Q、あなたは小泉響子のことをどう思いますか?

 

 証言1、クラスメイトA

 えっ?小泉さん?

 あたしはそんなに仲がいいわけじゃないけど、いい人よ?

 前にあたし、体育の時間に倒れたことがあってね、

その時あたしを保健室まで連れてってくれたのも小泉さんと松島さんだったし…

 頭もいいのよ、あの人。英語が得意みたい。

 えっ?恋人?さぁ……あたし、本当にただのクラスメイトだから。

 

 証言2、バレー部後輩(1年)

 今泉センパイ、すごくカッコイイですよ?

 容姿端麗、眉目秀麗ってやつ?もう、すごい憧れ!!

 とくに、スパイク打つ時!!もうジャンプから桁外れで……

 (この後30分ほど自慢話が続いたため、調査員、コッソリ逃げ帰る)

 

 証言3、友人1

 響子?いい子よ?ちょっと謎なところがあるけど。

 クールなのよね。で、クールにツッコミするからちょい怖い。

 面倒見いいしね。

あ、サヤカの幼なじみなんだっけ?仲いいし、あの2人。

なんか、サヤカの面倒を響子が見てるって感じするけどね(笑)

でも…なんであたしに響子のこと聞くの?

サヤカのほうが知ってるよ?

(調査員、図星をさされて慌てて逃げ帰る。カセットはここまで)

 

 

閑話休題

 

「響子のこと?」

放課に、トイレに行っていたひなたは戻ってくるなりサヤカをつかまえ、

さっき起きたことを話した。

トイレから出てきたところで、女生徒2人につかまえられ、

いきなり響子のことを聞かれたのだ。

上靴や校章の色でそれが2年生だということは分かった。

あと…

「あたし、あの子達見覚えあるの。たしか、新聞部よ?」

「でも、新聞部がなんで?」

「さぁ?でも、あたし、響子のことならサヤカのが知ってるって話したから

そのうちサヤカの所にも来るかも」

「ん――…分った。響子にも一応言っておくね」

なんで新聞部が響子のことを聞きまわっているのか。

 

バタバタバタバタ…

ガラッ!!

「先輩!!情報入手してきました!!」

2年新聞部部員は部室に戻ってくるなりそう声をあげた。

部室で待っていた部長、牧野好江は座っていた椅子から勢いよく立ち上がった。

「でかしたわ!2人とも!!」

戻ってきた2人の後輩からテープレコーダーを受け取ると、早速再生する。

「これで・・・これで小泉響子の弱点が分かるはず!!」

「そうしたら、松島サヤカをおさえられますね、部長!!」

―――彼女たちの目的は、サヤカだった。

彼女たち、桜井翔の私設ファンクラブメンバーなのだ。

といっても、この3人だけだが。

そう。彼女たちはサヤカのことを嫌っている。

自分たちの大好きな桜井翔の彼女であるサヤカが気に入らないのだ。

どうにか彼女を出し抜いて、翔に近づけないものか。

そのためには大きな障害を倒さなければいけない。

小泉響子。

サヤカの親友であり幼馴染出る彼女だ。

なぜ響子が障害なのか。

一見、響子がサヤカの面倒をしかたないからみているように見えるが、実は違うのだ。

クールでミステリアスな小泉響子。

だけど、本当は誰より友達思いで、親友、サヤカの恋をジャマするようなヤツを

遠ざけているのだ。

隠し撮りしようとしても、タイミングがいいのか悪いのか、シャッターを押す直前に

声をかけられてとめられ、サヤカの上靴に画鋲を入れたこともあったが(古典的すぎ・・・)、サヤカよりも先に見つけて画鋲を捨ててしまった。

そう。サヤカを出し抜くためには、まず響子を倒さなければいけない。

けれど、さっきも言ったように

「クールでミステリアスな小泉響子」の弱点はなかなか出てこない。

それで、2年の2人が情報収集に出ていたのだ。

再生されたカセットを聞きながら、好江は息をついた。

「確かに情報は得られたけど、」

一番欲しかった「弱点」がない。

なにか、弱点はないのか?

