[ the spitz 2002 物語 ] その11 『課題テスト後の20時』 管理人ありち 著
始業式の日を迎え、夏休みが終わった。アンコール曲を何にするか、重大な課題が課せられた。
課題テストなのにもかかわらず、僕はアンコール曲で相当悩んでいた。「STAY TUNED」(GLAY)が最適なのではとおもい、ベース君などに推薦してみた。「決定」と浮いたときもあった。事後、考えて見ると、非常に無責任だったと深く反省した。そう、難易度もふくめ、「STAY TUNED」は、アンコールには最適どころか適さないかもしれないとさえ思った。アンコールというのは、聴いてくださっている客に、「今まで聴いてくれてありがとう」の意で演奏するものだという重大なことを忘れていたのである。
課題テストを終え、僕らの休み開けは楽器から目が離せぬ日々だった。そんななか、アンコールのことでいろんな案がでた。やはり、選曲者はこの自慢のボーカル、草野(現;堂珍)くんである。彼は、「TSUNAMI」(サザンオールスターズ)を提案した。僕ははっきり言って、ピアノができるのかと不安で仕方なく、それだけにとらわれていた。結局、1日半というごくごく短い時間で急造のピアノパートを仕上げた。
課題テストの終わった日、楽器を体育館ステージまで試しに運び、配置してみて、試奏するということがあった。その試奏もなかなかうまくいかず、20時と言う、学校にいていいのかと問い詰められる時間帯、そして、当日、お客様になる同級生の友達はひとっこひとりいない時間、そしてほとんどの家で晩飯をたべているかたべ終わっているかという時間帯に、ドラムを叩くS君、ギターを弾くベース君、熱唱する草野君、ストリングスを黙々と弾くDAIKI君、ダミーキーボードを適当に弾くNi君、そしてピアノを当日の緊張を想像しながら弾く俺がいた。6人の[ the spitz 2002 ]メンバーである有志達は、腹が減っても、下校時間を1時間30分過ぎても、「担当の先生がいてくださっている間はやめん」の一心で、楽器をいじったり、マイクを握って声を出すこと以外、何事も頭になかったようだった。当然、その時、テストが終わった日の放課後だということは、既に右から左へと流されて行っていた。
その次の日は、体育館から、楽器を一度音楽室へ戻す為に朝7時に登校し、朝から楽器の移動という仕事をうけもった。もちろん、放課後は練習である。女子のバンドと交代で楽器を弾いたりして練習をしていた。ベース君が本物のベースとアンプを持ってきたその日から、キーボードでベースを代用して弾いていたべース君が本物の4弦のベースを弾いている姿を見ると「ここまできた」と士気が高まってきた。その日は体育館練習はなく、それでも19時に終わった。
遂に文化祭の前日。朝練の時から草野君がギャグをぶちまかした。その姿、一生見れないと思うと辛い。そこで「TSUNAMI」を弾けなんて、感情として無理があるとおもいつつ、弾いていた。授業を終え、練習へと向かった。女子と交代の練習だった。17時になり、楽器を体育館へ運ぶ少しまえ、とんでもない珍事が起こった。ベース君が、自持ちのベースで、「空も飛べるはず」のテンポを速めて、「なんとなく」弾いていた。それに僕も「なんとなく」あわせてピアノを弾いた。さらにそのときドラマーの椅子に座っていたNi君も「なんとなく」あわせはじめた。S君もそれにあわせて、Ni君の叩いてないクラッシュやライド(ドラムセットの両脇にある金の円盤のようなもの)を「なんとなく」叩きはじめた。DAIKI君と草野君も、それらにあわせて「なんとなく」歌い始めた。すると、だんだんみんながノリノリになり、士気が高まり、ミスを許さないような状態にまでなり、まるで本番の曲の練習をしているかのような錯覚を覚えた。演奏が終わって、草野君が一言「これいいね、やりたいね!!」・・・これこそが、あの謎の(笑)アンコール曲、[ 空も飛べるはず -remixversion- ]の起源である。
体育館に楽器を運び、完璧でなければならない完璧な演奏を担当の先生に聴いてもらった有志達、アンコール曲、[ 空も飛べるはず -remixversion- ]を披露してないということで、
前置きを挟み、聴いてもらった。案の定(?)、笑ってくれた(笑)。
その日の帰り道、「波乗りジョニー」のボーカルラインの簡単な打合せを理由に、草野君の家のちかくまで遠回りをして、既に暗く、星の輝く夜空の中を帰ったのを、今でも覚えている。文化祭の成功を祈り、自分の演奏するもののノンミスを心に誓ったあの夜、「神に誓った夜」という歌詞はあの夜のことだという論も、通じなくはないだろう。。。