愛と勇気とチェリーパイ おまけのおまけ

 

 「もういいよ。亮くんのバカ!!」

 「バカはそっちやろ!!」

 ―――それを聞いたサヤカと響子は大きく溜息をついた。

 どうやら、ひなたと亮がケンカをしたらしい。

 

 「ちょっと、ひなたぁ。なんでケンカなんかしたの?」

 「ムカつくから話したくない」

 プイッと顔を背けるひなた。

 サヤカさん再び溜息。

 「―――…どうでもいいけどさぁ」

 「なに?響子」

 不機嫌そうな響子にサヤカ笑顔で対応する。

 「場所、変えない?」

 ひゅごぉぉぉ…

 11月のクソ寒い風が吹く中、

 3人は屋上の真中で正座して話をしていた。

 

 「で?何が原因なんだよ」

 午前中で仕事を終えた翔は、亮を連れて「eternal」に来ていた。

今日は仕事場が同じだったらしい。

 にしても、亮くんって関ジャニのくせによくこっち来てるよね?

(ていうか、ここは何地方?…まいいや。名古屋、名古屋)

 最初は午後からでも授業にでるつもりだったのだけど、

亮とひなたがケンカしたと聞いて、亮の言い分をきいてやろうと思ったのだ。

 もちろん、なにか変化があった時のためにサヤカに

「亮、今啓一さんのところにいるから。ひなさんにそれとなく伝えといて?」と

メール済み。

 そんなことなど何も知らない亮は、

マスターの運んできたコーヒーにばかばかと砂糖を入れる。

 「亮…なんか言えよ」

 翔に言われて、亮の手が止まった。

 それにしても亮くん、砂糖入れすぎ(約37・4杯入れた)。

 亮は翔の方をちらりと見ると、

ソーサーの上のスプーンでぐりぐりとコーヒーをかき混ぜ始めた。

(砂糖の入れすぎにより、底でジャリジャリ音が…)

 「―――…亮?」

 「聞かんといて。

自分でも『なんであんなことで怒ってしまったのやろ』って思っとんねん」

 

 「……あたしもね、悪かったって思ってるのよ。でも」

 

 「オレ、短気やん?だからついカッとなってしまって…」

 

 「なにか言われたら言い返しちゃうし…」

 

 「でも、あとからめっちゃ自己嫌悪に陥んねん」

 

 「『なんであんなこと言っちゃったんだろう』って」

 

 「こんな些細なことでギクシャクすんのは嫌やわ」

 

 「隣にいたいって気持ちは、変わらないもん。だって、」

 

 「オレ、ひな好きやから」

 

 「大好きなの、亮くんが」

 

 

 ―――その瞬間っていうのは、ほぼ同時だった。

 サヤカに、

「亮くん今『eternal』にいるって。ちゃんと伝えておいでよ」と言われたひなたが

学校を飛び出すのと、

「ひなさん学校にいるから行ってこいよ」と翔に背中を押された亮が走り出すのは。

 2人がお互いを目指して走る。

 その道の途中で出会うと、

途端、亮はひなたを抱きしめ、ひなたも亮の胸にしがみついた。

 「ごめんな、ひな」

 「あたしこそ、ごめんね」

 はい。仲直り。

 

 「まったく、ひなたと亮くんって人騒がせだよねー」

 教室に戻りながら呟くサヤカに、響子はウンザリした顔をする。

 「校内一の人騒がせバカップルのあんたが言えた言葉?」

 「えー!!なにそれ!!」

 …そういえば。3年になってからは減ったけど、

こいつら2年のころはよく「もぅ別れる!!」とかほざいてたような。

(「5月のころ」参照)

 

 「おつかれ、桜井くん」

マスターが翔にコーヒーのおかわりを持ってきたついでに言う。

 従弟とひなたのケンカは、マスターも知っていて、随分心配していたのだ。

 「オレもよく、サヤカとあんな感じになったことがあるからさ」

 「……やっぱ、若いってえぇなぁ」

 しみじみと呟くマスター、都 啓一。すっかり関西弁に戻っている。

 「あっ、コレ亮の?」

 空になった翔のコーヒーカップをさげようとしたマスターの目に、

まだ並々とコーヒーの入っているカップが目に入る。

 「あ、そうです。結局一口も飲まなかったけど」

 「ふーん…じゃあ、オレが飲んじゃおっと」

 マスター、自分でいれたコーヒーを自分で飲む。

 ゴクンッ

 ………

 ブゥゥー!!

 コーヒーが霧となって翔にかかった。

 「うわっ!?啓一さん、きたねぇ!!」

 「あいつ何杯砂糖入れたねん!?ごっつ甘いわ!!」

 ―――…A、約37・4杯(「約」のクセに細かい…)

 

 ところで。

 なんで2人はケンカをしたのか?

 事の始まりは2日前。亮の実家で起きた。

 休日なうえ、亮の両親が出かけていたので、

ひなたが遊びに行ったついでに、晩ご飯を作ったのだが。

 「亮くん、ご飯できたよー。ってもカレーだけど」

 「おぅ。オレ、カレーにはうるさいでぇ?」

 「大丈夫。松岡さんに教えてもらった牛すじカレーだから」

 ひなた…充くんと仲良くなったんだ…

 「はいどーぞ」と、ひなたは亮の前にカレーを置いた。

 「……なんやねん、コレ」

 「えっ?」

 「なんで『カレーの王子さま』使ってないねん」

 ―――…この後、カレーについて語りだした亮にひなたが反抗。

ケンカにいたるまでに1分もかからなかった。

 ……しょうもねぇ。

 

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