Travis の Fran による彼らの4枚目のアルバム "12 Memories" に収録された全12曲についてのインタビューです。Fran は終始穏やかな笑顔でそれぞれの曲への思い入れをたっぷりと語ってくれました。こんな豪華なインタビューを見せてくれた Viewsic の Our Favorite Liner Notes に感謝!

OUR FAVORITE LINER NOTES
TRAVIS 12 MEMORIES FRANCIS HEALY TRACK BY TRACK INTERVIEW
7-NOV-2003 ON AIR


Tr.1 Quicksand


このアルバムには 2つのタイプの曲がある
どんなアルバムでも 詞を理解するには どうやって生まれたか知る必要がある
ギターを持って 機材を準備して テープを回すことから始めるんだ
詞は頭の中から生まれるものじゃない こうしようとして出てくるものでもない
ギターを掻き鳴らし 音楽を聴きながら
それに合わせてとにかく声を出す 言葉というより口から出てくる音をね
そこから訴えかけてくる1行を見付けて 前後の展開を想像して言葉を繋げる
僕の場合 歌詞は音のトーンで決める その作業を見たら みんな笑うだろうね
誰にも見られてないけど
例えば「Quicksand」はこうやって作った
(最初のラインを歌うFran )
キーは A で「stay」という言葉がひっかかった
適当に歌い 録音したテープを聞き返して
壁越しの会話を聴くように耳を棲ませて何を言いたがっているのかを探るんだ
そして突然ある1行が明確になって それなら2つ前はこうだという具合にね
頭で考えるとうまくいかないんだ
芸術や創造性は 思考がゼロの状態から生まれる
というか突発的に発生するんだ
発生の瞬間を捉え翻訳するのが僕の仕事 曲作りはその大義名分なんだ
僕が「Quicksand」を書いた時は
母国がイラク攻撃に肩入れしていた頃で 世界中が欲望と自己満足に溺れていた
特に西側諸国で 顕著な現象だったけどね

考えていたんだ 何かが間違っていると
昔あった みんなの為という思考がない
現代は「自分こそ優れた人間だ」とばかり 主張する若者が多いように思う
一人ひとりの人間が大切なのは当たり前 でも共存し助けあう方がもっと重要さ
年寄りの面倒をみないどころか 敬意すら払わない
コーラス部分は まさに流砂をイメージしたものなんだ
世の中の嘆かわしい状況を考えるたびに 抱く印象は「度が過ぎている」ということ
流砂にはまったら 助けがない限り どんどん体が沈んで這い上がれなくなる
僕らそんな世界に生きているんだ


Tr.2 The Beautiful Occupation

去年の10月だったかな
ちょうど自宅でニュースを聞いていたんだ 首相がイラク攻撃の正統性を訴えていた
「サダム・フセインは悪者なのだ」と その通りだけど悪い奴らは他にもいる
確かにサダムは油田を掌握する悪の中枢 それに関しては何の異議もないけど
政府はあまりにも一方的な理由を言う
戦争するのには彼らなりの理由がある 「金」「権力」「世界での勢力主張」の為
国民は理解できないと見くびっているし 僕らも机上の戦争には興味がないけど
自分の部屋で実際に「戦争が始まる」と 実感した時 この曲を書こうと思った
起ることを ただ見ていてはダメだって
間違った事が起ろうとしているのに 何もできない自分に我慢ならなかった
誰よりも 僕自身に問いかけている曲だね
2番目の詩に こういうくだりがあった
えーと 何だっけ? 色んな曲が頭の中で渦巻いてて…
そうだ
「僕は世をすねた人間 ここに座って 無駄に時を過ごすだけ 人々が死んでも」
この歌詞も考え出したものじゃない 思わずどこかから飛び出してきた言葉だ
歌っている間に 自然と意味を持つ1行が生まれてきた
生まれて言葉を覚えると自然に嘘をつく 時には嘘を自覚していないことすらある
でも僕は歌ったり何も考えていない時 より真実に肉薄した言葉に近付けるんだ
受け入れるのが 辛すぎる真実だってある

