・・・あたしの彼氏はジャニさんアイドルの桜井翔くんです。
もぅ、中学の頃からずっとファンで、
高校に入学した時、翔くんがいたのでびっくりしたと同時に飛び上がって喜びました。
1年の時、あたしは翔くんと同じクラスで、
その時あたしは翔君のテレビや雑誌とは違った顔を見たんです。
クラスの男の子たちと遊んだり、体育の授業の時に必死になってみんなと競い合ってたり、授業中に真剣に話を聞いていたかと思ったらすぐに寝てたり(その顔がまた可愛くて!!)。
あたしはあっという間に翔くんにメロメロになってしまいました。
(それ以前もメロメロだったけど)
秋に、文化祭の時、響子に勇気づけられて告白したら、
なんとOKがもらえて、あたし達は付き合い始めました。
(響子や他の友達に言わせると「バカップル」なんだけど…なんでだろう?)
そんなわけで、あたしは今すっっごく幸せです。
でも、なにかとよく眠れない日が続いていて…

INSOMNIA
春。
また春が来た。
翔と出会ってから2回目の春。
春が来る度に、当たり前だけど進級して、サヤカも翔も3年生になった。
まぁ、アレだ。「受験生」というヤツ。ソレになってしまったのだ。
けれど、2人とも進学は決まっている。慶応大学。
最初に慶応に行きたいといったのは翔だった。
それから「じゃあ、あたしも」と、サヤカも決めた。
実はサヤカも慶応に行きたいと思っていたのでちょうどよかったのだが。
だがサヤカも翔も、学力的に少し余裕があるのでソレはいい。
(ていうか、サヤカのがちょっと頭いいけど)
そう。サヤカが今悩んでいるのはそんなことではない。
サヤカがこまっているのは…「新入生」。
当たり前だが、3月に3年生がでていけば4月には新たな1年生が入ってくる。
サヤカにはその「1年生」が問題なのだ。正確に言うと「1年の女の子達」だが。
2年生、3年生は無闇に翔にちょっかいをかけたりしない。
それは翔が入学した当時からの暗黙の了解だった。
サヤカ達の1コ上と2コ上の先輩に、ジャニさんJrファンの先輩がいた。
サヤカはコンサートなどを通してその先輩達とは入学前から知り合いだったのだが。
その先輩たちは翔が入学してくると同時に学校内に3つの鉄則を広めた。
鉄則その1 桜井翔にむやみにサインなどを求めてはいけない。
(1人1年に1枚まで。知り合いから頼まれても極力断ること)
鉄則その2 桜井翔に必要以上に付きまとわない。
(仕事つかれてんだからギャアギャア騒ぐんじゃねぇよ)
鉄則その3 桜井翔のプライベートをマスコミにもらさない。
(フォーカスなんてもってのほか!!)
生徒達も先生たちも、その3つの鉄則を理解し、それを守ってきた。
そして、サヤカが1年生のときの秋、もう1つの鉄則が付け加えられた。
鉄則その4 桜井翔の恋人に手を出すな。
言い換えれば、
その鉄則は先輩たちが用意してくれたサヤカと翔を守るためのものでもあったのだ。
今の2年と3年はその鉄則を知っている。だが、新しく入ってくる1年生は?
サヤカが恐れているのはそれだった。
鉄則を知らない1年生が翔にちょっかいをかけてきそうで怖いのだ。
翔は仕事をしながら学校に通い、そのうえ今年は受験生だ。
受験勉強もしなくてはいけない。
おそらく、去年の倍は忙しくなるだろう。デートなんてしていられないかもしれない。
そこに1年生がサインをくれとか写真を撮らせてくれとか言ってきたら?
