるみたいだけど
すぐ笑い話をして変わっちゃうの
外面だけよくていやになるの
だから顔もみたくない
ね?声が聞こえなくてよかったのかもしれない
あたしに聞こえる音色はあなたとのオモイデばかりだから

遠すぎるのは雲だけじゃなかった
人の心
そのものだった
昼間なのに闇が揺れてた

にじんでたのは景色じゃなくて
涙が溢れてただけだったなんてね