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「知ってる?桜の木の下には人の死体が埋まってるんですって。
だからあんなに綺麗な花を咲かせられるのね。」
未だに耳に残る彼女の台詞。
幼い頃住んでいた家の隣に住んでいたお姉さん。
母曰く「可哀想な人」
お姉さんの家の庭には大きな桜の木が立っていて
縁側で私はお姉さんに抱きかかえられながら
その言葉を聞いて泣きそうになったのを覚えてる。
・・・とても怖かった。
それから数日後。
桜の花が散り終わったのと同時にお姉さんは逝った。
死の床で最期まで散り行く桜を見ていたという。
お葬式。
手伝いで忙しく動き回る母の邪魔をしないように
縁側で桜の木を眺めていた私の耳に入ってきた言葉。
「・・・こっちよ」
それから十数年。
未だに私は桜の木の下には立つことが出来ない。
リアルに耳に残る彼女の声。
妖しいほどに美しい満開の桜。
彼女と桜の強い匂い。
忘れることの無い記憶。
そして今 目の前に見えるもの。
・・・桜の木の下で地面から顔半分だけ出して私に手招きする。
「ほらこっち。・・・こっちにおいで。」
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