URIAH HEEP
ユーライア・ヒープ 醜くも美しい幻想曲
ヒープというと、ジョン・ウェットンがいたとか、
出来の悪いハーモニーバンドだとか、
色々と悪口を言われることも少なくない可哀想な
グループという印象があるものだ。
確かに、後期における一連のアルバムは、
正直駄作と言われても仕方ないのかもしれない。
しかし、しかしですよ、そこのあなた!
初期のアルバムを聴くと、やはり彼らは素晴らしい
ファンタスティックグループだと言うことが確認できます。
クライベイビーを変幻自在に操るミック・ボックスの
スーパープレイ、イラコライザーを駆使した、
独特で新鮮なハーモニー。
これらを聴いて反応がない人は、
音感センスは限りなくゼロに近い訳でして、
ブリティッシュ・ロックを聴く資格は無いように
思うのであります。
ファーストを聴くと、それはそれは美しい
幻想世界へと聴く者を導いてくれます。
”ジプシー”や”カム・アウェイ・メリンダ”といった
ナンバーは、英国ファンタジープログレの雄
キャメルに勝るとも劣らぬ美しさなのであります。
しかし、ピーター・バーデンスがいかに美しい
英国紳士であっても、ミック・ボックスは
その辺に転がってそうなアル中オヤジのようで
正直ギャップの激しさはヒープの完勝であります。
いや、ヒープは確かに美しいサウンドを繰り出す
親父集団ですが、キーボードのケン・ヘンズレーだけは
育ちのよさそうなおしとやかな顔をしております。
やはり、エマーソンにせよ、バーデンスにせよ、
初期のウェイクマンにせよ、キーボードプレイヤーは
何故か皆美しい顔立ちをしております。
なるほど子供の頃からピアノの英才教育を
受けてこない事には、優秀な奏者にはなれません。
つまり、ギターやタイコは学生バンドからでも
可能なのに対し、キーボードはお金持ちの
ボンボンちゃんにしかできないのであります。
勿論、センスのないキーボードなら誰でもできますが。
セカンド「ソールズベリィ」は組曲を取り入れた
壮大な一作。
エコライジング・ハーモニーも一層と深みを増し、
彼ららしさを堪能できます。
サード「対自核」もドラマチックな大作「7月の朝」等
素晴らしい出来を誇っています。
ムーグ・シンセのソロパートはマンフレッド・マンが
関わっています。
4作目「悪魔と魔法使い」は、あのロジャー・ディーンが
ジャケットを担当。
そういえば、彼の作品集をこの前見かけました。
この頃のヒープは、もう誰が何と言おうと、
最高に素晴らしいのであります。
72年というと、ちょうどブリティッシュロックの全盛期。
時代も彼らを後押ししました。
メンバーもフレッシュです。
のちに不幸な目に遭ってしまう、
元キーフ・ハートレーバンドのゲイリー・セイン、
元ナショナルヘッド・バンドのリー・カースレイクが
新たに加入し、美しすぎるハーモニーは
さらに美しさを増してゆきました。
5作目「マジシャンズ・バースデイ」。
これも素晴らし出来ではないでしょうか。
その後、ライヴアルバムをリリース、
ここまでがヒープ”自身”の絶頂期だったのでは
ないでしょうか。
その後、「スィート・フリーダム」、「ワンダーワールド」
をリリースするも、停滞期に入ったバンドの常か、
実に品のない彼ららしからぬ出来でありました。
さらに、ケン・ヘンズレーと並ぶ美男子ベーシスト
ゲイリー・セインが感電死してしまいます。
やはり、ヒープには美男子は生息できないのか…。
ところが!!
これが幸いしてか、「幻想への回帰」には
凄過ぎる大物が参加します。
元キング・クリムゾンの2人、ジョン・ウェットン先生と
暴走サックス男メル・コリンズであります。
2人ともルックスは素晴らしく、さらに
プレイヤーとしてのレベルもずば抜けて
高いのでありますから、これはヒープにとっては
願ったりかなったりだったのではないでしょうか。
作品タイトル通り、原点に回帰したヒープは、
勢いを取り戻します。
さすがウェットン、ヴォーカルもさることながら
クリムゾン時代と変わらぬベースプレイは
もう神業の領域であります。
しかし、続く「ハイ&マイティ」では、
ウェットンのパワーは一気に下降しております。
再び駄作を作ってしまったヒープは
ヴォーカリストのデヴィッド・パイロンを首にします。
さらにウェットンは気が付けば消滅しておりました。
後釜にジョン・ロートンが加入。
ん?どこかで聞いたことがある??
それもそのはず、後にゲイリー・ムーアと組んでいます。
「ファイアフライ」を発表したヒープは、
再び元気を取り戻します。
ロートンはリッチーばりのプレイで素晴らしいですねえ。
今度こそ復活と思われたヒープですが、
「罪なきいけにえ」ではまたしても失敗をしてしまいます。
「魔界再来」も並で、もはやこれまでか…。
ケン・ヘンズレーというヒープの要が脱退し、
ヒープはヒープではなくなっていたのか・・・。
代わりに、ボブ・デイズリーとジョン・シンクレアが
加入しております。
ミック・ボックスおじさんは、オズボーンのように
ボブ・デイズリーを操りきれておらず、
いつまでもクライベイビーにしがみついて
お決まりのプレイを連発しています。
この辺が、テクニックはあろうともリッチーになれない
理由でありましょうか。
時には、自分のスタイルを崩し冒険することも必要なのです。
近年、マイケル・シェンカーはかつての蒸発青年らしい暗い
泣きギターから一転、UFO再加入のブートを聴いても
かなりアグレッシヴなハード親父に生まれ変わっております。
この転身は吉のようで、評価はすこぶるよいようです。
ミック・ボックスも、カツラをつけてへヴィメタ親父になるくらいの
覚悟を決めれば、また再評価されることでしょう。
でも、あのおじさんは今何をしているのでしょうか…。