スキャンダルになるような・・・そう。例えば、恋人。

「恋人とか・・・わからなかったの?」

「はい。さりげなく聞いてみたんですけど・・・」

だれも、響子の恋人のことなんて知らなかった。

いや、いるのかどうかも分からない。

だけど、いてもおかしくないのだ。確かに彼女は美人だし。

「・・・彼氏がいるかどうかは、調べたほうがいいわね」

「でも、好江先輩。どうやって?」

そう。響子のことは周りの人に聞き込みしているのだ。

男女問わず、教師にも。

だけど、不思議と響子の恋人のことはだれ1人口にしなかった。

逆に、こちらから聞いても、「え?さぁ・・・どうだろう?」と、

聞かれたほうが首を傾げてしまう。

どうしようと考え込みながら何度もテープを再生していた時。

『サヤカのほうが知ってるよ?』

響子の友人、ひなたの言葉が耳に入った。

「・・・あんまりいい方法とは思わないけど、」

サヤカに聞くのが一番早いかもしれない。

 

 

「小泉!松島!!」

昼休み。2人で職員室の前を通って移動教室先の生物室から教室に戻ろうとする2人に

後ろから英語教師が声をかけてきた。

「周先生!」

サヤカが元気―?と手を振ると、

教師は「お前、いいかげんその呼び方はやめろ」と首を項垂れた。

「それより、先生どうしたの?」

響子が無表情に聞くと、教師は「あぁ、そうそう」と思い出したように

両手をポンと打つ。

「5限で使う資料を運ぶの手伝って欲しいんだ。どうせお前らヒマだろ?」

「あたしヒマじゃないもん!」

「今日、桜井休みじゃねぇか」

「今日はひなたとお弁当食べるの!!」

ふくれるサヤカに「悪い悪い」と苦笑しながら謝ると、今度は響子のほうを見て。

「お前は?」

「別にいいけど」

あいかわらず無表情の響子。

とりあえず、教師は響子を連れて資料を取りに行ってしまった。

それにしても・・・

(響子、機嫌悪かったなぁ・・・ま、しょうがないか)

「松島センパイ!」

急に背後から声をかけられて、サヤカは慌てて振り返った。

「え?・・・えっと・・・」

いきなり見知らぬ後輩に声をかけられ、サヤカは首を傾げる。

「あの、インタビューに答えてもらえますか?」

「インタビュー?あっ、新聞部?ひなたが言ってた。

新聞部の子が響子のこと調べてるって」

サヤカの言葉に2人はぎくぅと肩をすくめた。

自分たちのことがバレてる!!

「え、あの、その・・・ムガッ!!」

「はい!今度の校内新聞は小泉センパイにスポットを当てようと思いまして!!」

うろたえた自分の友人の口をふさぎ、2年その1はヘラヘラと笑いながら答える。

(その1って・・・名前考えてやれよ)

「へー・・・そうだったんだ。でも、なんで響子?」

「あっ、あの・・・うっ!」

2年その2の鳩尾にその1の鋭い肘鉄が!!(・・・ギャグ化してきた)

「ほ、ほら!小泉センパイ、クールでカッコイイじゃないですか!?

