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優しい人がいました
優しい人にはとても愛する人がいて
愛する人の傍らで優しい人はとても幸せそうでした
だけどその幸せは長くは続きませんでした
優しい人は愛する人に裏切られ捨てられてしまったのです
優しい人はその哀しみのあまり心を閉ざしてしまいました
何も見ず 何も聞かず 何も言わず
まるで抜け殻のような優しい人
私は優しい人が好きでした
だから心を閉ざした優しい人に言いました
「アナタの望むことなら何でもしてあげましょう」
すると優しい人は私に眼差しを向け私の言葉に答えました
「・・・何でもですか?」
「ええ、何でも」
「では お願いがあります。
まず私の目を潰して下さい。
二度とあの人の顔を見れないように。
私の耳の鼓膜を破って下さい。
二度とあの人の声が聞けないように。
私の喉を潰して下さい。
二度とあの人の名前をいえないように。
・・・あぁ、それだけでは駄目。
私の目は暗闇でもあの人を写してしまうでしょう。
私の耳は沈黙の中にあの人の声を響かすでしょう。
私の口は何度も何度も繰り返しあの人の名前を形どるでしょう。
たとえ目や耳や口を失ったとしても
鼻はあの人の匂いを皮膚はあの人の感触を・・・
私のすべてがあの人のすべてを覚えてる。
だから、お願い。
あの人を忘れることの無い私毎、殺してしまって下さい。
どうかお願い、親切な人・・・」
私は優しい人の願いを叶えた
・・・とてもとても愛していたから
・・・とてもとても・・・とてもとても
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