こうして 触れているだけで
こうして 見つめているだけで
こんなにも 泣きそうになってしまうのは
[プラスティシティ]
「…」
「ん?」
「……やりづれぇんだけど…;;」
「どうして?」
剛くんは、今 あたしのためにゴハンを作ってくれてる。
慣れない手つきで包丁を握って、
トン、トンと不器用な音で人参を小さくしていく。
「つぅか危ねぇだろ」
この体勢は。
それはまさにあなたの言うとおり。
包丁を持ってる料理初心者に後ろから抱きついてるなんて、危険もいいとこ。
でも、ごめんね、離れられない。
触れ合った部分から溶け出して、あたしと剛くん ひとつになっちゃえばいいのに。
そんなことを思わずにはいられないような、メロウな雰囲気の中で
カタン、と剛くんは包丁を置いた。
「メシ、もうちょい後でいい?」
「ん、いいけど…なんで?」
「やっぱ腹減ってた方がうまいじゃん?」
淫靡な笑みをあたしに向けて、あたしをきつく抱きしめて 特別に深いキス。
口端から唾液が漏れて、息が苦しくて 目が回りそうで 意識が飛びそうで
でも、あたしの腰にきつく回された剛くんの腕が あたしを現実にひきとめる。
あたしの後頭部を固定する剛くんの手が、あたしを もっと って求めてる。
「っん、は、ぁっ…」
漸く解放された口が、喉が、呼吸を許された肺が、 酸素を求めて忙しなく働く。
その間にも、剛くんの唇はあたしの首筋をなぞって 下に、下に。
服さえ、邪魔だといわんばかりに手荒に脱がしていく。
もっと もっと もっと もっと
あたしも求めるから あたしを欲しがって。
小柄な体で、でも剛くんはあたしを軽く抱き上げて
小さなシングルのベッドに降ろした。
「…なに、もう濡れた?顔真っ赤じゃん」
「……ばか///」
悪戯っ子みたいに、ニィ、と笑う剛くん。
でも、そこに見え隠れするのは、こどもの可愛さなんかじゃなくて。
大人の男独特の 欲望的な眼差し。
世界が、歪む。
それは、気のせいでもなんでもなくて
あたしの瞳に涙が膜を張って、世界を歪ませて。
それでも、剛くんだけは歪まない。
あたしの世界で、確かな存在は あなただけなの。
「おい、力抜けよ」
「無理だって言ってるじゃんッ…///」
あたしの中から、指を───たぶん、中指と薬指───を抜いて、
替わりに舌を差し込んで、
あたしがその舌を締め付けると、
「痛ぇよ」って言いながらも
少し嬉しそうで
声がにやけてる。
脚を開かされて、突き立てられて、
あたしはもとより、剛くんも余裕無くなって。
頭が真っ白になっても、まだ揺さぶられる。
強すぎる快感は、苦痛でしかないけれど
剛くんから与えられる苦痛は、やっぱり快感だ、と、思う。
さっき剛くんは、「やっぱ腹減ってた方がうまいじゃん?」って笑ったけど
実際、剛くんと繋がったあとはなんだかお腹いっぱいで食べられなくなる。
以前、剛くんにそう告げたときは
「やっぱ、女って上と下の口、繋がってんだな」
なんて、笑ってた癖に。
剛くんは、あたしの言った言葉を、なかなか覚えててくれない。
きっと、あたしの言葉だけに限らず、あまり、ものを覚えておくのが得意ではないんだろうけど。
きっと、作りかけの料理のことだって もう覚えてはいない。
剛くんの出したものをお腹の中で受け止めながら、
赤ちゃんできたらどうするんだろう、とか 強すぎる快感のせいでのぼせた頭で考えた。
繋がった後の、独特の雰囲気は、あまり嫌いじゃない。
…匂いは、あまりすきじゃないけど。
剛くんは、上半身だけ起こして煙草を吹かしてる。
細い体に、でもしっかりとついた剛くんの腹筋を触るのが、最近のあたしのお気に入り。
「?」
「ん?」
「何考えてんだよ?ボーッとして」
「…あたしの王子様は、なかなか単純な構造の脳をお持ちだな、って」
「なんだ、単純な脳の餅って」
…。
聞き間違いはお得意のようですね?
「ううん、なんでもない」
剛くんの腕にまとわりつく。
繋がってる最中は、あたしよりもクールに見えたけど、
うっすら汗ばんでいる腕は、あたしに興奮していた証であり、
あたしは少しの安心と優越感を覚える。
「あたしが、単純なことを複雑に捉えすぎるのかもしれないし」
「あぁ、はそういうとこ、あるな」
「…あたしのこと、そんなに知らない癖に?」
「お前の躯のことなら、お前よりもよく知ってっけど?」
あ、また その淫靡な笑み。
「その顔、すき」
「オレはお前の全部がすき」
…本当にずるい。
いい神経してる。
「もっかいする?」
「腰痛くなるからやだ」
「介抱してやるからさ」
「ますます腰痛くするんでしょ?」
苦笑いを含んだ、少し軽めのアイロニー。
絡み合って、抱きついて
少し離れて 更に近づいて、繋がって
ねぇ、いつまでもこうしてて。
不安なんて、あなたの熱で溶かしてくれればいい。
涙も蒸発するぐらい
あなたの熱で 夢中にさせて。
もう、あなたに歪んだあたしの世界は
あなたなしじゃ どうにもならないから。
※プラスティシティ【plasticity】…可塑性。(固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質。)
*反省**
久しぶりの小説更新です。
なんかえっちぃ上にぐだぐだ…;;汗