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そこはとても古い洋館だった
看板には消えそうな文字で
"Raspberry Circus"
木苺の意味なのか最低という意味なのか
どうやら見世物小屋には違いないらしい
いつもは通り過ぎているその小屋
何故か今日は足を踏み入れてしまった
中から匂ってきたラズベリーの香に
引き寄せられてしまったのだ
2つの重い扉を開くとそこは
部屋を赤く照らした薄暗く奇妙な劇場
私は立ち尽くした
「・・・いらっしゃいませ」
突然の声に驚いた
何時の間にか私の後ろに老人が立っていた
「さぁ、こちらへ・・・」
拒むタイミングを失った私は導かれるまま客席の真中へ
「営業しているのですか?」
「ええ、勿論」
「でも・・・誰も」
「ここは、お客様が入ってこられた日が営業日なのです」
「はぁ・・・」
なんだかよくわからなく頷くと そんな私に気付いたように老人は笑みを浮かべ
「さぁ、まもなく開演です」
それだけ言い残すと何時の間にか姿を消した
客席は暗くなり舞台は浮かび上がるように薄らと照らされ
何処かから声が流れた
「ようこそ 我、見世物小屋へ
ココは気狂いの木苺に魅せられたピエロたちの世界
きっとアナタも気に入ることでしょう
さぁ・・・お待たせしました
甘酸っぱくて少し毒の効いた気狂い木苺たちの世界を
ごゆっくりご堪能下さい・・・」
そして私はその木苺の見世物小屋から2度と出ることは無かった
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