そんな生活が長く続いたら疲れがたまって体を壊してしまうかもしれない。
だったらその鉄則を広めればいいと思うかもしれないが、
年々コギャル化の進む1年生にそれを伝えるのにはかなりの勇気がいる。
それにサヤカはどちらかというと気が強い方ではないので難しいだろう。
だいいち、鉄則をつくったのも広めたのも先輩達だったし…
最近、廊下で1年生の女の子たちとすれ違う時、翔のことを話しているのをよく聞く。
「知ってる?ウチの学校にJrの桜井翔くんがいるんだって!」
「ウソウソ!?すごーい!…アレ?でも全然見たことないけど…」
「今は仕事が忙しくて休んでるんだって」
「なんだ、残念。でも、学校出てきたら教室まで見に行く?」
「もちろん。サインももらっちゃお!」
そんな会話を聞くたびに、
サヤカは今翔が学校休んでて良かったと胸を撫で下ろすと共に、不安を覚えるのだ。
こうして、翔のいない間に噂が広まっていく。
翔が学校に出てくるときには学校中に広まって、
教室にたくさんの女の子たちが来るのだろう。
いや、男の子や別にファンじゃない子も物珍しさに見に来るかもしれない。
『サヤカ?久しぶり』
昨日の晩、翔から電話がかかってきた。
『へへっv久しぶり。お仕事どお?』
『んー?もう終るから明後日には学校いけると思う。オレ、今年何組?』
『1組。あたしも一緒だよ☆』
そんな他愛もない会話をしながら、サヤカは「そっか。明後日から来るのか」と嬉しさと不安がぐちゃぐちゃになった複雑な気持ちでいた。
明日になったら翔が学校に出てくる。
「…ねぇ、響子。どうしたら言いと思う?」
「……どうしたらって、言われてもねぇ?」
翔がいないため、ものすごく久しぶりに響子とお昼を食べながら相談する。
「1年生が翔くんのこと気遣ってくれればいいんだけど…」
「それはないわよ。今年の1年バカばっかだもん」
ハッキリ言ってくれる。
まぁ、響子はコギャル化した下級生が嫌いなので
しょうがないといえばしょうがないのだが(っていうかその気持ちも分かるし)。
「そっか。もう先輩いないんだよね。
サヤカ、先輩にかわいがられてたもんね。さみしいでしょ?」
……先輩。
卒業式の時、先輩は泣きながらサヤカに抱きついた。
『サヤカ、翔と仲良くすんのよ?あたしたちずっと応援してるからね?
翔守ってあげるのよ?
翔を守れるのは、翔の気持ちを1番分かってるあんただけだから…』
自分が翔の隣にいることを許してくれた先輩。
同じファンなのに、憎いと思う事もあっただろうに、
自分が翔の恋人でいいと認めてくれた。
先輩はもういない。
『翔を守ってあげるのよ?』
その言葉に自分は頷いた。
はい。
はい、先輩。あたし、翔くんのために、なにかしたいです。
守られてばかりでなく、彼を、守りたいです。
「ねぇ、今日翔来てるって!!」
「うそ!?見に行く!教室どこ?」
「3年1組!!」
翔が学校に来ているという噂はあっという間に広がって、
教室の前は見事な人溜りができた。
もう男も女も、新任教師までいる。
サヤカはその塊を目の前に足を止めてしまった。
自分も、1年のときかなりうかれて騒いでいたが…ここまでひどくはなかった気がする。
っていうか、これじゃあ教室入れないじゃん。
困り果てたサヤカが意を決して「ごめん、どいてね?」と言って
人ごみをかきわけていくと、
「なに?コイツ」
「3年じゃなーい?」
見て分かるコギャルーSが睨んできた。
なんでコギャルってのはこんなにも偉そうなのか……
溜息をつきながら教室に入ると、翔が笑いながら友人たちと話していた。
(あぁ!久しぶりの翔君!!)
1年経とうが2年経とうが、このときめきはなくならない。
ドア付近で「くぅ!ラブリーvv」と見とれているサヤカに気付き、翔が声をかけてきた。
「サヤカ!!おはよ!」
サヤカはパッと顔を輝かせてそばに駆け寄っていく。
「おはよ、翔くんv」
なんか、今だけは1年のことなんてどうでもいい。
「お仕事忙しかった?」
「まぁね。で、また来週から仕事」
「うそ!?…出席日数足りる?」
「わかんねぇ。とりあえずノート貸してくんない?」
「……地理とかよく寝てるから他の人に借りた方がいいと思うなり」
「いーの。オレはサヤカのノートがいいんだから」
翔の一言に、サヤカがボボボッと赤くなる。
「出たよ出たよ、桜井の『サヤカちゃん症』」とまわりがひやかしてやると、
翔は顔を赤くして「うるせぇよ、てめーら!」と一番近くにいた友人の頭を小突いた。
サヤカの友人も「あいかわらずラブラブね、サヤカ達v」とか言ってきて、
サヤカはますます赤くなってしまう。
そんな教室内のやりとりを見ていた1年の女の子たちは眉をひそめる。
誰?アイツ。翔のオンナ?