だからあたしたち憧れてて!」

「うん。わかったけど、その隣の子・・・大丈夫?」

全然大丈夫じゃない。

とりあえず、2人はサヤカに響子のことを聞き始めた。

「松島センパイと小泉センパイって、幼馴染なんですよね?」

「うん。家が隣なの。だから、そのころからの付き合い。

幼馴染って言っても、あたしが響子に面倒みてもらってるってカンジだけどね」

たははと、サヤカは笑う。

好きな食べ物はなにかとか、そんなとりとめもない質問をして、2人はさりげなく、

自分たちの聞きたいことに質問を近づけていった。

「そういえば、小泉センパイってすごい美人ですけど、彼氏とかはいないんですか?」

「え・・・?」

突然の質問に、サヤカは驚く。

おっ?これは・・・

いい情報が手に入るかもしれない。

「・・・さぁ。あたしも知らない」

サヤカは少し間を空けたにもかかわらず、キッパリ答えると

「じゃあ、あたしお昼まだなの。友達が待ってるから」と言って

教室に向かって走っていってしまった。

情報収集・・・失敗。

2人はガックリと肩をおとした。

「せっかくもう少しだったのに・・・」

「2人とも!!」

廊下の曲がり角に隠れて様子を伺っていた好江が駆け寄ってくる。

「なんか新しい情報あった?」

「いえ・・・本当にもう少しだったんですけど・・・」

「そう・・・あぁもう!いつになったら小泉響子の弱点が分かるのかしら!?」

「ふーん、そういうこと」

いきなり3人の背後からした声に、3人はギクリと固まる。

この声は・・・

「最近あたしのことを新聞部が調べてるって、サヤカもひなたも言ってて、

おかしいなとは思ってたのよ」

3人が振り返ると、手にラジカセと大量のプリントを抱えた響子が立っていた。

「えっと、小泉さん、コレにはワケが・・・」

「その『ワケ』、あててみせようか?

あんたたち、私設の桜井君のファンクラブ会員よね?」

それを指摘され、再びギクッとする。

「大半の子が、サヤカと桜井くんのこと認めてくれてるけど、

たまに認められない子もいるのよね。

そうするとどうしてもあの子をジャマに思うようになる」

だから、サヤカを出し抜こう。そう、考えた。だけど、

「それにはあたしがジャマなんだ。

確かに、鈍いあの子の代わりに今までいろいろ気付いて処理してきたけどね」

たとえば、上靴の中の画鋲とか、ロッカーのゴミとか。

「・・・っ、そ、そうよ!?あたし達にはあの子がジャマよ!なにが翔の彼女よ!?

何が『鉄則』よ!!自分に都合のいいことばっか他の生徒に強要して!!

翔だって、あの子が傍にいたら迷惑よ!!」

「あんたこそ、自分に都合のいいことしか考えてないじゃない。

そんなんだから、桜井くんに振り向いてもらえないのよ」

「振り向く気もねぇけどな」

ふと、響子の頭上から降ってきた声に、4人はバッと顔を上げ、そちらを見た。

そこにいたのは・・・

「・・・今日は、休みじゃなかったの?」

「んー・・・仕事早く終わったから」

そう答えてニッと笑うのは、誰でもない。桜井翔。

「しょ、翔!?」

突然のことに困惑する好江たちに、翔は冷たい目を向ける。

「あのさぁ。オレ今まであんたたちのことなんてなに一つ知らなかったから、

こんなこと言う権利はないのかもしんないけど、でも、

オレは絶対あんた達のことは好きにならないと思う」

「な、なんで・・・?」

「あいつ、バカにしたから」

サラリと言う。

「オレが愛しいと感じるのはアイツだけなんだよ。そのアイツをバカにして、

その上傷つけようとまでしたから。絶対振り向いてなんてやらない」

冷たく言い放たれる翔の言葉。その中に含まれているのは、本気の、怒り。

「で、でも!!あの子は翔のことなんて考えずに、自分に都合のいいことだけ・・・」

「サヤカのことバカにするなっつっただろ?

アイツだけだよ。オレのことを1番に考えてくれてんのは・・・」

 

「・・・熱い愛の告白聞いちゃったわね」

一緒に教室に向かいながら、響子は満足そうに息をつきながら言う。

「んー・・・ま、響子さんならいいや。そう言えばさ、

オレも前から気になってたんだけど、響子さんって、彼氏いるの?」

その質問に、響子は意味ありげに笑うと「さぁ?」とだけ答えた。

 

 

