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彼女はいつも赤い靴を履いていた
小さな頃 お父さんに赤い靴を買ってもらって以来
赤い靴が好きになったらしい
「パパはね」が口癖のパパが大好きな彼女
僕は彼女に恋をしていた
ある大雨の日 彼女の大好きだったパパは逝った
車のスリップ事故
彼女は車から引き出された血まみれのパパにキスをした
「噂は本当だったんだ」
周りの奴らが口々にそう言った
「アノ家の父娘はデキている」
・・・僕はただ可哀想な彼女を見つめることしか出来ずにいた
数日後
別の噂が耳に入ってきた
「赤い靴を履いた喪服の少女が売っている」
僕は確かめずにはいられなかった
・・・噂は本当だった
薄暗い喫茶店の角の席で彼女は”交渉”していた
何人かの男が失敗した後
彼女は次の男を見て眼を輝かせた
その男はどことなくパパに似ていた
甘えるように男の腕を組むと彼女は安堵の表情を浮かべた
哀しいけど少しだけ幸せそうな彼女
僕は静かにそこから立ち去った
それから一ヶ月
「彼女が街を出たらしい」という噂が流れた
赤い靴を履いて目の青い男と北行きの船に乗ったらしい
彼女は行ってしまった
恋とも呼べない恋の終わり
僕は泣いた・・・とても自然に泣いていた
さようなら 好きな人
赤い靴の良く似合う 僕の大好きな人
どうか・・・幸せに・・・
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