僕らのホームページで「HOPE」用に作ったデモバージョンを発表した時
「我が国の兵士は世界のために戦うんだ」みたいな意見がたくさん寄せられた
「君の意見も一理あるけど戦争には反対」 という書き込みもあって
様々な考えの人がいると実感したよ
音楽にはたくさんのことができるんだ
言い換えるなら 音楽は液体のようなもの
愛を語る道具にも政治的メッセージにも 権力を持つ者に問いかけたり
単なるジョークだって言える
音楽は形を変え核心に迫る 素晴らしい手段なんだ
今は正直でいることすら難しいからね


Tr.3 Re-Offender

この曲は家庭内暴力を題材にした曲
虐待を繰り返す人は 「二度としないから」と言うだろ?
似たこと消費社会でも行われている まともに動かない商品を売り買いしてる
3ヵ月もたない製品に苦情を言ったら また別の新しいものを買わされたりして
人間って全く学習しないんだ
多分みんな 自分の外見を気にしたり 自分のことで精一杯なんだろう
だから ふと立ち止まって クズみたいな商品を買わされてるのか?
必要のないものを買わされているのか? と考えようとしない
必要なものでも すぐ壊れちゃ意味がないのに
この歌詞で訴えているのは つき合っていく中で何度も騙されたら
「やめろ!もう我慢できない」 と言ってやれってこと
でも多くの人はそれをしない という状況を歌った曲だよ


Tr.4 Peace The Fuck Out

このアルバムで一番最後に完成した曲 唯一歌詞作りに長時間を費やした曲だ
歌詞を入れられる箇所は少なかったけど 次のようなことを歌いたかった
君は嘘をついている 僕は信じない 不本意な所へ導こうとしてると訴える反面
いいんだ いいんだ 気にしないでやってしまえとも言ってる
相反する内容を2分半で訴える時は ユーモアと同時にシリアスさも必要だ
それがとても難しくて 歌詞の草稿は軽く50ページを越えてた
自宅には歌詞を書きためた 厚いノートがたくさんあるんだ
最初の1行は 「I don't care」だった
「I don't」が最初の3語 いや2語だった
いろいろ試して 「What you're talking about」とか
「I don't know...your tie is straight」 これも気に入った
政治家は いつもネクタイを気にしてるしね
「crooked(曲がった)」と「straight(真っすぐ)」の 言葉の対比も面白いと思った
「Peace The Fuck Out」という言葉は ある意味とても自己的な表現だ
聴き手に 僕は信じないよという 直接的なメッセージを投げかけている
なぜならクズだからね 真実ではないからね
誰が嘘をついて真実を言っているか わかるはずだから
僕は正直な人とそうじゃない人がわかる 意味のない嘘をつく人が何と多いことか
サビの「Peace The Fuck Out」は まさに根本的な叫びなんだ
BBS の常連が「Peace The Fuck Out」と 書き込んでいたのを見て
その言葉が気に入ってしまった
「まったく落ち着けよな」みたいな ニュアンスがね

君には使える声が 選べる選択肢がある 使える頭があるとてもシンプルな事さ
この歌を誰に向かって訴えるかと考えた
歌詞を書くときにいつも考えているけど この曲は特にね
重要な曲だからこそ的確な目的を手段を選ぶ必要があった
そこで思ったんだ 小さな子供でも理解できるようにしよう
彼らに理解できるのなら ほとんどの人にも理解可能だろうしね
他には 少しトリッキーな曲もあるけど
万人に理解してもらうには 5歳の子供に語りかける気持ちが必要さ


Tr.5 How Many Hearts

この曲は愛や人生を探究している歌 始まりはこう
「いくつもの心が傷つくたびに 恋人達の絆は壊れてしまう」
「それでも人は希望を抱きつづける 永遠の輝きを手に入れるために…」
とてもシンプルな歌だよ
人生でいったい 何人の女性と出逢うんだろう
12歳で初恋をして初めてキスを交わし 人を愛することを知り彼女は舞い上がる
14歳になる頃君は彼女と別れてしまい また新しい出逢いを求める
僕らはいつも誰かを探し求めているんだ 人生のパートナーをね
生涯一緒にいて 結婚し子供を育て そういうことをこの曲で歌っている
その人を見つけようとね
巡り合えば人生は大きく変わる
すべてがうまくいきそうな気がするし 将来の計画がうまくいくよう希望を抱く
それと同時に頭の中では 過ぎ去った人々のことを思い出すんだ
現在の自分に至るきっかけをくれた大切な人たちのことをね
とても個人的な曲なんだ