で、放課後。

「え?響子の彼氏?」

「うん。考え出したら気になってしょうがなくなった」

いつものように生物室で勉強しながら、聞かれた質問に、サヤカはクスクスと笑った。

「なんだよ?」

「ふふっ。あのね、響子の得意科目って知ってる?」

「あぁ・・・英語だっけ?なんで得意なのかは知らないけど」

「周くん・・・と、ごめん。周先生」

「周先生?」

突然言われた名前に、翔は首をかしげた。

周・・・あぁ、

「英語の三島・・・」

「そ。三島周助」

「そういえば、サヤカって、先生のこと『周先生』って言うよな。なんで?」

「だって、昔から『周くん、周くん』って呼んでたからぬけないのよ」

「は?昔?」

ますますわけがわからない。

そんな顔をしている翔に、サヤカは笑いをこらえながら話し出した。

「周くんの家はね、響子の家の隣なのよ」

「・・・え?」

「だからね、あたし達昔からよく周くんと一緒に遊んでたのよ」

「じゃあ・・・響子さんが英語得意なのって・・・」

「そ。専属家庭教師がついてるから。しかもれっきとした英語教師がね」

・・・・・・なんだか、だいたい予想がついてきた。

これは、もしかして・・・

「じゃあさ、響子さんの彼氏って・・・」

「そ。周くん」

・・・・・・まさか、響子が年下や同い年の男の子と付き合っているとは

思わなかったけど(年上だとは思ってた。響子の雰囲気が大人っぽいから)

・・・自分の学校の先生だったとは。

「しかも、告白したのは響子のほうよ」

「・・・うそっ!?」

絶対、周助のほうから告白したと思ってたのに(だって、響子はクールだから)。

「響子は周くんにベタ惚れでね、周くんも、響子にベタ惚れだったのよ」

意外すぎる事実に、翔の頭は混乱するばかりだった。

 

 

一方、ここはコンピューター室。

周助が入り浸っている教室だ。

(だって、ここに英語の授業で使う資料とか全部おいてあるし)

こんなところを愛用しているのは周助ぐらいで、

生徒である自分の恋人とこっそり会うには最適だった。

「・・・・・・で?響子は昼放課からなに怒ってるの?」

椅子に座った自分のまえに立ち、ムスッとしている恋人に話しかける。

「・・・べつに」

「べつにって顔してないだろ?」

「・・・・・・」

黙ったままの響子に、周助は痺れを切らしたように頭をかくと、

響子の腕を引いて、自分の膝の上に座らせた。

すると、響子は顔を赤くしてうつむいてしまう。

「ホラ。どうしたんだ?」

「・・・・・・周が、サヤカばっかかまってたから」

ポツリと告げられた言葉に、周助は目を丸くする。

えーっと・・・これは・・・

「・・・妬いてるの?」

「そーよ」

響子はふいっと顔を背けると、少し口を尖らせた。

「あたしは嫉妬深いんだから」

そう言って、周助の頬にキスをする。

周助は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑って、響子の頬にキスを返す。

「ごめん。オレが無神経だった。でも、オレは響子が1番大切だから」

「・・・・・・じゃぁ、許す」

―――あーあ・・・ここにもバカップルが・・・

 

 

 

―――あとがき―――

 「閑話休題」。意味は本当は「それはさておき」とか「さて」とかで、

文章でわき道にそれたときに話を元に戻すために使うんだけど、

今回は、響子さん主役ということで、「ちょいと一息」という意味を込めてつけました。 

しかし、響子さん最強だね。彼氏は先生だし・・・やっぱ好きだわ、この子。うん。

周助もお気に入り。

 そういえば、またサヤカがいじめられてるよ。今回は未遂だけど。

で、しっかり翔君はサヤカへのメロメロっぷりを発揮していった・・・

 コレ、本当に主役響子?

 そうだ。今回初めてサヤカ、響子の名字が出てきましたね。

 サヤカはともかく、響子の「小泉」って・・・

 「小泉今日子」じゃん?あとから気付いたけど・・・

 今だに出てきていないひなたの名字は「山下」といいます。

 一応覚えておいてくださいな。

なんで「山下」なのか?

 ・・・なんとなくです。

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