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| Mansun |
| Six (1998) |
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メロディー、歌詞、アレンジ、構成、どれもが素晴らしいアルバム。
それぞれの曲が集まってアルバム全体が1つの大きな流れになっています。
特に歌詞については老壮思想からの影響が強く、後ろ向きな考え方や、悪い出来事も全て受け入れて生きて行くのが自然だという考え方が全体に表れています。
これらの考え方について、Paul Draper (Vo./G) は、「正しいか誤っているかというのは別として、ひとつのアイデアとして投げかけている」と説明しています。
メンバーは「まるでプログレバンドみたいだから。」と言ってあまり気に入っていないアルバムジャケットも、細かい部分までのこだわりがあるので、私は好きです。図書館に座っている男性の脇に積んである数冊の本が、このアルバムに影響を与えたと思われるものです。
もともと Paul の書く詞には言葉遊びや、文献からの引用が多く、とても複雑で、興味深いのですが、このアルバムは特に各方面からの影響が見られるので、1曲ずつの豪華 Review にしてみました。
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Tr.1 SIX
どこまでが1曲なのか分からなくて、思わずステレオのカウンターを覗いた曲。
タイトルは Paul と Dominic Chad (G) が大ファンだという20年以上前のイギリスの TV ドラマ、 The Prisoner から来ています。
逃げ場のない社会についての描写をしているという曲だが、「僕の人生は妥協の連続」という歌詞ももの凄い。だが、「妥協という言葉はイギリスでは悪い意味ばかりを示すものではなく、前向きな意味で使われるんだよ。」と Paul は語っているのです。
「極端にこだわらずに、局面ごとに対処するって事なんだ。」 |
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Tr.2 NEGATIVE
こんなにきっぱりと力強く「自分は後ろ向きなんだ」って言い張る歌もめずらしい。ここまで言われると、反対に楽観的な歌なんじゃないか?って思えて来ます。Chad のギターの音もパワフルで、Andie Rathbone (Dr) のドラムも迫力あります。
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Tr.3 SHOTGUN
ライブで聴くともの凄い迫力の曲です。
ここでの SHOTGUN は防衛規制の比喩的表現。他人と距離を置いてしまう事、苦痛や不安から自己を守るための無意識的な反応を指していて、逃げ場のない社会の描写をしています。
歌詞の内容は、 Chad が友達からプレゼントされて愛読していた本、「タオのプーさん」 ("The Tao of Pooh" Benjamin Hoff) が元になっています。この本は、老壮思想(タオイズム)を「くまのプーさん」と関連付けて分かりやすく解説したもので、 Uncarved blocks (樸…あらき)や、Vinegar Taster (酢を味わう者)という言葉もこの本から引用されています。
文庫本では「クマのプーさんの「のんびり」タオ」という表題で講談社α文庫より出版されています。
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Tr.4 INVERSE MIDAS
Chad の作品。もともと彼には自虐的な部分があり、アルコールが入ると手がつけられない程だったようです。(現在は克服しています)
この歌詞の内容は当時の彼の生活を表しているのでしょうか。
Chad のアルコール問題についてのインタービューはこちらへ |
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Tr.5 ANTI EVERYTHING
すべてを受け入れる=すべてを拒否する。
人を同時に愛して憎むこと。 |
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Tr.6 FALL OUT
収拾の付かない状態になってしまった時にどうやって自分を解放するかについてを訊ねている。
スタンリー・キューブリックと月の部分は Paul が、1968年のアメリカ月着陸の映像は、実はキューブリックが特撮で作成した物であるという説を信じている為。 |
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Tr.7 SEROTONIN
Paul は子供の頃、偏頭痛に悩まされていたよう。その時の苛立ちについて書かれた曲。 |
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Tr.8 CANCER
バチカンとの距離についての曲。
Paul はカトリック文化の中に育ったことに嫌悪感を感じているとの事。
「虚偽や愚かさ、傲慢さは受け入れられない。カトリックは宗教をマイクロソフトのビジネスみたいにして、多くの人達を裏切った。バチカンはニューヨークやロンドン市場の大口投資家のように投資している。人を食い物にしている。バチカンは癌にかかっている、核となる部分が腐っているって事だ。」 |
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Tr.9 WITNESS TO A MURDER (PART TWO)
Chad が書いた詩を70年代に Dr. Who を演じた Tom Baker が朗読している。
Dr. Who とは、イギリスの BBC が製作した TV ドラマ。 |
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(PART TWO)
Tr.10 TELEVISION
ライブでは間違いなく注目の曲です。Paul も、「この曲のソロを考えた Chad は本当に凄い!」と発言。 |
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Tr.11 SPECIAL / BLOWN IT (DELETE AS APPROPRIATE)
メロディー構成がとても美しい曲。
Paul と Chad がツアー中に持ち歩いていた日記をもとに作られたというこのアルバムの中でも、この曲は特に、彼らの身の回りに起きていた事を書いているのでしょう。
「自分は特別な存在か?それとも全てを棒にふったのか?誤っている方を消去せよ。」
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Tr.12 LEGACY
死んでしまったら忘れられるだけ。
人生は僕を消耗させる。
僕は心底疲れ果てた。
人間関係は虚しくはかない。
もうどうだっていいんだ。 |
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Tr.13 BEING A GIRL
「女の子になりたい〜…」と延々と歌っている曲ですが、(ちなみに PV もちょっと凄い映像です!)要は、自分本来の性質を隠して何か他の物になろうと考える、ミドルクラスの哲学や理想の空しさについての曲です。
Paul も昔はマルクス主義を理想化していた事もあったが、資本主義の方が正直だということに気が付いたといいいます。「タバコの税金が僕の癌を治療する」など、なかなか深い表現が出て来ます。
曲の最後の子供の声は Chad の甥です。
AAミルン(クマのプーさんの作者)の "When We Were Very Young" の "Buckinghum Palace" という詩を朗読しています。 |