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カミーユ・クローデル
彫刻家
ロダンの愛人
クロ−デルを知ったのは美術の自習時間。騒いでいる生徒達の中、私は独り、美術本を読み耽っていた。
その中にあった彼女の紹介文。
まだ恋を知って間もなかった私には、「愛人」という言葉が不潔に感じて、クローデルの作品もろくに見なかった覚えがある。
十数年後、ふと通りに出ている看板に“カミーユ・クローデル展”の文字を見つけた。
ドキッ。
まるで神様に見透かされているような感じ。・・・ううん、違う筈。彼は・・・彼はロダンじゃない。ロダンのように私を裏切ったりしない。だから、・・・大丈夫。
少し躊躇ったけど扉に手を掛けた。数々の彫刻・・・。素晴らしいかどうかは正直なところ判らないけど、それらを創り上げるクローデルを想像するとゾッとした。彼女の底知れない愛が其処にあったから・・・。
一人で見ているのが辛くなり、展示会場を出た。
彼女に負けたんじゃない・・・。あまりに彼女が哀れで見ていられなくなっただけの話。
心のモヤモヤが取れない・・・。こんな時は彼の声が聞きたい。彼に会いたい。彼に触れたい。・・・欲求が押さえきれず、思わず携帯のボタンを押した。
「・・・ハイ」
「ごめんなさい、電話しちゃって。・・・これから、会えないかな?」
「・・・その件でしたら、後日改めてこちらから連絡いたしますので。」
「・・・あのっ、待ってっ」
「では、失礼致します」
「・・・あっ」
ツーツーツーツーツーツー・・・
後ろで子供の声がしていた。今日は日曜日。・・・判っていた筈なのにショックを受けている自分が嫌になった。馬鹿な女・・・。
ねぇ・・・、クローデル。
アナタはロダンに逢えて幸せだったのかしら?
一途に愛するアナタをロダンは何故裏切ったのかしら?
彼もロダンなのかしら?
いつか裏切って温かい場所へと還っていってしまうのかしら?
そうなったら私はどうなる?
アナタのように失った愛のショックに気が触れてしまうかしら?
ねぇ、クローデル。
この胸の底にある愛の狂器に、私はいつまで絶えられるのかしら・・・
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