最後の方の一節で 自分が16や17歳だった頃を振り返り
「昔は自分しか見えていなかったから 永遠を誓う指輪なんてなかった」
「もう戻れない 誰かを責めることもない」
最後のこのフレーズ
これはまさに今の僕なんだ 30歳というのは新しい時代の始まり
これまでの僕は いつも同じ感覚だった
でも今は違う たぶん少し成長したんだと思う
いや 成長したんじゃなくて 人生の記憶の半分が満たされたんだ
30歳を越えたら7年ぐらいの思い出は 水に流さなくちゃいけない
人間のメモリじゃ多分28年くらいで 満タンになってしまうから
溢れるたびにゴミ箱に捨て 新しい情報を記憶していくんだろう
その時点に達した時 ”自分は正しい場所にいるだろうか”
”自分は正しい相手と一緒にいるだろうか””正しい人々といるだろうか”と人は考える
正しいものが少ないことに気付く
問いかけを続ける作業は いらないものを捨てるために必要なこと
僕は今 正しい場所にいることを願ってる
これはそういう曲なんだ


Tr.6 Paperclips

もう二度と会いたくない人が 誰にでもいると思う
自分の人生に 大きな影響を与えた人でも
大人としてある所で線を引き その人を切り離さなければならなくなる
僕にとってのそういう人間を歌ったんだ 誰かは言えないよ
ある人に見切りをつけ自分らしく生きる 君のようにはなりたくないと
もう顔も見たくないんだ もう君のようにはなりたくないんだとね
この曲はアルバムのトラックリストの 真ん中に位置している
つまりアルバムの要石となる 非常に重要な曲なんだ
僕が曲を作る意味について 歌ったものだからね
「ペーパークリップ 思い出 あわさって メロディー」
「ペーパークリップ メロディー 思い出を奏でる」
順番が前後してるかな
解放すること変化することを歌っている アルバム全体に共通するコンセプトだね
「No」と言い 立ち止まって自問すること それは誰もがしなければならないことさ
子供だってやってる
子供の「なぜ?」「どうして?」に 親達が混乱してしまうことがあるだろ
言葉を覚えて最初に出てくるのが 「どうして?」だけど
1日に100回は聞くよ
でも学校に行き始めると言わなくなる 先生があらゆる情報を与えてくれるから
でも僕らは問うことをやめちゃいけない 僕らの中の子供は問い続けているから
その言葉に耳を傾けて 問いかけ続けなくちゃならない
どうして これを信じる必要があるのか
どうして そこへ行く必要があるのか
どうして戦争をする必要があるのか 常に疑問を抱き続けるべきだよ
でも多くの人はそれをしない 当事者じゃないから分らないってね
このアルバムの原点はそこにある 「違う」「なぜ?」と疑問に思うこと
一歩下がってものを考えることなんだよ 疑問を呈するということがね
ただ音楽という形をとっているから ドラマティックな印象かもしれないけど

ボーカルを録音するときは
音楽を作るミステリー という感じだった
すごく神秘的で 誰かそれを見ていたら やっぱり笑ってしまうよ
機材に囲まれ ワイヤーが絡み付いてゴチャゴチャの部屋で歌ってるんだ
この曲は最初から最後までボーカルが 1テイクしか出てこないんだけど
あらかじめ書き下ろされたものじゃない その場でとっさに生まれた言葉なんだ
だから間奏の最初のところで(We get high...)
はじめだけ曖昧になっている 僕自身何を言っているかわからないんだ
それはきっと意識の流れなんだ
僕が録った6テイクのヴォーカル中 これはたぶんベストな出来だよ
バンドもうまく味付けをしてくれた アルバムでは鍵となる一曲になったんだ