そんなことをコソコソと話している。
(うっわ。サヤカってばバカそうなのに目ぇつけられてる…)
遅れてやってきた響子は1年の山を掻き分けながら、
1番ナマイキそうなグループを見つけた。
入学当時からこんなに茶色くていいのかという頭に、
それ絶対階段なんかで下から見えるだろ?というような長さのスカート。
なんというか…こういうのは1番やっかいな類だ。
「あっ、響子オハヨー!」
サヤカは教室に入ってきた響子に明るく手を振ってくる。
(このノーテンキ娘が…)
今のこの状況をなにも理解していないサヤカに、響子は頭を押さえつつ
「おはよう」と返してやった。
「…今なんて?」
「『アンタ、下級生から目ぇつけられてる』」
響子が棒読みで同じことを繰り返すと、サヤカははてな?と首を傾げた。
1時間目が終って、いきなり響子に「トイレ行くから付き合って」と引っ張り出された。
1個の個室に2人で入って、コソコソと話しをする。
「なんで?上級生から目ぇつけられるなら分かるけど…」
「あたし達が3年の今、どこに上級生がいるのよ?」
響子にそう言われ、「あっ、そうか」と納得する。だが、何故自分が目をつけられてるのだ?
「1年にね、すっっっっごいバカそうな女どもがいてね、
アンタが桜井くんの女か?って話し合ってた。
まぁ、たちの悪いファンってとこじゃない?
いい?アンタは桜井くんの身の心配ばかりしてるけど、自分のことも心配しなさい?
絶対アイツらやっかいよ?」
響子はそう言ってガチャリとドアを開けた。
「ちょっ!?響子もサヤカもなにしてたの!!」
1個の個室から2人も出てくるもんだから、偶然同じようにトイレに来ていて、空くのを待っていたひなたはびっくりしてしまった(当たり前)。
(下級生から…ねぇ?)
サヤカは先を歩く響子の後を追いながら考える。
確かに、今まで翔のことばかり考えていて、そんなこと思いつきもしなかった。
だけれど、今までそんなことはなかったし…
(大丈夫…よね?)
「サヤカ?なにしてるの?置いてくよ!」
「やっ、待ってよ、響子!!」
いつの間にか開いてしまった響子の距離を縮めるため、サヤカはパタパタと走った。
そんなサヤカの背中を、睨みつけるように見ている冷たい視線が3つ…
カクンッ
カクッ
ゴンッ!!
5時間目も半分ほど終った頃。教室内に間抜けな音が響いた。
生徒も教師も驚いて、音がしたほうを見ると…翔が机に額をつけてかたまっている。
頬杖をついて寝ていて、そのまま机に頭をぶつけたのだろう。
翔は額をおさえ、「いてぇ」とゆっくり起き上がる。
「…桜井。眠いのは分かるがもうちょっと我慢してくれ」
教師が溜息をつきながら言うと、みんながドッと笑い出した。
その後も翔の頭は眠そうにカクカク揺れ、
サヤカはまた頭をぶつけないかハラハラしながら見ていた。
サヤカと翔の席は離れていて、すぐに声をかけられない。
見守っているうちに、翔はとうとう机に突っ伏して寝てしまった。
普段なら教師も頭を叩いて起こすところだが、
翔が仕事続きで疲れているのを知っているので、気付かぬフリをして寝かせてやった。
チャイムが鳴り、授業が終ると同時にサヤカは翔の元へ駆け寄った。
「翔くん、保健室行こ?」
「うぁ…?なんで?」
寝ぼけたままの翔は顔の向きだけ変えてサヤカを見る。
「ちゃんとベッドで寝た方がいいよ」
「寝かせてもらえるか?」
「大丈夫。あたし、しずと仲いいもん」
「しず」というのは保健教務のことである(本当は「志津(しづ)」だが)。
何故かサヤカ達は先生と仲が良く、呼び捨てにまでしていたりする。
「ん……じゃあ行く」
サヤカは翔を保健室に連れて行くと先生頼んでベッドを1つ用意してもらった。
「終礼終ったら迎えに来るから。その時カバンも持ってくる。
そうしたら一緒に帰ろう?で、今日はゆっくり寝て?」
「あぁ。わかった」
その返事を聞いて満足そうに頷くと、
来週の身体測定の準備をしている保健教務に声をかけた。
「しず、あとお願いね?」
「あんたに頼まれなくても大丈夫よ。いいから行きなさい。授業始まるわよ?」
先生はサヤカを「ほら行った行った」と追い出し、
ドアに「寝てる子がいます。静かに!」という札をかけて閉めた。
「いい彼女がいてよかったわね」
カーテンで囲われたベッドに向けて言うと、翔はカーテンを少し開けて顔を覗かせた。
「あいつがいるから、オレどんなに疲れてても学校に来るんですよ?」
そう言ってまたカーテンを閉めてしまう。しばらくすると規則正しい寝息が聞こえてきた。よっぽど疲れていたのだろう。
保健教務は笑いながら溜息をつくと「ごちそうさま」と呟き、
できる限り音をたてないように身体測定の準備を続けた。
終礼を終えて、急いで翔の鞄と自分の鞄を持つと、サヤカは教室を飛び出した。
保健室に向かう途中、保健教務に会い、声をかけられる。
「桜井くん、よく寝てるからしばらく寝かせといてもいいわよ?
無理に起こすのもかわいそうでしょ?ついでにしばらく保健室にいて?
私ちょっと用があるから」
「ホント?ありがとー!!分かった、しばらく番してるね。なんかやることある?」
「できたら出席統計用の名簿作っといて。どこにあるか分かるでしょ?」
「分かる分かる!!やっとくねー!!」
保健教務と別れると、サヤカは再び保健室に足を向ける。
パタパタと上靴を鳴らして走っていくと、保健室の前に女の子が3人立っていた。
上靴の色から1年生だと判断する。
(なにしてるんだろう?調子でも悪いのかな?)
首をかしげて彼女達に近づいていくと会話が聞こえてきた。
「ホントにここに翔がいるの?」
「あたしさっきの放課に翔が女と入ってくの見たもん」
「その女は?」
「1人で教室帰ってった」
「あっ」と、サヤカは全てに気付く。
翔のファンの1年生だ。
どこからか翔が保健室に入ってくのを見て、ここまで会いにきたのだ。
「さっき保健の先生もどっか行ったみたいだし、今がチャンスだよ」
「寝顔とか写真撮っちゃう?」
「だ、だめっ!!」
とっさにサヤカは声をあげてしまった。
こちらに向かって走ってくるサヤカに彼女たちはキツイ目線を向ける。
その視線に「うっ!」と一瞬怯んだが、
彼女たちが響子の言っていた「バカそうな女ども」だと妙に納得してしまった。
(だって響子が嫌いそうなタイプだし…)
「だ、だめだよ。今翔くん寝てるから。
翔くん昨日までお仕事してて疲れてるし、
また来週から仕事だから、寝かせてあげたいの。だから、静かにして?」
彼女達と保健室のドアの間に入り、必死でそう言う。
ギュッと2つの鞄を抱きしめるように持ち、彼女達の反応を待つ。
(お願いだから…わかって!!)
俯き、目を硬く閉ざして待っていると、3人のうちの1人が口を開いた。
「アンタさぁ…何様のつもり?」
その言葉に、なにがなんだか分からなくてサヤカは顔をあげた。
「翔のオンナだかなんだか知らないけど、
そんなこと言ってただ翔を独り占めしたいんでしょ?」
「そうよ。ちょームカつく!!」
「えっ!?ちがっ…」
反論しようとしたら、ドンッと肩を押されドアに叩きつけられた。
「あたし達に翔とられるのが悔しいんでしょ!?」
「違うってば!お願いだから、静かにして?」
せっかく寝てるのに翔がおきてしまう。
こんな状況に陥ってもサヤカは翔の心配をした。
「翔にイジメられてるとこなんか見せたくない?
バッカみたい!!アンタなんか翔にふさわしくないのよ!!」
またドアに打ち付けられる。
なんでこの子達にこんなことを言われなくてはいけないのだろうか。
自分は彼女たちになにかしただろうか?
ただ好きな人と付き合ってるだけなのに、いけないことだろうか?
確かに、自分は翔にはふさわしくないのかもしれない。
でも、
(なんで…)
なんで分かってくれない?
ただ疲れている翔を寝かせてあげたいと思っているだけなのに…
こんなに騒がしくしたら翔が起きてしまう。
同じファンなのに…
(翔くん…!!)
ガラッ!
いきなりもたれかかっていた扉が開いて、サヤカのバランスが後ろに傾いた。
「なっ…きゃぁ!!」
視界がぐらっと傾き、倒れると思った瞬間後ろから体を支えられた。
後ろから抱きつかれる形に支えられ、その見覚えのある手にサヤカはドキドキしてしまう。
「…あんたらが、オレのファンでいてくれるのは嬉しいけど」
耳元で聞こえてきた声に、
サヤカは心臓が口から飛び出るんじゃないかと言うくらい嬉しくなる。
目の前の1年生達もいきなり現れた人物に目を丸くしている。
サヤカを抱きしめたまま、翔は続けた。
「サヤカに手ぇださないでくれる?