Tr.7 Somewhere Else

この曲は僕のお気に入りの一つ
クラシック音楽に変奏曲という手法があるよね?
1つのパターンを少しずつ趣向を変えて シンプルに積み重ねて曲を構成するんだ
5つの音の要因は ドラムにベースにヴォーカル
ギターは アコースティックかエレクトリック
最初から最後まで流れてるのは3パート 2番からベースが役割を交代したりする
実際ベースはイントロが終わると休んで 他の楽器が役割を代替するんだ
この曲の歌詞もまた 今まで説明してきた事の流れを汲んでる
ホームだろうがアウェイだろうが どこにいたって
人生は大して変わらない 人間は皆同じものに囲まれて育ってる
それは痛みであったり 愛であったり 心から大切なものは形として存在しない
痛みと喜びの2つは 地球上のどこにいても必ず経験すること
歌詞にはこうある
「どこにいようと人生は不変 傷を舐め合い愛にしがみつく」
歌を効いて それを口ずさむ それでも世界は変わらない

「The Beautiful Occupation」もだけど こんな曲を書いても何も変えられない
人生というのはややこしいものさ
うまく行かないことがつづくと 何の為に生きているのか分らなくなる
2番の歌詞にこうある 「僕らはすべてを知りながら生まれてきた」
赤ん坊を見ていると まるで哲学者のように感じることがある
何かを訴える為に泣き叫んだりするけど いつもは黙ってただ世界を見回している
それを見て思った すべてを知ってるから喋る必要がないんだ
何も証明する必要はないんだって
でも喋ることが出来るようになった途端 失ってしまうんだ
僕らはすべてを知りながら生まれてきた だけど教わるまで知らないふりをする
言葉はすぐそこにあるんだけど あえて喋る必要はないさ
歌詞では切り立った崖をイメージしてた 断崖絶壁をね
生まれたての子供には死の概念がない だから崖の縁にいても平気で遊んでる
そこには真実が存在しているんだ まさに崖の縁にね
でも歳を取ると恐いという感覚が生まれ 後ずさりしてしまう
遠ざかることで真実を 遠ざけようとしているんだ
それでも残酷な真実は いずれ必ず訪れる
こんな崖があって子供がここで遊んでる その子供は真実を目の当たりにしてる
見ている側は「なんてこった」と思ってる 真実に困惑して遠ざかっているから
どんどん後ずさりするにつれ 「大丈夫自分は安全だ」と勘違いしてる
でも突然崖から遠ざかった君の体を自然が押し戻す感覚に襲われるんだ
その現象に「いやだ やめてくれ」と思う だけど押し戻された後は落ちるしかない
それが自然の成り行きさ
お年寄りの話を聞いていても思うけど 子供とお年寄りの感覚は素晴らしいよね
彼らには 紛れもない真実が見えてるから
僕らみたいな中間人は感じようとしても 自分を脅かすものに恐怖を抱いている
この曲でイメージしているのはその感覚
崖っぷちに近づく年齢になって慌てても 結局崖から落ちる つまり死を迎える
その後どこに行くのか 誰も知らない
そういうことを歌った曲だよ
今の世界を振り返って もしこの世界が変われたらと思う
変わらなくちゃいけないんだ
でも 僕が生きている間には無理だろう
世界が変わる時 僕は崖から落ちて どこか別の場所にいるかもしれない
でも世界は変われるという希望を 持つことはできる


Tr.8 Love Will Come Through

基本的にタイトル通りの曲だね
収録された中で 一番最初に完成した曲なんだ
歌詞では 「信用」について歌った
誰かに秘密を打ち明けるなら 相手が絶対口外しないと信じるべきさ
僕が今 信用できる人は数人しかいない 何か言えばすぐ他人に伝わる環境だから
秘密を打ち明けてはいけないのか? 持っちゃいけないのか?
そもそも秘密ってなんだ? と思うよ
僕にとって心を開くということは 歌うことと共通しているかも知れない
人生というのは愛や掲示 喜び 真実を 探す旅のようなものだから
それらは純粋であるあまり 見つけるのがとても難しいけど
いつも身近にあるんだ 近すぎて見えないだけさ
この曲ではそういうことを歌っている とても根本的な歌だ

すべての曲を 自分自身の為に書いてる
でも B・ディランや J・ミッチェルの曲にも 自分と重なる部分がたくさんあった
曲の背景を知って多くの事を共感出来た 曲というものはそういうものさ
音楽も芸術も作者の背景を知ることは 時として残酷な事だけど情報にもなる
でも曲はいつもそれを聞く人のもので 形として見えないものなんだよね