オレの大切な彼女だし、オレがサヤカのこと好きで一緒にいるんだから。
今度、」
翔は1度言葉を切ると、キツイ視線を彼女たちに向ける。
「今度サヤカに手ぇ出したら、いくらファンでもブチ殺すぞ」
今までドラマでも見た事のない翔の本気の怒りに、彼女たちはびくりと肩をすくめ、
「ごめんなさい!」と言って走り去っていった。
「ったく、サヤカもさっさとオレ呼べばいいのに。そうしたら…って、
なに泣いてるんだよ!?」
溜息をつきながらこちらにむかせたサヤカが泣いていたので、翔は本気で慌ててしまう。
「なんだよ、そんなに怖かったなら早く呼べよ?オレなんのためにいるんだよ?」
「だって!!あたし、先輩と約束したのに!!」
「…はぁ?」
「先輩が卒業する時、あたし翔くんのこと守るって約束したの。
あたしはいつも先輩や翔くんに守られてばかりで、
だから、今度はあたしが守りたかったの!!
好きな人守りたいって思うのは普通じゃない?」
泣きながら言うサヤカに、翔は深く息をつく。
「お前がそう思うのと一緒で、オレもお前のことが守りたいんだよ」
サヤカは俯き手の甲で涙を拭ってからもう1度顔を上げる。
「だってお前だけじゃん。誰に何を言われてもオレを守ろうとしてくれるの。
お前の他にこんなに愛しいヤツいないよ」
翔はサヤカの前髪をかきあげると、その額に軽く唇を落とした。
サヤカは恥ずかしそうに顔を赤くし、それからキスされた額をおさえて、
「…あたし、いいの?」
「ん?」
「翔くんの隣にいても。
さっきの子達が言うとおり、あたし、翔くんにふさわしくないいんじゃない?」
翔は額をおさえるサヤカの手をどけて、今度はデコピンを喰らわせる。
「いたっ!!」
サヤカは再び額をおさえ、また涙をにじませる。
「バカなことばっか言うと殴るぞ?」
翔は1度言葉を切り、サヤカの肩に手を置くと真剣な目を向ける。
「オレは自分がなんとも思ってないヤツとは付きあわねぇよ」
それから、何週間か経って、あの1年の女の子達があたしの所に来ました。
またなんか言われちゃうかな?って思ったらいきなり
「ごめんなさい」って謝ってきたから、びっくりしちゃった。
言い過ぎたって、翔くんの迷惑も考えずに騒いだりしてごめんなさいって。
なにより嬉しかったのは、その子達があたしのことを認めてくれたこと。
「先輩と翔、お似合いだよ」って、言ってくれたの。
それから、その子達に手伝ってもらって、
あの、先輩の作った鉄則(?)を1年生に広めてもらった。
だから、今では翔くんにちょっかいを出してくる子もいなくて、
翔くんもずいぶんと安心したみたい。
そう。あたしが眠れない原因はこれで解消…されたと思ったんだけど……
「お前の他にこんなに愛しいヤツいないよ」
「オレは自分がなんとも思ってないヤツとは付きあわねぇよ」
……あの時の翔くんの言葉。
いつまでもいつまでも頭の中でぐるぐる回って離れない。
夜、ベッドに入って目を閉じると、いつも思い出す。
その度にドキドキして目が覚めるの。
こんなんじゃ当分まともに眠れそうにないです。
まだまだ、あたしの不眠症は続きそう……
☆★☆あとがき☆★☆
「insomnia(インソムニア)」。鬼束ちひろのアルバムのタイトルと同じ。
意味は「不眠症」。
その名のとおり、眠れないサヤカの話。
実際、芸能人の恋人なんて、大変だと思う。
買い物してるだけで写真撮られてさ。
あれは、精神病になるよ。そのうち「どぶねずみが!!」とか言い出すよ?
って、ヤベ。サヤちゃんにしか分からないネタを・・・
前回の翔くんは少し情けないカンジだったけど、
今回はエロマシーン・・・
でも、あたしの書く翔くんはほとんどエロマシーンです。
しかし・・・いまだにちょろっとしか出てこないひなた・・・
一応主役3人組の一人なのに・・・
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