Tr.9 Mid-Life Krysis

昨年の10月12月頃 僕は精神的にかなり落ち込んでいたんだ
サビの部分を歌いながら
家中を歩き回った
一日中何日も歌いながら どんな言葉が来たがってるか考えてた
「想い出が君の港を満たす」というフレーズがあって
この港は 魂や意識を象徴していた
海は膨大な無意識の象徴で 人間は皆自分の港を持ち
そこには船が泊まっている つまり船は想い出なんだよ
さっきも話したけど時として 僕らは想い出を整理しなくちゃならない
そうやって 歌詞はできてきたんだけど
ここにどんな言葉がくるのか 見当がつかなかった
(と MID-LIFE KRYSIS〜の部分を口ずさむ)
そしてトイレに入って座ったとき 突然「中年の危機」という言葉が出てきた
これだと思った これに違いないと
まだ「中年の危機」という実感がないけど いつかは間違いなく経験することだ
あらゆるものを自問するという意味で いい経験になると思う
これはそういう曲
自分の内外で何が起っているんだって 渾沌とした気持ちを歌っているのさ


Tr.10 Happy To Hang Around

これは 誰かの心に入ろうと努力する歌
前の恋人との関係が ベースになっている
このアルバムは実際のところ 僕の記憶にある12の出来事がベースで
これは確か10年か 12年前の思い出さ
あまりに彼女との関係に 入り込み過ぎて
うまくいってはいたけれど 正しい組み合わせじゃなかった
僕がベルを鳴らしても彼女は気づかない ふたりは疲れ果て結局別れてしまった
人にはそれぞれドアがあって 他の誰かの扉を開く鍵を持って生まれる
それは目に見えない鍵なんだ
その鍵を持って生涯を通して人と出逢い 色んな関係を経て扉を開けようとする
「大丈夫なはずだ」と思って 鍵を差し込んでも結局扉は開かない
でもいつかその鍵でしか開かない扉を 持つ人と出逢った時
君こそが運命の人なんだと分かる

この曲でも メロとサビの関連性がない
そういうものもありだろう? 必ずしも一つにまとまってる必要はない
メロの部分では全く違うことを歌い サビで全く関係のない事を歌ってもいい
音楽が その2つを引き合わせてくれる
メロの部分では精神的に落ち込んで 悪夢につきまとわれてる様子を歌ってる
「Mid-Life Krysis」も似た感じだけど あの曲ではみんなを招き入れている
精神的に落ち込んでいる時って 近くに家族がいると余計悪くなったりね
「何落ち込んでんだ 大したことないよ」 なんて言われるとね
「やめてくれ そっとしといてくれよ」 と言いたくなる
でもバンドをやっていると たくさんの目に晒される運命にある
いつも誰かにつきまとわれているから 言葉には神経を使わなくちゃならない
うっかりしてると「なんてこと言うの」って ママが泣きながら電話してくる事になる
最初の歌詞はそれと関連してる
「奴等は僕をつけている 奴等はみんなにつきまとっている」
「太陽の下 手をつないでいるようなイメージを作りあげる」良い気分じゃない
有名人は人々の妄想を膨らませやすい という現実に気づいて欲しい
有名人とはいえ所詮は人間なんだから 他の人と同じことをしているんだ
変な例えで悪いけど どうせなら トイレにいる有名人を撮れってね
便器に 座っているところを撮れってね
僕らは みんな同じ人間なんだから
「そんなことしないで」って騒ぐ人達に 言いたいんだよね
「違うよ君たちが抱いているイメージは メディアが作り上げたものだ」って
有名人が VIP だ なんて間違ってるよ
確かに素晴らしい仕事をしている でも それはそれ
作品がどんなに素晴らしくても それを作った人はどうなんだろう
確かに素晴らしい芸術作品というものは 死ぬまで人をガッカリさせることはない
でも作者は違う なぜなら人間だから 人はいつも人を失望させる それが真実
そういうことを歌った 多分ね
多分というのは数年経てば自分の中で 何か変わってるかも知れないから
「この曲はそういうことだったんだ!」と ひらめくかもしれない
そしたらすぐ連絡するよ(笑)
いつだったか ベースのダギーが言ってたんだけど
1st アルバムの「Funny Thing」という曲が まるで僕のことを歌ってるようだって
他の人について書いたのに ダギーはこう言ったんだ
「君の書くすべての曲は君自身のことさ 自分の視点から生まれているんだ」って
そして全部の曲を聴き返してみた なるほどその通りだったよ


Tr.11 Walking Down The Hill

この曲は「Paperclips」と共通するものがある
意識の流れというか気のおもむくまま 言葉を吐き出すという点でね
僕は小さなドラムマシーンをもっていて それで色々と遊んでいるんだけど
使い方が分からなくて 適当に使ってる
ちょっとした キーボードにもなるしね
ある日僕は膝の上に猫を乗せて マイクをセットしテープを回して歌った
それを そのままアルバムに収録したんだ
よく聞くと猫の頭を撫でる音や 咽を鳴らす音も入っているんだ
「go to sleep」というくだりの最後には 眠りに落ちていく猫の寝息が入ってて
(Ah〜ah...♪と歌う)
右レンジから聴こえて来るはずさ 右のスピーカー 右のヘッドフォンだね
あれは僕の猫のアンビだよ すごく大きな猫で咽を鳴らす音もデカイ
「Walking Down The Hill」の丘は グラスゴーに実在するんだ
何か考え事をしたい時 独りになりたい時はいつもそこへ行く
'88年か'89年くらいから 通っているよ
すごく変わった場所で
昔スコットランドの女王が 首を斬られた丘なんだ
彼女は生前その丘に断って 自分の軍が敗れる一部始終を見てた
その後 彼女は逃亡先のフランスで 捕らえられ絞首刑に処された
あの丘は彼女が最後に立った場所なんだ 丘の上からグラスゴーが全て見渡せる



Tr.12 Some Sad Song

「善い行いをすれば天国へいける」と説く 僕はいつも疑問を感じてた
「自分が善いと思ってるなら それを信じてやればいいじゃないか」
どうして 誰かの評価を期待するんだ?
道ばたで物乞いをしている人を見かけたら カトリック教徒の場合はこう
「お金を恵んでやれば 天国へ行ける」
全く自分勝手な論理だと思わないか?
目的は彼を助けるためではなく 天国へ行くためだなんて
僕は小さい頃からミサに通うたび この考え方に違和感を感じてたんだ
彼らは「真実」を求めているようで
宗教という形をとっている時点で 矛盾に陥っている
僕にはどうしても納得いかなかった 宗教は大きな問題を抱えているよ
宗教は人間が作ったもの 人間が作ったものには必ず問題がある
僕らの力を超える大きな存在か何か それを知る術を人間は持っていない
人間に与えられたのは五感だけで 第六感は誰にも説明できないからね
この曲では 教会だけではなくて 学校の愚かさも訴えているんだけど
僕は17年ほどの学校生活で 2、30人ほどの教師に出会ってきた
その中で本当に素晴らしい教師は2人 1人は学校外の先生で学校教師は1人
1人だけが感動させ奮い立たせてくれた 学ぶことの素晴らしさを教えてくれた
国語の先生で亡くなってしまったけど すごい先生だったよ
大勢の教師と出逢った中 たった1人 他の奴等は仕事をしてただけ
教えたいから教える ただ教えるだけ 家賃を払う為に教える
それはそれでいいけど 何か間違ってるよ
物事の核心には必ず嘘が存在する 正しい理由があって行動する人は少ない
素晴らしい先生と出逢えたのは幸せな事 人間にはそういう出逢いが必要だ

面白いのは 最後のこの曲も1曲目も どちらも沈んでいく様を描いている事
死の瞬間までの間 身ぐるみを剥がされ続けているからこそ
訴えたいのは勝つことができないまでも 人生への考え方を少しだけ変えてみる事
とても簡単な事さ
まともな考えを持つ いつも疑問を抱く この2つだけ
人の言う事を丸呑みせず真実を確かめろ これがアルバムに共通するメッセージさ


日本のファンのみんなには 新しいアルバムを楽しんで欲しいんだ
この作品を作るにあたって膨大な時間と 愛と神経を注ぎ込んだから
それは音の隅々に感じられるはず
9ヵ月いや10ヵ月 下手すると1年は費やしたかな
バンドとしてのエネルギーを費やし 最高に創造的な時間を過ごした
芸術作品になったと 自信を持って言える
みんなに気に入ってもらえたら
一時期だけではなく一生をかけて 聴いてもらえたら嬉しいな